
症例66
【症例】40歳代男性
【主訴】特になし。
スクリーニング
小腸間膜の脂肪織濃度上昇はなにを意味する?
画像はこちら
小腸間膜に脂肪織濃度上昇を認めています。
腸間膜内には扁平なリンパ節を複数認めています。
やや頭側のレベルでも同様に脂肪織濃度上昇を認めています。
腹痛などの症状があれば、腸間膜脂肪織炎の可能性がありますが、今回は特に症状がないため、これらの所見は日常臨床でもよく見られる偶発的な非特異的所見であるといえます。
腸間膜にまるで霧がかかったようにみえる様子から、misty mesenteryと呼ばれます。
10ヶ月後の画像を見てみましょう。
今回の所見と特に変化がありません。
変化がないという点もより、misty mesenteryを疑う所見です。
診断:非特異的腸間膜脂肪織濃度上昇(+小リンパ節)もしくはmisty mesentery
関連:腸間膜脂肪織濃度上昇(misty mesentery)とは?原因、鑑別は?
その他所見:特になし。
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
とりあえず無症状でも腸間膜脂肪織炎と診断するものと思っていましたが、区別する様になったのですね。勉強になります。
アウトプットありがとうございます。
>とりあえず無症状でも腸間膜脂肪織炎と診断するものと思っていました
「非特異的な腸間膜脂肪織炎」ということであればそれで良いと思いますが、憩室炎や虫垂炎などのようにまさにここに炎症が起こっておりそれが原因で腹痛などの症状を来しているものではないということですね。
結節が大きかったり脂肪混濁が目立つとリンパ腫鑑別にあげたりしますが実際よく似たリンパ腫はあるのでしょうか?一応画像のみ2-3ヶ月後follow勧めますがsIL2-rもチェック必要でしょうか?
腸間膜の腫瘍の中でも、悪性リンパ腫は最も頻度が高いことが知られています。
腸間膜動静脈および脂肪組織を取り囲むようにpotential spaceに腫瘍が増大した結果、3層構造を示し、sandwich signと呼ばれます。
腸間膜の悪性リンパ腫に特徴的な所見とされています。(消化管の画像診断 P331)
リンパ節自体がかなり大きく腸間膜を埋め尽くすかそれに近い状態の場合は特に悪性リンパ腫を考えますが今回のようなサイズの小さなものは日常臨床でしばしば見かけますので、画像でフォローのみで良いかと考えます。
Misty mesentry勉強になりました。なんとなく違うかなと思いましたが、腹膜播種も鑑別にあがると考えました。単純CTでは、明らかな腫瘍性病変を認めませんが、個人的には小腸腫瘍など鑑別に造影CTをとってみてしまうかもしれないな、と考えました。腹膜播種との明確な鑑別ポイントなどあればご教授いただければ幸いです。
アウトプットありがとうございます。
播種も鑑別には挙がりますね。
播種の場合は腸間膜に認めることもありますが、大網に認めて脂肪織濃度上昇を認めたり、結節を認めたり、増大するといわゆる大網ケーキ(omental cake)となります。
今回は分布が小腸間膜のみに広く認めていますのでその点が播種としては非典型的ですね。
むしろ考えなければならないのが関連ページに記載あるように悪性リンパ腫ですね。
腸間膜脂肪織の上昇が動脈に沿って目立つように見えるのですがこれには意味はあるのでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
確かにこの症例はその傾向がありますが、特に意味はないと思います。
下行結腸〜直腸に粘膜下層の肥厚があり鑑別に悩んだのですが,これはどういった病態だったのでしょうか…(10ヶ月後は粘膜下層の肥厚が直腸に限局している)
アウトプットありがとうございます。
>下行結腸〜直腸に粘膜下層の肥厚
こちらは少し肥厚があるようにも見えますが有意ではないと考えます。
例えば虚血性大腸炎の場合などもっと肥厚するのが一般的です。
10カ月後もですが直腸には粘膜下層の脂肪変性を認めています。
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/training/abmo
こちらの
所見からせまる造影パターンによる腸管壁肥厚の鑑別の4分24秒あたりをご覧ください。
日常、無症状でたまに見かける所見で、依頼医からよく質問されます。
「病的意義に乏しい所見です。」と答えていましたが、「misty mesentery」と言うのですね。勉強になりました。
アウトプットありがとうございます。
>日常、無症状でたまに見かける所見で、依頼医からよく質問されます。
やはりそうなんですね。
>「病的意義に乏しい所見です。」と答えていましたが、「misty mesentery」と言うのですね。勉強になりました。
病的意義に乏しい所見です。と答えた方がよいかもしれません(^_^;)
後輩などには、misty mesenteryとも言うとご指導ください。
あまりこれまでは意識してませんでしたが見逃してたのかもしれません。今後見つけたら鑑別を考えようと思います。
アウトプットありがとうございます。
小腸間膜沿いに広範に見られることもしばしばあるため、意外と気づかないことも多いかもしれません。
虫垂同定ブートキャンプ延長戦の症例2でも認めていましたね。
いつも貴重な症例をありがとうございます。
私もmisty mesenteryと言う表現を初めて知りました。自施設では、sclerosing mesenteritisやmesenteric panniculitisなどと呼んでいました。
症状など無ければ基本的にスルーしますが、病的意義を有する病態としてはリンパ腫の中でも、濾胞性リンパ腫follicular lymphomaが多い印象です。←勝手なイメージです(笑)
アウトプットありがとうございます。
>自施設では、sclerosing mesenteritisやmesenteric panniculitisなどと呼んでいました。
呼び方は色々あると思います。補足いただきありがとうございます。
>病的意義を有する病態としてはリンパ腫の中でも、濾胞性リンパ腫follicular lymphomaが多い印象です。←勝手なイメージです(笑)
勝手なイメージではなく、おっしゃるとおり濾胞性リンパ腫が多く、濾胞性リンパ腫の初期像の可能性があるとも言われています。