【顔面】症例18

【症例】40歳代 男性
【主訴】顔面打撲
【現病歴】仕事中に壁に立てかけてあった鉄パイプをロープで固定したときにバランスが崩れ、倒れて来て負傷。
【身体所見】意識清明、BP153/117mmHg、P 74bpm、BT 36.8℃、眼瞼腫脹著明、左前額部裂挫創、左頬部裂挫傷、右口角挫創

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右前頭部に凸レンズ状の血腫あり、内部に気脳症を疑うairを認めており、急性硬膜外血腫を疑う所見です。

右側脳室は圧排されており、正中構造の偏位を認めています。

脳幹周囲に広範な気脳症を認めています。

また両側側頭葉先端部周囲に高吸収が目立ち、外傷性くも膜下出血を疑う所見です。

脳幹周囲はくも膜下腔が不明瞭で血腫による圧排、くも膜下出血による変化、浮腫性変化が疑われます。

切迫脳ヘルニアの状態もしくはそれに近い状態が疑われます。

次に骨条件を見てみましょう。

凸レンズ状の血腫がある部位に骨折線があり、気脳症を認めています。

血腫の形状からも、骨折を伴っている点からも急性硬膜外血腫が疑われます。

先ほどの前頭骨の骨折に連続する右の眼窩外側壁および内側壁(後壁)に骨折線を認めています。

篩骨洞外側壁に複数骨折線を認めています。NOE骨折を疑う所見です。

また、トルコ鞍後壁に骨折線を認めています。

このトルコ鞍後壁の骨折線から連続して、左頸動脈管に骨折線を認めており、また頸動脈管内にairの迷入を認めています。

頸動脈損傷を除外する必要があります。

※後日脳血管造影が施行されて、血管損傷はないことが確認されました。

上顎洞前壁・外側壁、右頬骨弓に骨折を認めています。

この辺りはZMC骨折の症例でいくつか見てきましたね。

骨折した頬骨弓は軽度内側に偏位しています。

また硬口蓋右側に横断する骨折線を認めています。

また右の視神経管に骨折を認めていますが、視神経管の狭窄を来す所見は認めていません。

次に冠状断像を見てみましょう。

右眼窩底骨折を認めており、一部眼窩内容物の逸脱を認めますが、下直筋に腫大や偏位は認めていません。

また右眼窩外側壁、右上顎洞外側壁に骨折線を認めています。

篩板に骨折線があり、同部から入ったと考えられる気脳症を結構な量認めています。

頭蓋底骨折を疑う所見です。

髄液漏の可能性を考えなければなりません。

最後に3D再構成画像を見てみましょう。

頬骨と周囲の骨の縫合線を中心に骨折を認めており、頬骨上顎複合骨折(ZMC骨折)の状態です。

また今回はそれに加えて前頭骨骨折もあり、同部で急性硬膜外血腫を認めているのでした。

 

診断:右急性硬膜外血腫+脳ヘルニア疑い+気脳症+右ZMC骨折+右NOE骨折+α(硬口蓋骨折、視神経管骨折、頚動脈管骨折など)

※盛りだくさんの症例ですね(^_^;)

※脳外科入院となり、急性硬膜下血腫除去術が施行されました。その後、血管造影で血管損傷を疑う所見を認めないことを確認して、明らかな髄液漏が遷延している可能性は少ないと臨床的に判断された段階で脳外科的には安定と判断され、形成外科に転科となりました。

※形成外科では、右頬骨、眼窩底骨折に対して、骨折観血的手術が施行されました(頬骨体部を8穴直線型プレートで、上顎骨と頬骨前頭縫合を4穴直線型プレートで固定。)。

 

【顔面】症例18の動画解説

お疲れ様でした。

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