
症例3
【症例】60歳代 女性
【主訴】骨盤内腫瘤
【現病歴】腰痛にて他院受診。その際の腰椎レントゲンで5cm大の骨盤内腫瘤を指摘されたため、紹介受診となる。
画像はこちら
CTのスカウト画像で骨盤内に石灰化を有する腫瘤を認めています。
(ちなみに今回スカウト画像を提示したのは、腹部レントゲンが撮影されていなかったという事情があります。)
何か大きな悪性腫瘍でもあるのでしょうか?
このような骨盤内の粗大な石灰化を見た場合に、まず思いつかなければならないのが、
子宮筋腫の石灰化変性です。
子宮筋腫の一部ではなく、筋腫そのものがほぼ石灰化に置き換わっているケースがあります。
この方のCT画像を提示します。
腹部単純CTの横断像です。
このような桑実状の石灰化は子宮筋腫に特徴的です。
冠状断像でも同様です。
冠状断像では、スカウト像と同じ方向ですので、その様子がわかりやすいかも知れません。
MRIも撮影されていますので提示します。
T2WIで通常の筋腫よりもより低信号を示す子宮筋腫を認めています。
石灰化部位に一致して、T2WIで著明な低信号を示しています。
矢状断像でもその様子がよくわかります。
造影脂肪抑制T1強調像では、子宮の造影効果と比べて、ほぼこの石灰化子宮筋腫には造影効果がないことがわかります。
子宮筋腫は一部のみ石灰化するケースが多いですが、このように子宮筋腫全体に石灰化を起こして腫瘤のようにみえることがあるので覚えておいてください。
その他所見:
- 右腎結石あり。
- 肝嚢胞あり。
- 結腸憩室あり。
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
確かに、腹膜ねずみであればもう少し均一な感じな高吸収になるんでしょうか(;’∀’)
大きい遊離体自体は検索したら出てきましたし、
TIPSだから(?)というよくわからない理由で誤診してしまいました(;’∀’)
でも、スカウトの画像の問題もあって面白いですね(^▽^)/
この講座は基本的にはCTですけど、しっかり読めば
そこから単純写真やMRの読影にもつながってくる
(レントゲンの影とかも、「たとえばCTを撮ったとしたらどういう所見になっているんだろう」と考えながらやるとよく読めるようになってきています)
スカウトで肝臓のあたりに卵型の高吸収が見えます。
肋骨の角度によるものなんでしょうけど、
CTを見ると左右の肋骨が対称的に曲がっている見えます。
これは陳旧性骨折なのか、
あるいは(腰椎が側弯するように)
肋骨もこのくらいなら曲がるのか、
どちらなんでしょうか?
またお願いします
アウトプットありがとうございます。
>確かに、腹膜ねずみであればもう少し均一な感じな高吸収になるんでしょうか(;’∀’)
大きい遊離体自体は検索したら出てきましたし、
TIPSだから(?)というよくわからない理由で誤診してしまいました(;’∀’)
腹膜ネズミであれば辺縁に骨硬化が目立って楕円形になるのが一般的です。
また内部も比較的均一です。
一方で子宮筋腫の石灰化は「桑実状の石灰化」と表現されます。
(追記しました)
>でも、スカウトの画像の問題もあって面白いですね(^▽^)/
ですね。S状結腸軸捻転などスカウト画像で診断できる疾患もありますし、
バリウムだらけでこれはCT撮影するの微妙じゃないかと気づけることもありますね。
>CTを見ると左右の肋骨が対称的に曲がっている見えます。
これは陳旧性骨折なのか、
あるいは(腰椎が側弯するように)
肋骨もこのくらいなら曲がるのか、
どちらなんでしょうか?
