【新腹部救急】症例6
【症例】20歳代男性
【主訴】嘔吐、腹痛
【現病歴】昨晩の19時頃に夕食をとり、仕事を続けようとしたが心窩部不快感、嘔気あり帰宅。20時から21時にかけて6回嘔吐あり。その後上腹部痛持続するため、救急外来受診。 一昨晩に焼き肉を食べたがそれ以外に生もの摂取なし。
【既往歴】急性膵炎
【身体所見】BT 36.8℃、BP 149/103、HR 86、SpO2 99%(RA)、looks pale、腹部:平坦軟、臍やや上のレベルで正中〜左側腹部にかけて自発痛あり。圧痛・tapping painなし。BS亢進減弱なし。Lanz-、McBurney-、CVA叩打痛なし。
【データ】WBC 17100、CRP 0.01
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小腸内に液貯留がやや目立ち、粘膜の造影効果増強、また一部で、ケルクリングひだの明瞭化を認めています。
また上行結腸や横行結腸、下行結腸に液貯留を認めています。
今回の主訴なども合わせてこのような所見を見た際に考えるのが、小腸型の感染性腸炎です。
結腸と異なり、小腸型の感染性腸炎の場合は、壁肥厚は通常目立たず、
- 腸管の拡張・液貯留
- 粘膜の造影効果増強
- ケルクリングひだの明瞭化
といった所見を認めることがあります。
結腸型の感染性腸炎と比較すると派手な所見ではないですが、これらの所見を丁寧に拾っていくことが重要となります。
診断:小腸型の感染性腸炎の疑い
※便培養提から、ノロウイルスが検出されました。絶食、補液、抗菌薬で経過を見られました。
※WBC上昇あり、細菌感染合併している可能性を考慮し抗菌薬点滴を併用したと記載がありました。
その他所見:胃内に残渣あり。
【新腹部救急】症例6の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
小腸炎に関しては当初ほとんど分からず、見逃しや拾いすぎばかりでしたが、今は脂肪織が見えなくても壁肥厚や腸液などから判断できるようになりました。ESPRESSOのおかげです。
アウトプットありがとうございます。
>今は脂肪織が見えなくても
むしろ脂肪織濃度上昇は認めないことが多いですね。
>壁肥厚や腸液などから判断
ですね。非特異的所見ではありますが、これらの所見を丁寧に拾って、臨床症状も小腸炎に矛盾しないのであれば、画像からも疑いたいですね。
空腸壁の肥厚というよりは、「ケルクリングひだの明確化」と読んだ方がよいのですね。解説ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。粘膜が少し肥厚していますが、いわゆる3層構造を保った肥厚で粘膜下層の肥厚が目立つタイプではありません。
たしかに粘膜下層の肥厚は目立ちませんね
比較するとよくわかりますね
アウトプットありがとうございます。
そうなんです。少し肥厚することもありますが、基本肥厚しないんです。
結腸は容易に肥厚するのですが、小腸はそうではないということで、肥厚していたらむしろ別の疾患(感染性腸炎以外)を考えなければならないということです。
今日もありがとうございます。
日頃から小腸炎はよく目にするものの、深く考える事がなかったので勉強になりました。小腸の造影効果の増強は小腸全体が増強されるので判断に悩むことがあります。造影効果を見る上で何か指標はありますか?
アウトプットありがとうございます。
>造影効果を見る上で何か指標はありますか?
非特異的所見で、指標はありませんが、ヒダが目立つのが特徴かもしれません。
あとは今回のように液貯留が目立ち拡張していたら疑うべきですね。
年齢的にも、オペ既往がないことからも、腫瘍などによる結腸の閉塞は考えにくいとは思ったのですが、結腸の液貯留を腸閉塞による拡張(+バウヒン弁の機能不全による小腸拡張)と深読みしてしまいました
閉塞機転がないことから、除外する感じなんでしょうか、、、?
アウトプットありがとうございます。
まず今回の結腸は確かに液貯留を認めていますが、拡張は目立たず、結腸拡張とは取りません。
結腸に液貯留を認める場合は下痢症のことがあり、今回もそれだと考えられます。
腸閉塞を疑うような腸管拡張を認めた場合は、
閉塞機転を認める腸閉塞
閉塞機転を認めないいわゆるイレウス
の状態に大きく分かれますが、後者の場合は、腹膜炎や膵炎などを起こしていたり、SMAに閉塞や解離などを伴っていたりしますが、今回そのような所見はいずれも認めません。
今日も勉強になりました。
小腸の感染性腸炎ってなんで粘膜下層の浮腫が出ないんだろうと思っていたらノロとかロタとかって粘膜に進展しないんですね!
こういうよくあるけど、救急画像の本にはあまり記載されていない疾患も助かります。
アウトプットありがとうございます。
>ノロとかロタとかって粘膜に進展しないんですね!
そうなんです。私も最初に知ったときは、「そうなんだ!」と衝撃的でした。
何でも「腸炎=粘膜下層の肥厚」ではないということですね。
むしろ小腸の場合は別の原因を考えなければならないということです。