【新腹部救急】症例28
【症例】60歳代男性
【主訴】左季肋部痛
【現病歴】糖尿病にて当院かかりつけ。昨日朝より左季肋部痛あり、本日外来受診。
【既往歴】糖尿病、高血圧、アルコール性肝障害
【生活歴】飲酒:焼酎2合/週4-5日
【データ】WBC 9700、CRP 11.61、アミラーゼ 193
画像はこちら
膵体尾部の腫大および周囲の脂肪織濃度上昇を認めています。
急性膵炎を疑う所見です。
膵壊死を疑う低吸収域は認めていません。
急性膵炎では、膵外にどの程度炎症が広がっているかを評価する必要があります。
急性膵炎ガイドラインでは、炎症所見が、
- 前腎傍腔にとどまる
- 横行結腸間膜根部に及ぶ
- 腎下極以遠に及ぶ
という評価項目によりCT gradeが規定されています。
今回は膵周囲の炎症所見として、左前腎筋膜の肥厚を認めています。
これを尾側にスクロールすると、左前腎筋膜の肥厚は左の腎下極よりも尾側方向にも及んでおり、腎下極以遠への炎症波及を示唆する所見です。
では、横行結腸間膜根部への炎症波及はどうでしょうか?
横行結腸間膜は上腸間膜動脈(SMA)の分枝である中結腸動脈がメルクマールとなります。
今回は中結腸動脈の枝の周りに脂肪織濃度上昇を認めており、横行結腸間膜根部への炎症波及を示唆する所見と言えます。
つまり今回の症例をCT gradeに当てはめると次のようになります。
造影不領域は認めていませんので、grade2となります。
診断:急性膵炎 CT grade2
※保存的に加療されました。
関連:
その他所見:
- 脂肪肝あり。
- 輸精管の石灰化あり。
- 腹部皮下にインスリン注射瘢痕あり。
【新腹部救急】症例28の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
炎症の波及は、横行結腸間膜根部に波及があるか?ないか?微妙な症例を見かけます。読み過ぎない方が良いのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
微妙なときありますよね。微妙なときは有意として取らない方がいいかもしれません。
ギリギリ腎下極くらいの場合もですね。
ありがとうございました。グレードをあやふやにしか覚えていなかったですが、今回覚えなおしました。
アウトプットありがとうございます。
グレードはその都度表を見てもいいと思いますよ。
項目は覚えておいた方がいいかもしれませんが。
腎下極以遠に炎症が波及していたため grade 2 としましたが、横行結腸間膜はなさそうだと判断していました。確かにケバついていますね。。。
アウトプットありがとうございます。
>横行結腸間膜はなさそうだと判断していました。確かにケバついていますね。。。
それほど派手ではないのですが、一応今回は取りました。
おっしゃるように、腎下極以遠があれば、横行結腸間膜に炎症があろうがなかろうが、grade2となってしまうので、腎下極以遠にあることのほうがより広がっていると判定されるということですね。
CT gradeは今回うまく付けることが出来たと思います。
急性膵炎の原因となるようなもの(結石や腫瘍?)は今回明らかではなかったと思いましたが、画像からはわからないのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>急性膵炎の原因となるようなもの(結石や腫瘍?)は今回明らかではなかったと思いましたが、画像からはわからないのでしょうか?
おっしゃるように総胆管結石や腫瘍が原因になるときはその原因が画像でも確認できることがありますが、特発性やアルコール性は画像からではわからないですね。