元画像で骨条件で確認しました。たしかに左側でやや蛇行があり、
古い骨折があるのかもしれません。
ただし、はっきりとした骨折後の変化(骨折部の腫大、ズレ、皮質の変化など)
は認めていません。
これは似たような症例を経験(XP撮影→MRI撮像)がありました。ごろ~先生が仰るとおり、経験したこと、見た事があるかどうかはやはり大きなアドバンテージですね。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。見たことがなければびっくりしてしまうかもしれない症例ですね。
桑実状の石灰化
次に出会ったら即答できるようにしようと思います.
極めて稀ではなく、割と頻度は高いので覚えておきましょう。
子宮筋腫の石灰化自体はCTでよく目にしますが、ここまで石灰化の強い症例は初めて見ました。
現病歴に「腰椎レントゲンで5cm大の骨盤内腫瘤を指摘されたため、紹介受診」とありますが、仮にこの症例で子宮筋腫が過去に診断されていた場合は上記レントゲンだけで子宮筋腫の石灰化変性と判断してCTやMRI等による精査をしない、という選択は取りうるのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>子宮筋腫の石灰化自体はCTでよく目にしますが、ここまで石灰化の強い症例は初めて見ました
おっしゃるとおり子宮筋腫の石灰化自体は極めて頻度が高いですね。
こんな感じで筋腫全体が石灰化を示す例も割とありますのでこの機会に覚えておきましょう。
>仮にこの症例で子宮筋腫が過去に診断されていた場合は上記レントゲンだけで子宮筋腫の石灰化変性と判断してCTやMRI等による精査をしない、という選択は取りうるのでしょうか?
おっしゃるとおりですね。
婦人科でエコーでフォローのみで良いかと思います。
ここまで石灰化した子宮筋腫を見たのは初めてです。
ここまでだと患者様本人も重たく感じそうですね。
たまにこれくらい石灰化の強い子宮筋腫あります。
確かに重そうですね・・・。
単純写真の読影は面白いと同時に本当に大変ですね(^-^;
CTやMRIを何となく読み慣れてからでないと、立体的なイメージは本当に難しいと思います。
レントゲンしかなかった時代や、フィルム読影の時代で仕事することを考えるとゾッとします(;´Д`)
そうですね。
石灰化子宮筋腫については、逆に単純レントゲン時代はたくさんみられたでしょうから、
あ、また子宮筋腫かとむしろ即答できていたのかもしれません。
石灰化する良性腫瘍はいくつか勉強しましたが、子宮筋腫が石灰化するとは知らなかったです。今回も大変参考になりました。
ここまで石灰化すると腰痛だけでなく、触診時に腹部の圧痛とかもありそうですね。
アウトプットありがとうございます。
子宮筋腫は結構な割合で石灰化をみとめますので覚えておきましょう。
腰痛になるかは症例にもよると思いますが、おっしゃるようにサイズが大きいものは触診時に硬いものを触れるでしょうね。
CTで子宮筋腫を見たことはありますが、ここまで石灰化するとは思ってもいませんでした。
石灰化がここまで進行すると、腹部よりも腰への痛みが強くなるものなんですね。
アウトプットありがとうございます。
>ここまで石灰化する
石灰化子宮筋腫はかなり頻度が多いですが、確かにここまではそれほど多くありませんね。ただし、稀とは言えない程度の頻度では見ます。
>石灰化がここまで進行すると、腹部よりも腰への痛みが強くなるもの
これはケースバイケースですので症状との相関関係は一概に言えません。
ギネ志望の身として、桑実状の石灰化、今後忘れずに覚えておきます(というかTips症例むず過ぎ…笑)。
ちなみに研修医0051さんのコメントと似ていますが、「桑実状の石灰化」の鑑別で悪性腫瘍は考えなくていいということなのでしょうか?確かに、石灰化を伴う子宮体癌はあんまり報告なさそうですが…。
アウトプットありがとうございます。
>確かに、石灰化を伴う子宮体癌はあんまり報告なさそうですが…。
そうですね。筋腫で典型的なので、悪性を考える必要はとりあえずなしでよいですね。
研修医1ヶ月の名も無きものです
学生の頃に放射線科実習で子宮筋腫のCTの読影をしたことがあり、この腹部TIPSで初めて正解にたどり着けました(まぐれですけど)
やはり、画像診断は難しいけど面白いですね。
今後ともよろしくお願いします。
アウトプットありがとうございます。
こちらこそよろしくおねがいします。
総合診療科専攻医1年目です。虫垂ブートキャンプから入りこちらも始めました。いつも貴重な症例をありがとうございます。
質問ですが、石灰化を伴うということで、奇形種もこのような腹部Xpを示すことがあるでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>石灰化を伴うということで、奇形種もこのような腹部Xpを示すことがあるでしょうか?
