
症例16
【症例】60歳代女性
画像はこちら
骨盤内の腫瘍はなに?
骨盤内右側(子宮の右腹側)に
- 脂肪濃度
- 石灰化成分
を含有する腫瘤を認めています。
みなさんの環境では濃度調節はできませんが、脂肪がより明瞭化するCT値に変えてみると、皮下脂肪と同じくらいの濃度であり、腸管内ガスの濃度とは異なることがわかります。
骨盤内で脂肪成分を含有する腫瘤を認めた場合、卵巣の成熟嚢胞性奇形腫が疑われます。
診断:右卵巣の成熟嚢胞性奇形腫
この方はMRIも撮影されていましたので、見てみましょう。
MRIで脂肪であることを確認するには、
T1強調像で高信号で、かつ脂肪抑制T1強調像で信号が抑制される(低信号となる)ことをチェックすればOKです。
今回も上のように、腫瘤の内部は
- T1強調像で高信号
- 脂肪抑制T1強調像で低信号
となっており、脂肪であることを確認することができます。
同じような症例を2つチェックしておきましょう。
- 症例60歳代女性→参考症例① CT(横断像)
- 症例70歳代女性→参考症例② CT(横断像)
いずれも石灰化部分ははっきりせず、脂肪濃度が目立ちます。
症例①は左側に、症例②は右側にそれぞれ認めています。
関連:卵巣成熟嚢胞性奇形腫とは?MRI画像診断のポイントは?
その他所見:
- 肝嚢胞散見。
- 右腎右側に何らかの静脈の発達あり。
- 左卵巣嚢腫あり。
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
正答率は低くはなさそうですが、僕は間違えました(^-^;
というより「腫瘤」を認識できませんでした(;´Д`)
>骨盤内で脂肪成分を含有する腫瘤を認めた場合、卵巣の成熟嚢胞性奇形腫が疑われます。
昔、放射線科の後期研修中の先生が「脂肪濃度を含んだ腫瘤、僕はテラトーマしか知らない(;’∀’)」とおっしゃっているのを聞いたことがありますが、
「脂肪濃度を含んだ腫瘤」⇔「テラトーマ」
と1対1対応でも問題なさそうですか?
アウトプットありがとうございます。
>「脂肪濃度を含んだ腫瘤」⇔「テラトーマ」
と1対1対応でも問題なさそうですか?
基本それで問題ありません。
たまに未熟成分を含むものや、悪性転化することがあるので注意が必要ですが、頻度を考慮するとまずはそれで問題ありません。
腸管の物なのか、右卵巣の物なのかで悩みましが、なんとなく子宮と連続したいるようなので、右卵巣腫瘍と回答を出しました。
現場では、濃度を変えて、
皮下脂肪とか、腸管内のair
とかと濃度を比べたり、
CT値を測定したりして、
ある程度予想をつければ、
診断の、補助になるのですね。
勉強になります。
今日もありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。脂肪成分や石灰化を確認することが重要となります。
お世話になっています。
左にも低信号腫瘤が見えたと思ったのですが…よく確認するS状結腸と連続がありました(汗)
2点、質問です。
・左卵巣静脈が拡張していますが、正常でもたまに見られる所見ですか?
・盲腸が膀胱前まで来ていますが、移動性盲腸とされる所見ですか?
アウトプットありがとうございます。
>左にも低信号腫瘤が見えたと思ったのですが…よく確認するS状結腸と連続がありました(汗)
おっしゃるように子宮左背側にも腫瘤状に一瞬みえてしまいますね。
>左卵巣静脈が拡張していますが、正常でもたまに見られる所見ですか?
そうですね。とくに左側では偶発的に拡張が見られることがよくあります。
下腹部痛など症状を伴っている場合は、骨盤うっ血症候群と診断されるケースもありますが、
症状がない場合は経過観察や精査、治療の必要もないとされています。
>盲腸が膀胱前まで来ていますが、移動性盲腸とされる所見ですか?
そうですね。盲腸が骨盤に落ち込んでいますね。
虫垂はちょっとはっきりしないですね。。。
今回の画像だと歯のような石灰化があって分かりやすいですが、一番のポイントは「脂肪」なんですよね。
特に補足のような症例だと、脂肪を意識して見ないと、他の嚢胞(あるいは腸管!?)と勘違いしてスルーしてしまいそうです…
アウトプットありがとうございます。
>特に補足のような症例だと、脂肪を意識して見ないと、他の嚢胞(あるいは腸管!?)と勘違いしてスルーしてしまいそうです…
濃度を変えられない環境で恐縮ですが、濃度を変えれば、空気と脂肪はすぐに鑑別できます。
消化管と連続性がなくて「?」と思われた場合は、濃度を変えましょう。
腸管のガスと見間違えましたorz
めちゃくちゃ悔しいですが、勉強になりました笑
“脂肪がより明瞭化するCT値に変えてみる”とありますが、”ウィンドウレベルを下げて、ウィンドウ幅を広くする”とよいのでしょうか?(本を参照しました)
以下、少し補足なのですが。。
ウィンドウレベルを下げるというのは、脂肪も空気もCT値が低いのでわかります。
しかし、ウィンドウ幅を広くするというのが腑に落ちなかったです。
でも、脂肪と空気のCT値を調べてみると、脂肪は-100HUぐらいで、空気はなんと-1000HUくらいで、それで合点がいきました。
かなりウィンドウ幅を広くしないと脂肪も空気も同じグレースケールになってしまうんですね。
というように考えてみたのですが、合ってますかね。。。
アウトプットありがとうございます。
>かなりウィンドウ幅を広くしないと脂肪も空気も同じグレースケールになってしまうんですね。
おっしゃるとおりです。
ウィンドウ幅を広くしないと空気も脂肪も真っ黒(低吸収)になってしまうということです。
脂肪をやや白く(高吸収)
空気を黒く(低吸収)
することで両者の鑑別が可能になります。そのためには、ウィンドウ幅を広くする必要があるということです。
左腎門部で尿管拡張しているのは十二指腸に圧排されているからですか?
