
症例71
【症例】80歳代 男性
スクリーニング。
総胆管結石があるのではと言われたがどうですか?
画像はこちら
T2WIで総胆管の中心部に低信号域を認めています。
総胆管結石でしょうか?
そのやや尾側にも総胆管の中心部に低信号を認めています。
3DのSPACEでこの場所を確認してみましょう。
みなさんの環境ではできませんが、この低信号部位とSPACEの該当箇所を見てみますと、結石はなさそうです。
ではこの低信号はなにでしょうか?
これが、胆汁の流れによるflow voidアーチファクトです。
胆汁の流れによるこのアーチファクトは総胆管の中心部に低信号として認めるのが特徴です。
診断:総胆管結石ではない。胆汁のflowによるアーチファクト
もう一つ症例を見てみましょう。
参考症例 80歳代男性
先ほどの症例ほど明瞭ではありませんが、この症例も総胆管の中心部に低信号域を認めています。
また上下にスクロールするとかなりこの範囲が長いことがわかります。
中心部に薄い低信号がずっと見えるような感じですね。
その様子は冠状断像で一目瞭然です。
総胆管の中心に広範に線状の低信号を認めています。
このように中心部に認めている場合は、胆汁の流れによるアーチファクトと診断することができ、これを総胆管結石などとしないように注意が必要です。
その他所見:参考症例では脾動脈瘤を認めています。
関連:MRCPにおける胆汁の流れによるアーチファクト、総胆管結石との鑑別は?
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
今回の症例とは関係ないのですが、参考症例の脾動脈瘤の場所がいまいちわからないのですが、横断像の15~17スライス目(特に16スライス目)の脾臓の右上の構造物であってますでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>横断像の15~17スライス目(特に16スライス目)の脾臓の右上の構造物であってますでしょうか。
おっしゃるとおりです。
症例ありがとうございます。
2点質問があります。
中心部のflow voidによるものとのことですが、中心部と周辺部の流速の違いで中心部に低信号域が生じるとの理解でよろしいでしょうか?
また、膵体部にT2高信号の嚢胞状病変を認めますが、主膵管型IPMNの可能性が高いでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>中心部のflow voidによるものとのことですが、中心部と周辺部の流速の違いで中心部に低信号域が生じるとの理解でよろしいでしょうか?
おっしゃるとおりです。
>膵体部にT2高信号の嚢胞状病変を認めますが、主膵管型IPMNの可能性が高いでしょうか?
分枝型のIPMNの可能性が高いです。
病変らしき所見を認めた場合、他の断面やシーケンスとの比較が大切ということを再認識しました。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。
横断像での2D撮影の方が、3D法に比べてこのアーチファクトが起こりやすいので3D法で確認が重要ですね。
本日もありがとうございました。
脳脊髄液のフローアーチファクトと同じですね。
p.s. 昨日の当直で、若年女性の虫垂炎が来ました。見づらい虫垂だったのですが腫大した虫垂を同定し、外科callできました。(パッと見た感じ重症でない感じだったので、見逃さなくてよかったです) 今朝緊急手術になりました。
ブートキャンプに参加して本当に良かったです(T_T)
アウトプットありがとうございます。
>脳脊髄液のフローアーチファクトと同じですね。
おっしゃるとおりです。
>パッと見た感じ重症でない感じだったので、見逃さなくてよかったです) 今朝緊急手術になりました。
当直お疲れ様です。
無事診断されたようでよかったです(^^)
虫垂炎は簡単なものは診断は容易ですが、若い女性など内臓脂肪が少ない場合は難しいこともしばしばあります。
横断像だけで見るのではなく冠状断像(必要に応じて矢状断像)を必ず作ってもらって観察ですね。
ありがとうございます。
頭部MRA講座で、太い動脈では中心部が黒く抜けることがあると学んでいたので、その仲間かなぁと、考えることができました。
アウトプットありがとうございます。
>頭部MRA講座で、太い動脈では中心部が黒く抜けることがあると
そんなのありましたっけ?(^_^;)
覚え違いをされているような気もします・・・。
いつも貴重な症例をありがとうございます。
本症例でも2D-balanced系の冠状断を撮像されていますが、自施設では胆道や血管など脈管系に異常所見を認めた場合、2D-balanced-GREシーケンスを追加しています。呼吸停止下20秒ほどで撮像出来ること、3mm程度のスライス厚が可能なこと、SE系よりGRE系の方がフローアーチファクトが出にくいこと、なとが有用かと思います。
総胆管の偽病変としては、右肝動脈による胆管の圧排や欠損が有名でしょうか?症例41参照ですね。
アウトプットありがとうございます。
>呼吸停止下20秒ほどで撮像出来ること、3mm程度のスライス厚が可能なこと、SE系よりGRE系の方がフローアーチファクトが出にくいこと、なとが有用かと思います。
このあたりは私は全然詳しくないので勉強になります。
>総胆管の偽病変としては、右肝動脈による胆管の圧排や欠損が有名でしょうか?症例41参照ですね。
補足ありがとうございます。