
【症例】20歳代 女性
【主訴】左頸部痛
【現病歴】3日前から左頸部痛あり。近医受診し抗生剤を処方された。症状軽減しないため、当院に来院。
【身体所見】BT 37.2℃、SpO2 97%(RA)、HR 62bpm、左頸部腫大、圧痛あり。リンパ節腫脹なし。開口障害なし。
【データ】WBC 12800、CRP 0.59、free T3 1.68、free T4 1.04、TSH 0.8115
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甲状腺左葉は右葉と比べて腫大し、内部に不均一な低吸収域を認めています。
その目で見ないと厳しいかもしれませんが、下咽頭から甲状腺左葉上極に連続する管状構造を認めています。
梨状窩瘻を疑う所見です。
また、周囲には脂肪織濃度上昇や浮腫性変化を認めており、軽度気管が右側に偏位している様子が分かります。
次に冠状断像を見てみましょう。
冠状断像の方が甲状腺の全体像が分かりやすいですね。
甲状腺は全体的に腫大し、上極優位に内部に不均一な低吸収を認めています。
周囲に脂肪織濃度上昇を認め、気管を軽度右側に圧排している様子がわかります。
これもその目で見ないと厳しいかもしれませんが、下咽頭から甲状腺左葉上極に連続する管状構造を認めています。
梨状窩瘻を疑う所見です。
甲状腺機能はほぼ正常範囲内であり、これらの所見から、急性化膿性甲状腺炎が疑われました。
梨状窩瘻の描出には下咽頭造影が有用です。
下咽頭造影が施行されました。
下咽頭から連続する管状構造を左だけに認めています。
梨状窩瘻を疑う所見です。
診断:(下咽頭梨状窩瘻による)急性化膿性甲状腺炎
※(下咽頭より認める)瘻管および甲状腺左葉の切除術が施行されました。
【顔面+α】症例29の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
左梨状窩の造影剤のたまりが気になりつつも、診断には到達しませんでした。
梨状窩瘻の症例ありがとうございました。実臨床で遭遇した際には、見逃さないようにしたいと思います。
アウトプットありがとうございます。
>左梨状窩の造影剤のたまりが気になりつつも
その目で見ないと正常範囲かと思ってしまいますね。
>梨状窩瘻の症例ありがとうございました。実臨床で遭遇した際には、見逃さないようにしたいと思います。
甲状腺と連続する瘻孔構造を認めた場合は、この疾患を思い出していただき、下咽頭造影を勧めていただけたらと思います。
梨状窩瘻は「下咽頭梨状窩の先天性瘻孔(梨状窩瘻)から感染をしたもの。なので確定診断には下咽頭造影で、瘻孔を確認する。」
なんですね。勉強になりました。外傷とか起因するのかと思いましたが先天性なんですね。甲状腺炎までしかわかりませんでした。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>確定診断には下咽頭造影で、瘻孔を確認する。
おっしゃるとおりです。この疾患ならではですね。
>甲状腺炎までしかわかりませんでした。
まずはそこに気づくことが重要です。
悪性腫瘍よりも膿瘍形成や管状構造に見えるとこまで感じたものの、肝心の梨状窩瘻というものを知りませんでした。
造影も右側にも垂れていて、左右差はあれど「そもそもそうゆうものなのかー」と思いスルーでした。
貴重な症例ありがとうございます。
アウトプットありがとうございます。
>悪性腫瘍よりも膿瘍形成や管状構造に見えるとこまで感じたものの、肝心の梨状窩瘻というものを知りませんでした。
一度経験しないとなかなか覚えられない疾患ですね。
逆に一度経験すると、発症形式が特殊なのでインパクトがあって覚えていると思います。
>造影も右側にも垂れていて、左右差はあれど「そもそもそうゆうものなのかー」と思いスルーでした。
そう見えてしまいますよね。なんで下咽頭造影の画像があるのだろうと・・・
そのわずかな差が重要なのです。