正常範囲でよいと考えます。
十二指腸に圧排されて拡張することは通常ありません。
腸管のガスと見間違えました…難しかったです!
1つご質問させてください。
この症例、胃幽門部の壁肥厚はないのですか?
アウトプットありがとうございます。
>この症例、胃幽門部の壁肥厚はないのですか?
確かに幽門側が全周性に厚いですね。
症状があるかもチェックして、内視鏡に回してもいいかもしれません。
粘膜下層が肥厚しており、急性胃炎や胃潰瘍などがある可能性がありますね。
ただし周囲の脂肪織濃度上昇ははっきりしないですね。
こちら急性胃粘膜病変(Acute gastric mucosal lesion:AGML)の症例ですが、同じように壁肥厚を認めていますね。
https://imaging-diagnosis.com/view/W7jws9GU
今回は全く見当違いの回答でした。
石灰化があったので、何か引っかかってはいましたが、腸管内のガスだと判断してしまいました。
でもその分、勉強になりました。
アウトプットありがとうございます。
>石灰化があったので、何か引っかかってはいましたが、腸管内のガスだと判断してしまいました。
でもその分、勉強になりました。
一度間違えると次は気づきやすい所見ですね。
不自然な低吸収や石灰化を見た場合は、ウインドウ幅を広げて脂肪なのかガスなのかをチェックしましょう。
皮様嚢腫、デルモイドシストと回答しましたが
成熟嚢胞性奇形腫、テラトーマ、類皮嚢胞腫 が同じ物だとは知りませんでした。
また一つ勉強になりました。ありがとうございます。
アウトプットありがとうございます。
同じものというよりteratomaに含まれるという感じですね。
この症例では下部消化管の腸管壁の高吸収を認め,(スライス 58/78)
腸閉塞を考え、閉塞部位を探しましたが見つけられませんでした。
この高吸収の原因は何でしょうか?
アウトプットありがとうございます。
確かに左下腹部で小腸の壁がやや目立ちますが、腸閉塞を疑うような腸管拡張は認めていません。
所見が強い場合は、臨床症状があれば小腸炎を疑うこともありますが、今回は正常範囲でよいと考えます。
ただおっしゃるように少し目立ちます。
幽門部の壁肥厚に目を奪われて、腹腔内腫瘤だと勘違いして、骨盤までちゃんと見ておらず大誤答しました…
アウトプットありがとうございます。
幽門部はこれくらい壁肥厚を来すことはあります。周囲の毛羽立ちなどがあれば有意なことがありますが、今回は有意ではありません。
子宮が年齢に比して腫大していると思いましたが、子宮筋腫とみて宜しいでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるように年齢からすると大きいので、筋腫もしくは腺筋症があると考えられます。
テーマ以外の質問で恐縮ですがよろしくお願いします。
十二指腸の乳頭部付近の壁は肥厚してはいないでしょうか?
理由は、壁がやや厚く見えて、総胆管の拡張が有り、膵管が目立ち、左腎静脈の拡張が有るからです。
十二指腸乳頭部壁肥厚→膵頭部腫大→膵頭部と大動脈で左腎静脈が狭窄し拡張したのではないかと推測したのですが、正常範囲なのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>十二指腸の乳頭部付近の壁は肥厚してはいないでしょうか?
少し肥厚様にも見えますが、3層構造を保っている壁肥厚ではないので虚脱しているだけで有意ではないと考えます。
また有意な膵頭部腫大は認めません。
ただおっしゃるように、左腎静脈が狭窄し拡張しており、左卵巣静脈が拡張しています。
血尿の症状などあれば、nutcracker現象の可能性はありますが、これだけでは何とも言えないですね。
CTで成熟嚢胞性奇形腫を疑った場合に、MRIで単純だけでなく造影まで行うことの意義について教えて頂けますでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
意義はないように思います。
そもそもMRIも必要ないかも知れませんね。
どういう意図で主治医の先生がオーダーされたのかは分かりかねます。
23スライド目あたりの膵頭部内の低吸収域(右側)は胆管拡張でしょうか?
アウトプットありがとうございます。
小さな嚢胞があるのかもしれませんが、これだけでは何とも言えないですね。