【頭部】症例6 解答編

【頭部】症例6

【症例】50歳代 男性
【主訴】意識消失発作、頭部外傷
【現病歴】ターレットに乗車して作業している際に意識障害あり、ターレットから転落(高さ40-50cm)し、地面で転倒しているところを同僚が発見し救急搬送。意識は10-15分程度で回復。
【身体所見】JCS-0、 GCS E4V5M6、明らかな嗅覚の損失なし。瞳孔:左右同大 2.5mm、対光反射:左右とも迅速、眼球運動反射:正常、複視なし、その他脳神経に明らかな異常を認めず。四肢の運動良好、四肢の感覚正常。

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右の高位に凸レンズ型の高吸収域を認めています。

また右後頭部に帽状腱膜下血腫と考えられる血腫を認めており、受傷部と考えられます。

同部では骨折線を認めており、この骨折部の直下に血腫を認めていることがわかります。

骨折を伴っている点や血腫の形状から、急性硬膜外血腫が疑われます。

冠状断像においても同様に右高位に凸レンズ型の血腫を認めています。

冠状断像では、骨折部の直下に血腫があることがよくわかります。

 

またちょっとわかりにくい所見ですが冠状断像で右側の頭蓋骨と大脳の間のくも膜下腔と比較して、左側は非常にtightになっていることがわかります。

これはおそらく左側に硬膜下血腫(+外傷性くも膜下出血)が存在しているためと考えられます。

また右前頭葉を中心に脳内出血を認めており、周囲に浮腫性変化を認めています。

脳挫傷を疑う所見です。

脳表や脳溝に沿った血腫を前頭葉部や両側の側頭葉にも認めています。

外傷性くも膜下出血を疑う所見です。

正中構造の偏位は認めていません。

診断:急性硬膜外血腫+脳挫傷+外傷性くも膜下出血+(急性)硬膜下血腫+頭蓋骨骨折

※意識は清明であり、血腫による脳の圧排も軽度であったため、保存的に経過を観察する方針となりました。その後3時間後のCTで明らかな血腫の増大は認めず、そのまま保存的に加療となりました。

※今回の意識障害の原因ですが、Holter ECG、脳波検査などで異常を認めず、vasovagal reflex(血管迷走神経反射)だろうと推測されました。

6日後のフォローのCTです。

脳挫傷部位および周囲の浮腫はやや進行していますが、

  • 右急性硬膜外血腫
  • 両側の外傷性くも膜下出血
  • 左硬膜下血腫

は吸収傾向にあることがわかります。

ただし、左の頭頂部で髄液中の血管を脳表に押しつけるような低吸収域を認めており、硬膜外水腫が生じていることが示唆されます。

このまま保存的に加療され、退院となりました。

関連:急性硬膜外血腫とは?症状からCT画像診断まとめ!

その他所見:左上顎洞に粘膜肥厚あり。

追記:

「またちょっとわかりにくい所見ですが冠状断像で右側の頭蓋骨と大脳の間のくも膜下腔と比較して、左側は非常にtightになっていることがわかります。これはおそらく左側に硬膜下血腫(+外傷性くも膜下出血)が存在しているためと考えられます。」
とは、どこの部分のことでしょうか?頭頂部の硬膜外水腫の部分でしょうか?

ちょっとわかりにくいところなので、追記します。

6日後の画像と比較することでわかりやすいので並べてみます。

初回CTでは高位において、左後頭部の脳溝が右と比べると追いにくいことがわかります。一方6日後のCTでは同部の脳溝を追うことができます。(厳密には6日後には硬膜下水腫もあるのですが。)

ですのでここに硬膜下血腫の存在が示唆されます。

冠状断でも初回のCTでは右に比べると左が脳溝を追えず、狭いことが分かります。

6日後は狭さがやや改善しています。(ですが、硬膜下水腫があるので狭さは残っていますが。)

 

【頭部】症例6の動画解説


お疲れ様でした。

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