
症例21
【症例】80歳代女性
画像はこちら
肝右葉に広範な高吸収域を認めています。
中でも肝S8に腫瘤状の著明な高吸収を認めています。
出血でしょうか?
それとも、石灰化でしょうか?
実はこの方、肝細胞癌(HCC:hepatocellular carcinoma)で加療中の方です。
今回、肝細胞癌(HCC)の再発に対して、肝動脈化学塞栓療法(TACE:Transcatheter Arterial ChemoEmbolization、以下TACE)が行われました。
今回撮影されたCTは、そのフォロー目的です。
TACEでは、油性の造影剤であるリピオドールが肝臓のがん細胞に蓄積する性質を利用して、この造影剤に抗がん剤を混ぜてがん細胞に注入することで、治療後の効果判定に用いられます。
診断:HCCに対するTACE後のリピオドール沈着
リピオドールについて1)
リピオドールは動脈血流遮断という意味では効果は乏しいですが、血流の多い腫瘍に流入して長時間停滞するという性質があり、抗癌剤の担体として働きます。
つまり、抗癌剤とリピオドールの安定な混合液を用いれば、抗癌剤はリピオドールとともに腫瘍内に停滞して、徐放性となって局所に高濃度に作用します。
治療(TACE)前画像はこちら
実はこの方以前にもTACEの治療歴があり、今回以前TACEを行った部位にHCCが再発し、再度TACEが施行されました。
肝臓にこのような粗大な石灰化を認めた場合、HCCに対するTACEの治療歴がないかをチェックしましょう。
関連:肝細胞癌のCT,MRI画像診断(HCC:hepatocellular carcinoma)
その他所見:
- 肝辺縁に少量腹水あり。
- 左大腿骨頸部術後。
参考文献:
1)肝・膵疾患のIVR治療 P3
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
TACEですか〜。見たこと何回もあるはずですけど、いざ「何?」って聞かれると分からなくなりました(・・;)
また画像検索してると、先生のサイトで、石灰化肝転移の画像がこれに似ていたので、そう答えてしまいました( ̄▽ ̄;)
専門家的にも、似てますか?
見分けるポイントとかありますか?
アウトプットありがとうございます。
転移の場合はここまで高吸収が強いことは稀
原発巣がある
TACEをしたという病歴の確認
という点で見極めますかね。
なによりHCCでTACEをしたという病歴の確認が大事ですね。
お世話になっています。
TAEとTACEは、同じ意味合いで用いるのでしょうか?
TACEのCはChemoのCですので、化学療法をその場でするかどうかの違いがありますが、肝臓の場合はその違いだけですので同じ意味合いで使われる(厳密には違いますが)と考えていただいて大丈夫です。
ただし、TAE自体は肝臓以外にも用いられますので注意が必要です。
こちらがわかりやすいです。
http://www.jsth.org/glossary_detail/?id=132
油性造影剤が沈着しているのかな、
ぐらいしかわかりませんでした。
たまに見かけることがあるので
覚えておきます。
アウトプットありがとうございます。
>油性造影剤が沈着しているのかな、
それで正解です。
同じような所見を認めた場合は、既往歴にご注目ください。
肝臓がんの診療ガイドラインでtace後の放射線治療が弱い推奨をもらってますが腫瘍の低酸素化を嫌う意見も多く金属マーカーなどが用いられているようです。リピオドールが酸素遮断が弱いなら単独で放射線治療用のマーカーにできればよいなーと思いました。ivrの先生はリピのみでやるのはいやでしょうが・・・
そもそもhccは酸素を多く供給されているものの酸素分圧は高くないという話も聞きますし、何が正であるかわからなくなります。
何がいいたいかわからなくなりましたがいつも勉強になってます。ありがとうございます!
>hccは酸素を多く供給されているものの酸素分圧は高くないという話も聞きますし、何が正であるかわからなくなります。
そうなんですね。初耳でした。
こちらこそありがとうございます!!!
リピオドールと考えるのが普通かと思いましたが、以前古い症例が取り上げられてましたし、広範囲に存在することからトロトラスト沈着かと思いました。
アウトプットありがとうございます。
そうなんです。素直にリピオドールでよいのです。
>広範囲に存在することからトロトラスト沈着かと思いました。
トロトラスト、国家試験の時に覚えた記憶がありますが、分かっていなかったので調べました。
・1930〜1940年代に使用された造影剤
・トロトラストによる血管造影の既往を有する患者では、肝臓や脾臓、リンパ節に石灰化様の陰影が残存する。
・肝細胞癌、血管肉腫、胆管細胞癌の誘発因子となる。
・アミオダロン沈着、Wilson病とともにCTにおけるびまん性濃度上昇の原因となるが、トロトラスト症では、肝辺縁を中心とした網状・線状の高濃度域が見られ、リピオドール注入後と類似するが、よく見るとリンパ網を中心として分布している。
参考:
画像診断 Vol.23 No.4 2003 P351
勉強になりました。
椎体の低吸収域はなんですか?
冠状断像などを見ないと難しいですが、変性によりガスを見ていると考えられます。