
症例17
【症例】60歳代男性
盲腸癌、癌性腹膜炎にて加療中
画像はこちら
頚部に入っている管は何?何か問題はない?
右の内頸静脈から上大静脈にカテーテルが留置されています。
※胸部のこの辺りの血管の解剖についてはこちらで確認ください。
カテーテルを追うと皮下のCVポートにたどり着きます。
CVポートは、皮下埋込型ポートとも言われ、ここから薬剤を投与するために用いられる中心静脈カテーテルの一種です。
盲腸癌に対する化学療法(この方はアバスチンが投与されています。)が行われていることが推測されます。
カテーテルをよく見ると、カテーテルの周りに一部低吸収域を認めています。
鎖骨のアーチファクトでこのように低吸収域を認めるケースはありますが、今回はアーチファクトではなく、カテーテル周囲にはっきりと付着しています。
CVカテーテルへの血栓付着を示唆する所見です。
診断:CVカテーテルへの血栓付着
エリキュース錠(静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制目的で使用される)が投与されました。
また、今回CVカテーテルの先端が右房に位置しています。
カテーテル先端が、上大静脈内で血管壁とほぼ平行に走行し、鎖骨下縁よりも尾側で第3肋骨や胸椎4/5 間、気管分岐部もしくは右主気管支の基部より頭側にあるのが理想である1)
ですので、先端がもっと頭側になければなりません。
また、カテーテルが胸鎖乳突筋内を走行しているのも理想的とはいえません。
その他所見:胸部下部食道周囲に液貯留あり。
参考:
1)安全な中心静脈カテーテル挿入・管理のためのプラクティカルガイド 2017
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
CVポートに気づかなかったです。
あと血栓を血腫と書いてしまいました。
IVHの管と回答してしまいましたが、
この回答でも正解でしょうか?
IVHは
CVカテーテルを挿入して
中心静脈に栄養を、送る方法
なので、違うのかなと思っています。
あと右の内頸静脈にairが入っている
気がしますがいかがでしょうか?
今日も、ありがとうございました。
いつもお世話になっています。僭越ながらコメントさせていただきます。
> IVHの管と回答してしまいましたが、この回答でも正解でしょうか?
> IVHはCVカテーテルを挿入して中心静脈に栄養を、送る方法なので、違うのかなと思っています。
下記、ネットからの転載です。
https://www.otsukakj.jp/healthcare/iv/tpn/
「高カロリー輸液は、IVH(Intravenous Hyperalimentation)などとも呼ばれますが、hyperalimentationは「多量の栄養を与える」という意味から、現在はIVHよりもTPNの方が適切であるという意見が多く、国際的にもTPNを用いる方向になっています。
中心静脈栄養 TPN(Total Parenteral Nutrition) 末梢静脈栄養 PPN(Peripheral Parenteral Nutrition)」
つまり、いあさんの解答でもOKだと思います (^^♪
IVHのためには、静脈炎予防の観点から、細くて弱い血管よりも太くて強い静脈を選ぶことが多いと思います。ですので、
仮に「IVH⇔TPN」と1:1対応させてしまったとしても、ドクターにもナースにも技師さんにも誤解なく伝わると思います(^^♪
今回はたまたま「化学療法が主目的のCV」みたいですが、状態によってはここからIVHを投与する(「IVHの管」として使用する)ことも、あるいはドーパミンやノルアドレナリンなどの循環補助薬を投与することも可能だと思います(^▽^)/
ごろ~先生、訂正・補足をお願いしますm(__)m
> あと右の内頸静脈にairが入っている気がしますがいかがでしょうか?
これにたいするごろ~先生の回答も楽しみにしています(^^♪
対応いただき、ありがとうございます。助かります。
>今回はたまたま「化学療法が主目的のCV」みたいですが、状態によってはここからIVHを投与する(「IVHの管」として使用する)ことも、あるいはドーパミンやノルアドレナリンなどの循環補助薬を投与することも可能だと思います(^▽^)/
この通りだと思います。
> あと右の内頸静脈にairが入っている気がしますがいかがでしょうか?
これなんですが今回認めないような気がするのですがいかがでしょうか?
仮に認めたとしても輸液ルートからの空気の混入だと思われます。
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/5267
>これなんですが今回認めないような気がするのですがいかがでしょうか?
