【頭部】TIPS症例53

【頭部】TIPS症例53

【症例】60歳代 男性

2年前に前立腺癌が発覚。ホルモン治療開始となる。フォローのCT。

画像はこちら

副鼻腔炎以外で異常所見は?

まず普通の頭部の条件においては、左上顎洞炎を認めている以外は特記すべき異常所見は認めていません。

今回重要なのは骨条件です。

結構下の方ですので、見落としがちですが、骨盤底や頚椎に割と均一な骨硬化を認めていることが分かります。

今回前立腺癌がありますので、これらの骨硬化性病変は第1に骨転移を疑います。

前頭骨にもわずかな骨硬化があり、これらも骨転移の可能性がありますが、明らかな骨転移とは言いにくいですね。

冠状断像でも骨硬化の様子がよく分かります。

べたーっと均一に広がる骨硬化を認めています。

脊柱管を狭窄するような所見や膨隆性病変は認めていません。

 

診断:多発骨転移疑い

 

※担癌患者の場合は特に、骨転移を除外するために必ず骨条件の観察も忘れないようにしましょう。

なお、左の頬骨弓に骨折線を認めています。

同部に骨転移があり、病的骨折を来している可能性はありますが、同部にも明らかな骨転移があるとは言えません。

 

さて、「頭部のみでなく、他の部位にも骨転移があるのでは?」

と思ってしまいますね。

 

非提示であった胸腹部CTがこちら。

胸腹部の骨条件を見ると、肋骨、椎体骨、骨盤骨、大腿骨などに骨硬化が多発していることがわかります。

全身の骨に多発骨転移を来していることがわかります。

骨条件は激しいですが、骨以外には転移を疑う所見を認めません。

このように前立腺癌の既往があり、多発骨転移のみ見られることもあります。

逆に前立腺癌と判明していない状態で、多発骨転移から全身検索がされて前立腺癌が判明することもあります。ですので、スクリーニングCTでも骨条件を必ずチェックしたいところです。

特に男性の骨硬化性病変の場合は、まず前立腺癌を疑ってPSAをチェックしたいところですね。

 

ちなみにこの方は、2年前に前立腺癌が発覚したときは、PSA 994ng/mlでした。

その後ホルモン治療開始され、今回のCT撮影時は、PSA 0.038ng/mlと落ち着いています。

ですので、今回見ている骨硬化はもともとは骨転移があったところですが、現在では治療に反応した骨新生による良性石灰化を見ていると考えることができます。CT画像では、骨転移による石灰化なのか、治療に反応した骨新生による良性石灰化なのかは判断できませんので、骨転移と指摘しておけば問題ありません。

関連:

その他所見:

  • 左上顎洞炎あり。
  • 右肺上葉に肉芽腫疑い。
  • 肝嚢胞あり。
  • 腎嚢胞あり。
  • 右腎結石あり。
【頭部】TIPS症例53の動画解説


お疲れ様でした。

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