【腹部】復習症例7

症例7

【症例】20歳代女性
【主訴】5日前から増強する腹痛
【身体所見】BP 106/72、P97回/分、BT 37.6℃、意識清明、腹部:平坦、軟、腸雑音聴取良好、心窩部、左腹部で強い腹部全体の圧痛あり、反跳痛なし。CVA tenderness 左++/右+
【データ】WBC 11500、CRP 7.89
【その他】最終性交渉 4日前

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単純CTで子宮の両背側に嚢胞性病変を認めています。
左は一部で高吸収領域を認めており、血腫(や嚢胞の充実部)の可能性があります。

Douglas窩に液貯留を認めていますが、生理的な腹水としては、分布に偏りがあります。

造影すると、子宮右背側にも多房性嚢胞性病変があることがわかります。
また癒着を示唆する牽引所見(引っ張られているように見える)があります。

と、ここまで、婦人科系が今回の主訴の原因ではないかと骨盤内ばかりに目が行っていますが!

両側の腎臓には楔状〜斑状の造影不良を認めています。

腎盂腎炎(正確にはAFBN:acute focal bacterial nephritis 急性巣状細菌性腎炎)を疑う所見です。

臨床所見とも合致します。

診断:両側腎盂腎炎(AFBN)

ということで、腎盂腎炎の復習問題だったのですが、骨盤内の所見も重要です。

婦人科受診となりました。

MRIが撮影されました。

T2強調像では、両側の卵巣を同定することができ、shadingを示唆する低信号の嚢胞を両側卵巣に認めています。

矢状断像では後腟円蓋の挙上および嚢胞と子宮との癒着所見を認めています。

また、両側の卵巣は子宮背側で隣り合うように存在しており、これも癒着を示唆する所見です。

T2強調像で低信号の嚢胞は、T1強調像および脂肪抑制T1強調像でともに高信号であり、両側のチョコレート嚢胞と診断することができます。

また、先ほど述べたように両側卵巣は癒着しており、いわゆるkissing ovaryに近い状態です。

MRI診断:両側チョコレート嚢胞(内膜症性嚢胞)+子宮・直腸との癒着所見

CTでチョコレート嚢胞の診断はなかなか難しいですが、

  • 多房性嚢胞
  • 嚢胞の壁肥厚
  • 高吸収部位がある
  • 不自然な腹水貯留の分布
  • 癒着を疑う所見

などから、(既往にない場合は)CTで引っかけて婦人科受診をして貰うことが重要です。

関連:

ちなみに、当初、骨盤腹膜炎(PID)の合併も疑われましたが、

  • クラミジア検査陰性
  • 淋菌検査陰性

でした。

その他所見:膀胱にびまん性の壁肥厚があり、膀胱炎の合併が疑われる。

 

症例7の動画解説

お疲れ様でした。

今日は以上です。

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