仮に認めたとしても輸液ルートからの空気の混入だと思われます。
airですがスライス21のカテーテルの
右側で血栓の下に黒い物があるので空気かな?と思ったのですが…
アーチファクト?にしてはくっきり黒い丸い物があるので…
>airですがスライス21のカテーテルの
右側で血栓の下に黒い物があるので空気かな?
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/training/wp-content/uploads/2019/03/q2167.png
カテーテルによるアーチファクトですね。ガスではないようです。
鎖骨下静脈から挿入されていると回答してしまいましたが、これは造影剤でしたね。血栓の付着している部分も上大静脈と、回答してしまいましたがまだ頸静脈ですよね。自信満々だったので恥ずかしいです。
あと、胸鎖乳突筋内を走行していることに気づきませんでした。こんなこともあるのですね。
エリキュースで行けるんですね(^^♪
CVの血栓って、対応が難しいなといつも感じています(^-^;
(再)挿入しようとしたとき、エコーで見るとちょっと血栓みたいなものを感じることって意外とあります。(僕だけでなく(^-^;)そのままCVを入れてしまうことも少なくないと思います。逆に、CTで血栓を見たときは、それほど混乱(「うわぁぁ~血栓だぁぁ~(;´Д`)!」)することなく、何かしらの対応を淡々ととるイメージがあります。
端的に言うと、CV血栓であんまり「ドキっ」とした経験がありません。「CTで見ちゃったから対応」みたいなテンションで来てしまっています。「CV血栓に対する正しい『態度』」ってどんな感じなんでしょう(^-^; ? 再挿入の時に血栓らしいものが見えた場合「そのこと自体が大問題」で、その時点で「その血管は諦めて」抗凝固を開始すべきなんでしょうか?
全然まだ若いので、正直な・忌憚ない意見で結構です。今後のために先生のご意見をお伺いできればと思います。
何卒宜しくお願い致しますm(__)m
アウトプットありがとうございます。
CVを入れる機会が最近は全くないのでこの辺りの感覚がむしろわからないのですが、
>端的に言うと、CV血栓であんまり「ドキっ」とした経験がありません。「CTで見ちゃったから対応」みたいなテンションで来てしまっています。
今回のカルテを見る限り同じようなテンションを感じます。
もちろん血栓が飛ぶリスクの重篤感はもちつつです。
インスタントさん、ありがとうございます!
自分でもネットで調べて見たのですが、
正確には違うのかなと思ったのですが、
ニュアンス的には同じようなものですね。
この辺りは一人では、わからないですね。
リンク先は図もわかりやすく説明しておられるサイトですね、ブックマークさせて頂きました。
お手数おかけしました。
お世話になっています。
CVポート周辺の低吸収域は血栓なのですね。アーチファクトかと思いました。覚えて起きます。
おっしゃるとおりです。
ですが、たまに肋骨のアーチファクトで低吸収に見えることがあるので、その点は注意が必要です。
CVカテーテルの血栓を見つけた場合、特別にthinスライスなど画像を作るなどはしなくでも良いのでしょうか?
アーチファクトとの鑑別が微妙なときなどMPRやthin sliceはあったほうがよいですね。
そうでなくても血栓が疑わしい場合は、あった方がよりありがたいですね。
胸鎖乳突筋内を走行して頸静脈に到達するのは普通ですか?
あとカテーテル先端が右房内に到達しており深いのではと考えましたがいかがでしょうか
>胸鎖乳突筋内を走行して頸静脈に到達するのは普通ですか?
確かに普通ではないですね。
>あとカテーテル先端が右房内に到達しており深いのではと考えましたがいかがでしょうか
これもおっしゃるとおりです。
カテーテルに血栓付着でこの症例を探しましたが他にもおかしなところがありましたね・・・。
ご指摘ありがとうございます。
追記しました。
確かによくよく見ると胸鎖乳突筋を貫いていますね.気づきませんでした.
ですね(;゚ロ゚)
思い切り貫いていました。
お疲れ様です。
カテーテルが胸鎖乳突筋を貫いているということですが、
普段の正しい位置はどこを貫いておられるのでしょうか?
