
【症例】60歳代 男性
【主訴】意識消失
【現病歴】旅行中。本日夜行バスの乗り場で、前のめりで転倒あり。意識消失時間は3分程度。
【身体所見】vitalに異常なし。脳神経学的所見に異常なし。左上眼瞼に皮下出血、腫脹あり。
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まず横断像から見てみましょう。
左中頭蓋窩に血腫を認めています。急性硬膜外血腫(もしくは硬膜下血腫)を疑う所見です。
また篩骨洞左側に高吸収があり、こちらも血腫の可能性があります。
左の眼窩内にairを認めています。また、眼窩内側壁に骨折を疑う所見があります。
先ほどの左中頭蓋窩の血腫にairがあり、気脳症を疑う所見です。
ということはこの辺りにも骨折があると推測されます。
次に骨条件を見てみましょう。
やはり左の側頭骨に骨折線があります。
また左の頬骨弓に2カ所骨折線を認めていますが、咬筋を圧迫するような骨の転位は認めていません。
thin sliceでないので少し見にくいですが、篩骨洞左外側壁(左眼窩内側壁)および左上顎洞外側壁に骨折線を認めています。
次に骨条件の冠状断像を見てみましょう。
冠状断像では、篩骨洞の上壁および左眼窩上壁にわずかな骨折線を認めています。
篩骨洞上壁では骨折部にわずかなairを認めています。
これらはいずれも頭蓋底骨折を示唆する所見です。髄液漏に注意が必要です。
診断:急性硬膜外血腫+多発骨(側頭骨骨折、頬骨骨折、篩骨洞骨折、眼窩上壁骨折)
※脳外科入院となり、保存的に加療されました。血腫の増大は認めませんでした。旅行中であり、10日後退院となり、自宅近くの病院へ紹介受診となりました。
【顔面】症例17の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
硬膜下腔(と思われる)部位に左右差がありますが、外傷の影響でしょうか?
アウトプットありがとうございます。
確かに左で少し空いているようにも見えますが、水腫があるとはこれではちょっと言えないですね。
左右差については経過を見るしかないですね。
中頭蓋窩の気脳症を見逃してしまいました。
骨条件で真っ黒なところを探したつもりだったのですが。血腫そばの骨折線も分かりませんでした。
あるはずだと探しても見つけられない読影力ではいままでたくさん見逃してきた気がします。年末年始の当直までにレベルアップできるよう頑張ります。
(おそらく主に診るのはCOVID-19と発熱患者ですが)
アウトプットありがとうございます。
>血腫そばの骨折線も分かりませんでした。
今回はthin sliceがなかったのでちょっとわかりにくかったですね。
>あるはずだと探しても見つけられない読影力ではいままでたくさん見逃してきた気がします。
見逃しは誰にでもありますが、見逃してはならない所見を最低限取れるようにしましょう。
>おそらく主に診るのはCOVID-19と発熱患者ですが
ですね。例年、年末年始はいろんな種類の疾患が来ますが、今年はかなり絞られそうですね・・・。