奇形腫で石灰化を有する場合レントゲンで石灰化は指摘可能と考えますが、桑実状の石灰化は通常筋腫を疑いますね。
お返事ありがとうございました。
いつも楽しみにしています!
CT横断像50-59あたりで脾周囲の腹膜?に付着しているつららのような高吸収域は何ですか?
アウトプットありがとうございます。
横隔膜ですね。少し蛇行が目立ちますね。周りの筋肉と同じくらいの吸収値ですね。
軽度心拡大の所見はありますでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
そうですね。ありますね。
なるほど、稀ほどではないが高頻度でもない、実際に目の当たりにした際は自信を持って即答できるよう覚えておきます
アウトプットありがとうございます。
子宮筋腫自体に石灰化を伴うことは割と高頻度です。
今回のようにサイズが大きいものはやや稀かもしれません。
子宮の石灰化は生理的にも起こると思うのですが、具体的にどの様な所見で異常を疑うべきなのでしょうか。ご教授いただけると幸いです。
アウトプットありがとうございます。
こちらの症例も石灰化が強いですが、生理的な変化の範疇に入ります。
サイズが大きいので取り上げました。
今回指摘された子宮筋腫は本症例の腰痛の原因としては矛盾しなかったのでしょうか
それとも他に原因となる疾患があったのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
症状との相関はよくわかりません。
卵巣の奇形腫は似たような写り方はするものでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
奇形腫の場合は石灰化に加えて、脂肪成分を含むのが通常です。
また石灰化のパターンも子宮筋腫とは異なります。
ごろ〜先生、症例提示ありがとうございます。
技師です。
CT画像について、下腹部内の内臓脂肪濃度が上腹部と比べて高いように見えてしまうのですが、気のせいでしょうか…
アウトプットありがとうございます。
気のせいだと思われます。
全体的にやや目立つ方ですね。
医学生です。毎回の症例で多くのことを学べ、ごろ~先生には本当に感謝です!!
今回、子宮筋腫だな、とは思ったのですが、「腰痛」を伴っていることから「捻転」しているのではないかと疑ってしまいました…。よくよく見たら、子宮周囲の脂肪組織濃度の上昇も見られないですし、炎症はないみたいですね。腰仙骨神経叢の圧迫による腰痛、ということでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>腰仙骨神経叢の圧迫による腰痛、ということでしょうか?
是非習慣としていただけたら幸いです(^^)
>腰仙骨神経叢の圧迫による腰痛、ということでしょうか?
その可能性もありますが、画像からは今回の主訴の原因はっきりしません。
産科医です。
自分の専門領域なので、初めて正解出来ました。
高齢の方の筋腫は、石灰化を伴うことも珍しくないですね。
5cm程度であれば、たぶん症状もほとんど出ないと思います。
閉経後の筋腫は特に治療の必要はありませんので、僕だったら1Y間隔の検診にし、増大がないことを確認するかな、と思います。
アウトプットありがとうございます。
>5cm程度であれば、たぶん症状もほとんど出ないと思います。
閉経後の筋腫は特に治療の必要はありませんので、僕だったら1Y間隔の検診にし、増大がないことを確認するかな、と思います。
専門の先生の貴重なご意見ありがとうございます。
大変参考になります!