カテ挿入の症例をあまり見たことがないので…
よろしくお願いします。
胸鎖乳突筋の前のことも、後ろのことも、胸鎖乳突筋の胸骨頭と鎖骨頭の間のこともあります。
どこが正解というのはないかと思います。
確かに見返すとカテーテルの位置も通常とは色々異なっていますね。
特にデータを見たわけではないですが、印象としては、苦労してゴソゴソ入れたカテーテルほど血栓がつきやすい気がしています。この症例も、医師・患者とも苦労して入れられたのかもしれませんね(^^;;
アウトプットありがとうございます。
>苦労してゴソゴソ入れたカテーテルほど血栓がつきやすい気がしています。
(^_^;確かにそうかも知れませんね。
合併症が起こりやすい医師とそうでない人がいるように・・・
内頸静脈からのCVカテーテルと、血栓というのは正解できたのですが、CVポートを完全に見逃してしまいました。一点に集中しすぎてはいけないですね。
アウトプットありがとうございます。
>内頸静脈からのCVカテーテルと、血栓というのは正解できたのですが
ここが一番重要ですので、大丈夫です。
そもそも、Vに入っていたんですね。CVポートも気づきませんでした。だめだなー
CVにしても、深いなあとは思いましたが。
アウトプットありがとうございます。
右内頚静脈〜腕頭静脈〜上大静脈〜右房に入っています。
こちらで解剖復習しておいてください。
http://medicalimagecafe.com/tool/chest/01.html
※PCのみで閲覧可能です。
今回の症例とはあまり関係ありませんが、、
CVからCTまたはMRI造影することがあるのですが、圧を下げて撮影します。
しかし普段のルートと同じくらいの管腔なのでなぜ圧をそこまで下げる必要があるのかわかりません。
しっかり固定されていたら抜けることもあまりない気がするのですが、、、
教えて頂きたいです。
CVカテに関する各メーカーの添付文書を見ると・・・
メーカー1)造影剤の高速注入には使用しない
メーカー2)輸液ルート確保、中心静脈圧測定や造影剤注入を目的
メーカー3)造影剤注入に関する記載なし
メーカー4)圧力限界値は、300psi
で、一概に、高速注入が可能であるとは言えない。とのことです。
引用:
http://www.osaka-ctken.net/pdf/2013608QAanswer.pdf
胸鎖乳突筋内に留置してあるって、手技時に相当なカテーテル操作に抵抗があったはずですね(苦笑)
CV「カテーテル」から造影検査をすると、今症例のようにカテーテル周囲や管内や管先に血栓があった場合、カテーテルトラブルの原因になる可能性があります。急速注入した最悪のケースでは、血管内でカテーテルが裂けるという事例もあるようです。そもそも造影剤を注入を目的とするデバイスではありませんし、ほとんどのCVカテーテルの製品の添付文書では推奨されていないように記憶しています。この御時世、添付文書記載外の行為をして問題になると…(怖)
CV「ポート」での造影検査は、デバイスによっては体外からポートに穿刺する針を専用のものを使用すれば、造影検査可能な商品もあります。決して業者の回し者ではありません(笑)
https://www.innervision.co.jp/sp/products/release/20160301
個人的に1点
今症例の検査目的が不明ですが、CVポート感染やトラブルを疑ったのであれば、左上肢静脈からの注入の方が有用です。もちろん通常は右上肢静脈からが正解ですが。
アウトプットありがとうございます。
>CV「ポート」での造影検査は、デバイスによっては体外からポートに穿刺する針を専用のものを使用すれば、造影検査可能な商品もあります。
補足ありがとうございます。
>今症例の検査目的が不明ですが、CVポート感染やトラブルを疑ったのであれば、左上肢静脈からの注入の方が有用です。もちろん通常は右上肢静脈からが正解ですが。
現状把握でのCT検査であり、CVポート感染やトラブルは疑っていなかったようです。
フィードバックありがとうございます。
やはり担癌患者は血栓にも要注意、という事ですね。PE、トルソー症候群、SPEなど重症度が高いケースなど、怖いです。肝に銘じて画像見なきゃです。
oncologyの領域では最近、Cancer-Associated Thrombosis:CATというのがトピックの1つとして注目されているようです。
血栓の付着を完全に見落としていました。
CVポートに関するガイドラインがありますので、ご参考までにURLを掲載いたします。
https://www.jsir.or.jp/docs/cvp/cvp2003.pdf
アウトプットありがとうございます。
IVR学会編の資料を紹介していただきありがとうございます!