【新腹部救急】症例19
【症例】60歳代 男性
【主訴】鮮血便
【現病歴】4,5年前から年に1回か2回鮮血便が出る。4ヶ月前他院で下部消化管内視鏡検査を受けたが、ポリープ指摘のみだった。本日15時頃から鮮血便が4-5回出たため救急外来受診。
【既往歴】虫垂炎(手術)、緑内障
【身体所見】眼瞼結膜貧血なし、眼球結膜黄染なし、腹部:右下腹部に手術痕あり、平坦軟、腸蠕動音正常、自発痛・圧痛なし。直腸診:明らかな腫瘤性病変触れず、血液少量付着。
【データ】WBC 8400、CRP 0.04、Hb 10.8
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下行結腸や直腸にニボー像を有するやや高吸収な液貯留を認めており、消化管内の血腫を疑う所見です。
では、出血部位はどこでしょうか?
動脈相で下行結腸に造影剤の血管外漏出像(extravasation)を認めています。
また平衡相では同部位の漏出量が増えており、下行結腸からの出血が疑われる所見です。
下行結腸には憩室を複数認めていますが、造影剤が漏出している憩室があります。
この憩室からの出血が疑われます。
※憩室出血の場合でも今回のように出血を起こしている憩室そのものまではわからないこともしばしばあります。
診断:下行結腸憩室出血
※緊急内視鏡が施行されました。
下部消化管内視鏡検査では、直腸に血腫貯留を認めています。
単純CTでの高吸収液貯留がやはり血腫であったことが確認できますね。
また出血を認める憩室を認めています。
同部がCTで造影剤の血管外漏出像(extravasation)を認めた憩室であると分かります。
内視鏡レポートより抜粋
- 下行結腸に複数の憩室あり。そのうち一つから持続出血確認。憩室径小さく直達法は困難と判断。
- 4点クリップを行い、留置スネア施行し、止血を確認。
その他所見:
- 肝嚢胞あり。
- 肝S5/8に血管腫疑い。
- 腎嚢胞あり。
【新腹部救急】症例19の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
見逃してはいけない活動性出血に気づくことができました。それにしても憩室からの出血はすごい量だなと改めて感じました。
アウトプットありがとうございます。
>見逃してはいけない活動性出血に気づくことができました。
よかったです!
>憩室からの出血はすごい量だなと改めて感じました。
そうですね。今回はextravasationも認めており動脈性に出血していることがわかりますね。
動脈相の存在に気づかず、『単純だけでは厳しいけど出血はしているな』と思っていました。そして単純だけで何かがあるはずと思い、探していたのですが・・・回腸末端の膀胱の上に乗っかっている糞便様陰影は問題なしで良いですよね?ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>回腸末端の膀胱の上に乗っかっている糞便様陰影は問題なしで良いですよね?ありがとうございました。
そうですね。特に問題ない所見ですね。
憩室壁に肥厚があり、周囲に脂肪濃度上昇を認めるので、憩室炎が合併としていると考えてよいのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>周囲に脂肪濃度上昇を認めるので、憩室炎が合併としていると考えてよいのでしょうか?
炎症があるというよりは出血しているためそれに反応した脂肪織濃度上昇だと思われます。
もちろん憩室炎があってそれが契機となっている可能性もありますが。
しっかり出血部位を確認することができ,自信になりました.
派手な所見なので救急の現場で見るとビビりますね.
アウトプットありがとうございます。
>しっかり出血部位を確認することができ,自信になりました.
よかったです。
出血部位が分かれば、コンサルトするときに非常にスムーズですね。
>派手な所見なので救急の現場で見るとビビりますね
そうですね。バイタルが不安定だとさらにびびりますね。
症例とは関係ないと思うのですが総肝動脈の分岐の動脈が解離しているよう(スライド125から135あたり)にみえるのですがいかがでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
おっしゃっているのは総肝動脈の分枝の動脈ではなく、上腸間膜動静脈のことをおっしゃっているのだと思います。
こちらは造影剤がまだ静脈に行き渡っていない状態で、次の相では行き渡っているので解離ではありません。