【新腹部救急】症例4
【症例】40歳代女性
【主訴】腹痛
【現病歴】2日前から右下腹部痛あり。鎮痛薬を飲んでいて切れると痛む。最初は腹部全体の疼痛だったが、現在は右下腹部に限局している。嘔気なし。発熱なし。下痢なし。今回初めての疼痛。
【既往歴】なし
【身体所見】BT 36.9℃、BP 150/108mmHg、P96、右下腹部に限局した圧痛あり。Blumbergあり。筋性防御軽度あり。
【データ】WBC 12300、CRP 18.7
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上行結腸腹側優位に脂肪織濃度上昇および筋膜の肥厚を認めています。
また3層構造を保った結腸の粘膜下層の肥厚が目立ちます。
明らかに炎症を起こしている憩室炎!!というのはちょっと今回ははっきりしませんが、炎症が最も目立つ部位に憩室炎を起こしている憩室が存在すると推測されます。
上下をスクロールすると憩室炎を起こしていると思われる最も炎症所見が強いレベルだけでなく上下の結腸に粘膜下層の肥厚を認めており、炎症の波及を示唆する所見です。
また回腸末端にも粘膜下層の肥厚を認めており、同部にも炎症の波及が疑われます。
つまり今回起こっていることをイラストにすると以下の様になります。
炎症を起こしている憩室から横方向、縦方向に炎症が波及しています。
横方向は、
- 憩室の外側、つまり漿膜側に炎症が波及し、周囲の脂肪織濃度上昇や筋膜の肥厚を認めています。
- 憩室の内側、つまり結腸側に炎症が波及し、結腸の粘膜下層の肥厚を認めています。
また縦方向は、
- 上下の結腸、さらには回腸末端に炎症が波及して粘膜下層の肥厚を認めています。
診断:上行結腸憩室炎
※穿通や穿孔、膿瘍形成を疑う所見を認めていません。保存的に加療されました。
※結腸の粘膜下層が今回のように強い場合、結腸炎と間違えないようにしましょう。
その他所見:
- ダグラス窩に腹水貯留あり。生理的範囲としてはやや多く反応性に増大していることが推測される。
- 副脾あり。
【新腹部救急】症例4の動画解説
憩室炎の画像診断のポイント
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
浮腫状壁肥厚の3層構造がよくわかる症例で、とても参考になりました。
アウトプットありがとうございます。
炎症が腸管方向(粘膜側)に波及すると3層構造がよくわかりますね。
3層構造を保った壁肥厚は、非特定的所見ですが、炎症や虚血などを考えたいですね。
今日もありがとうございます。
炎症範囲が広い場合、結腸炎や虫垂炎の炎症波及などと間違えないよう気をつけたいです。
アウトプットありがとうございます。
>結腸炎や虫垂炎の炎症波及などと間違えないよう気をつけたいです。
そうですね。主座がどこなのかを常に意識ですね。
たまにどちらなのかわからないこともありますが(^_^;)
粘膜下層の肥厚が目立つので結腸病変にも見えますね。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。結腸炎との鑑別が問題となることもありますが、今回は盲腸あたりの周囲の脂肪織濃度上昇がひときわ目立つため、憩室炎が疑われますね。
原因の憩室がはっきりと追えなかったので、
穿孔?しているのかなと思ってしまいました。
穿孔している場合は膿瘍形成の所見が
あるのですね。
勉強になりました。
アウトプットありがとうございます。
原因の憩室がはっきりと追えないことはよくあります。
また、穿孔や穿通していても、膿瘍形成を来すとは限りません。
むしろ来さない方が多いですね。
憩室炎と虫垂炎からの波及を間違えました.
虫垂の同定をきっちりしなければダメですね.
アウトプットありがとうございます。
そうですね。
右下腹部に炎症所見がある場合は、虫垂は必ず同定したいですね。
また、心窩部痛や右下腹部痛の場合は虫垂を確認することをルーチンとしたいところです。
肝右葉がなんとなく低吸収にみえたのですがこれは染まりムラでいいのでしょうか?
虫垂の同定をサボってしまいました、、、
アウトプットありがとうございます。
そうですね。特に肝の染まりは有意ではありません。
>虫垂の同定をサボってしまいました、、、
虫垂はできればで大丈夫ですよ。
いつもありがとうございます。
これは要望なのですが、(この症例にかぎらず)単純CTが撮像されている症例では、可能なら単純CTも載せていただけると嬉しいです。実際には造影しない症例も多いと思われ、その際に単純CTでどのように見えるのかも勉強できたらと思いました。
ご要望いただきありがとうございます。
この症例に限らず単純CTが撮影されているものはすべて単純CTも含めて提示しております。
いきなり造影CTのみが撮影されることが多く申し訳ございません。
症例5でも既出の質問でしたね。手間をかけさせてしまい申し訳ありません。
自分では造影CTをオーダーする際はほぼ必ず単純CTも一緒に撮像しているのですが、単純は省略してもよいものなのでしょうか?
いえ、個人的には必ず単純を撮影して、必要ならば造影という流れが良いと思います。
当院もようやく最近はその流れになっていますが、未だに造影一択の先生もおられます・・・・。
単純が必要な理由としましては、造影をすると結石系(尿管結石、総胆管結石が主)が見えにくくなってしまうことや、腸管の造影効果の単純との比較などが必要な場合があること、単純のみで診断できる場合はあえて造影する必要はない、といったことが挙げられます。
造影のハードルは施設にもよりますよね。
以前当直していたところではCTは単純のみが原則のところもありましたし、一人当直レベルですとそういった施設の方が多そうですね。。