
【症例】10歳代 女性
【主訴】鼻部打撲
【現病歴】昨日バスケットボール中に他者の頭が鼻部に当たった。
【既往歴】なし
【身体所見】鼻根部に皮下出血あり、軽度左斜鼻、顔面感覚低下なし、眼球運動ful/ful
画像はこちら。
鼻骨右側に骨折線を認めており、内側に転位を認めております。
鼻骨骨折(斜鼻型)を疑う所見です。
このスライスで、鼻中隔に透亮像を認めますが、鼻中隔にこのような透亮像はしばしば認めますので、安易に骨折としないように注意が必要です。
また、鼻中隔は横断像や冠状断像で、このように屈曲していることがしばしばあるので、安易に骨折としないように注意が必要です。
今回の症例でも両側の鼻骨上顎縫合を同定することできます。
尾側に追っていくと、骨折線が出てくるくらいのスライスでは左に比べて右の鼻骨上顎縫合が目立ち、少し離れているようにも見えます。
骨折の影響でやや離開している可能性があります。
診断:鼻骨骨折(斜鼻型)
※形成外科で局所麻酔下で、鼻骨骨折整復が行われ、メローセルを右側に留置し、外固定装着となりました。
関連:
【顔面】症例2の動画解説
顔面骨骨折総論 動画解説
追記
横断像で鼻骨上顎縫合の腹側が鼻骨で、背側が上顎骨だと思うのですが、本症例のように、横断像で同じスライスに骨折線と鼻骨上顎縫合がある場合、鼻骨上顎縫合の背側は上顎骨だから上顎骨骨折ではないかと思ったのですが、どうでしょうか。
う・・・・・(^_^;)
改めて目の前の頭蓋骨に聞いてみました。
鼻骨と上顎骨の関係は上のようになっています。
その境界にあるのが鼻骨上顎縫合であるということです。
となると、この質問のように、鼻の付け根というのは上顎骨であるということですね。
ですので、正確には鼻骨骨折ではなく、上顎骨骨折が正しいということになります。
この部分の骨折はこれまで何でも鼻骨骨折として扱ってきたので、改めてこのパーティーを見直してみました。
頭頸部の救急画像診断を学ぶならこのパーティーでしょ。#画像診断 pic.twitter.com/vgRnVZECKy
— ごろ~にゃ@画像診断cafe (@radiology_cafe) November 12, 2020
すると、多くの書籍でこの部分の骨折を、鼻骨骨折として扱っていました。
頭頸部領域では最も詳細に記載のある、頭頸部の臨床画像診断学 改定第3版でさえ、鼻骨骨折と記載されています。
しかし、頭蓋・顔面病変の画像診断には、同部の骨折を「上顎骨前頭突起にも骨折を認めている」と記載されていました。
こちらの方がより正確ということになりますね。
診断:鼻骨骨折(斜鼻型)→右上顎骨前頭突起骨折
※上顎骨の前頭突起の解剖はこちらがわかりやすいです。まさに鼻の付け根のところですね。
※正確には上顎骨骨折となりますが、慣例的に広義の?「鼻骨骨折」と呼ばれていることが多いですね。
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
鼻中隔の湾曲はいつも骨折なのか正常範囲なのか迷ってしまいます
取りすぎないようにしないとだめですね
アウトプットありがとうございます。
鼻中隔弯曲の診断は難しいですね。今回の症例の程度ならば正常範囲ですね。
骨透亮像を認めることがしばしばあるので注意が必要ですね。
左目の内側で鼻骨の外側にあるair像は正常でしょうか?骨折像に反対側ですが・・・ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>左目の内側で鼻骨の外側にあるair像は正常
これは鼻涙管に相当する部位のことをおっしゃっているのだと思います。正常ですね。
鼻中隔は、骨折方向と反対の屈曲だったので今回は迷いませんでしたが、もし同側の屈曲だとすごく迷ったと思います。
アウトプットありがとうございます。
鼻中隔はしばしば判断に迷いますが、少々の屈曲では骨折としないように、怪しい場合はthin sliceやMPR画像を駆使して判断ですね。
意識して見てみると鼻中隔は紛らわしいのですね。初見だと骨折だと飛びついてしまいそうなので、ここで知れて助かります。
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるように鼻中隔は骨折や弯曲をどこから有意ととるべきなのかなど難しいですね。
普段、あまり気にして見れていない鼻中隔も、こうしてみると正常でも湾曲があったり透亮像があるんですね。
今回のように普段、ちゃんと見ていないところをフォーカスして見ると、正常所見を異常ととってしまいそうなので注意喚起助かります。
鼻骨折は見逃しても命に別状はなさそうですけど、見逃して整復が行われないと美容の面で後遺症?が残りそうですね。
アウトプットありがとうございます。
鼻中隔の評価は難しいですね。透亮像や少々の弯曲が正常でも見られるので注意が必要ですね。
>鼻骨折は見逃しても命に別状はなさそうですけど、見逃して整復が行われないと美容の面で後遺症?が残りそうですね。
そうですね。鏡で自分の顔を見て曲がっていると思うのに、骨折はなしとされ、後に骨折があると他院に言われたら問題になることもあるかもしれませんね(^_^;)
治療について調べてました。
【鼻骨骨折の治療】
受傷後1-3時間以内で高度浮腫の出現前ならば、鉗子を挿入して矯正するclosed reductionが可能な場合がある。
しかし、実際には受傷直後に受診するケースが少なく、浮腫により評価やclosed reductionによる整復が困難なことが多い。
なので、3−7日待ってから再評価、外科的修復の適否などについて考慮する。
■手術適応の場合
通常は受傷後5-10日で修復される。
さらに7-10日以上経過すると骨折部の線維化の進行が起こるため、創部が治癒する3−4ヶ月後まで待機する方が望ましい。
とのことです。
手術適応の場合は、
受傷後10日以内でなければ、数ヶ月待ってからということのようです。
参考:頭頸部の臨床画像診断学 改訂第3版 P840-841
本講座も宜しくお願い致します(卒業前に顔面救急・腹部救急に参加させて頂きます)!
横断像で鼻骨上顎縫合の腹側が鼻骨で、背側が上顎骨だと思うのですが、本症例のように、横断像で同じスライスに骨折線と鼻骨上顎縫合がある場合、鼻骨上顎縫合の背側は上顎骨だから上顎骨骨折ではないかと思ったのですが、どうでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
まさにおっしゃるとおりでした。追記しました。
言われるがまま、そういうものかと受け入れるのではなく、常に解剖を確認しながら理解することが重要だと改めて感じました。ありがとうございます(^^)