【頭部】TIPS症例54

【頭部】TIPS症例54

【症例】60歳代 男性
【主訴】体重減少
【現病歴】他院かかりつけ。半年の間に10kgの体重減少もあったため、当院紹介受診となる。

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異常所見は?

左側頭後頭部に三日月状の高吸収域を認めています。

硬膜に接して存在しているように見える点から、この時点では硬膜転移、硬膜下血腫、脳転移などが鑑別に挙がります。

血腫の可能性が否定できないということでフォローされましたが、結果的に変化なく、硬膜転移として診断されています。

この所見も大事なのですが、今回は次の所見を見ていただきたくて出題しています。

一見気づきにくいですが、びまん性に骨硬化を認めています。

びまん性過ぎて、「本当にある?」と思うかも知れません。

そこで、正常例を見てみましょう。

正常例ではこのように内側から

  • 高吸収:内板
  • 低吸収:板間層
  • 高吸収:外板

を確認することができますね。

ところが、今回の症例では内板、板間層、外板が指摘できない状態となっています。

これらの構造がはっきりしないことからも、びまん性に骨硬化を来していることが分かります。

 

診断:多発頭蓋骨転移+硬膜転移疑い(この画像のみでは血腫の可能性もあり)

 

男性で骨増殖性転移(骨硬化性転移)を認めた場合、まず考えるのが前立腺癌ですね。

PSAが測定され、3367と高値を認めました。

 

ここまでのびまん性の骨転移となると、前回の症例のように、胸腹部のCTも見たいところですね。

非提示であった胸腹部CTがこちら。

前回の症例よりもよりびまん性に全身骨に骨硬化を認めており、造骨性骨転移を疑う所見です。

今回はそれ以外にも転移を疑う所見を認めています。

両側腎に造影不良があり、両側腎転移の可能性があります。

また左優位に副腎腫大を認めており副腎転移を疑う所見です。

次にリンパ節です。

右鎖骨上窩にリンパ節腫大を認めており、リンパ節転移を疑う所見です。

 

大動脈周囲や後横隔膜脚腔にもリンパ節腫大を認めています。

これらもリンパ節転移を疑う所見です。

 

診断:前立腺癌、多発骨転移、多発リンパ節転移、硬膜転移、左副腎転移、両側腎転移の疑い。

 

さらに、骨シンチグラフィが撮影されていますので見てみましょう。

骨シンチグラフィは今回のような造骨性骨転移の病変への集積を来しやすいのですが、今回はびまん性過ぎて、ほぼすべての骨に集積を認めています。

ですので、この骨シンチグラフィだけを見ると、あたかも正常のように見えてしまいます。

ここで見るべき点は両側腎臓です。

正常ならば見えるべき両側腎臓への取り込みを認めていません。

腎への集積を認めない(absent kidney sign)ことから正常像との鑑別は可能です。

このようにびまん性に造骨性骨転移を来している状態を、super bone scanとかbeautiful bone scanと呼びます。

間違えても骨転移なしとしないように注意しましょう。

※この後、ホルモン治療が開始されました。

関連:

【頭部】TIPS症例54の動画解説

お疲れ様でした。

今日は以上です。

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