【新腹部救急】症例5
【症例】20歳代女性
【主訴】腹痛
【現病歴】2日前から発熱、心窩部痛がある。心窩部痛があったが腹部真ん中の痛みになっている。歩いて痛むことはない。
【既往歴】なし。
【身体所見】BT 36.4℃、上腹部を最強とし、上腹部〜右下腹部にかけてやや広範囲に圧痛あり、反跳痛ははっきりとせず。嘔気はなし。
【データ】WBC 5600、CRP 7.37
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盲腸・上行結腸および横行結腸に3層構造を保った粘膜下層を中心とした壁肥厚を認めています。
冠状断像でみるとその範囲がよく分かります。上行結腸にはほぼ全域に及び壁肥厚を認めています。
また上行結腸だけでなく、横行結腸にも広範な壁肥厚を認めていることが分かります。
盲腸・上行結腸・横行結腸をまとめて右半結腸と言います。
今回はこの右半結腸に壁肥厚を認めています。
前回見た憩室炎による結腸の壁肥厚の範囲と比べて明らかに広範に及んでいることが分かります。
このような所見をみたら、憩室炎などの結腸への炎症波及ではなく、右半結腸そのものに炎症が存在している右半結腸炎を考えなければなりません。
そして、右半結腸炎を見たらまず鑑別に挙げるべきは、特に健常人の場合は、
- サルモネラ
- カンピロバクター
- 腸炎ビブリオ
- エルシニア
- O-157
などによる感染性腸炎です。
診断:右半結腸炎 感染性腸炎が疑われる。
※便培養提出の上、入院の上感染性腸炎として絶食、抗生剤、整腸剤などの保存的加療がされました。
※食事歴については、5日前に豚肉の摂取があり火は通っていたはずだとのことですが、もしかしたらこれが原因かもしれません。
※後日便培養から、Campylobacter lariが検出されました。カンピロバクター腸炎のほとんどは、Campylobacter jejuniですが、
Enteric Campylobacter (EC)としては、ヒトの下痢症起因菌として重要であるC. jejuni とC. coli やC. lari 、2000年以降追加された3菌種等が含まれる。1)
とあるように、頻度は稀ではありますが感染性腸炎の原因となるようです。
保存的加療で症状改善し退院となっています。
関連:
その他所見:
- 少量腹水あり。
- 左腎嚢胞あり。
【新腹部救急】症例5の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
腸炎を認めた場合、その分布が大切ということですね。
小腸メインなのか?、大腸の右側なのか?左側なのか?…まずは腸炎の範囲を確認して鑑別を考えたと思います。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。分布が重要ですね。
小腸の場合はそれに加えて壁肥厚の有無も重要になってきますね。
カンピロ経験者です。菌の検査結果でC. coliとか意味が分からずその時調べましたが(良い結果なのか悪い結果なのかわかりませんでした。)、今回あらためて見てみたら、今はやりのPCR検査でわかるのですね!PCRにもいろいろあるのでしょうが知識がつながると嬉しいです。短いのにとりとめない文章ですいません。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
経験者ですか(^_^;)
感染性腸炎の画像はよくあるのですが、便培養まで取られていなかったり、取られていても検出されないことが多く、カンピロだけどカンピロと診断されないことが多いので、そういう意味では貴重ですね。
今回も、Campylobacter jejuniの頻度が多いので、それを探したのですが、見つからずです・・・。
分布から考察することができました。
菌についてはからっきしですが、少しずつ菌名にも慣れてきました。
アウトプットありがとうございます。
>分布から考察することができました。
良かったです。
単なる結腸炎とするのではなく、分布が非常に重要なので
サルモネラ
カンピロバクター
あたりをまずは鑑別に挙げたいですね。
腸炎の所見を単なる感染性腸炎とせず,分布で鑑別診断も考えるのは重要ですね.
画像や培養などの検査それぞれを合わせて総合的に判断する必要がありますね.
アウトプットありがとうございます。
>腸炎の所見を単なる感染性腸炎とせず,分布で鑑別診断も考えるのは重要ですね.
そうですね。
右か左かで鑑別が変わってきますからね。
症状も異なりますが、虚血性腸炎を感染性腸炎としたり、感染性腸炎を虚血性腸炎としたりはしたくないですね(^_^;)
>画像や培養などの検査それぞれを合わせて総合的に判断する必要がありますね.
培養は結果が出るのに時間がかかるので、治療を先行させますが結果(原因)が分かると患者さんもすっきりしますね。
なかなか培養から分からないことの方が多いですが。
今日もありがとうございます。
起因菌までちゃんと考えて今後は画像を見ようと思います。
主なものは鑑別に挙げたいですね。
今日もありがとうございます。
回腸や虫垂への波及は少しあるでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
回腸末端や虫垂の根部側には造影効果を認めており、波及が少しありそうですね。
興味深い症例、いつも有難うございます。
この症例の単純CTはあるでしょうか?造影の有無で腸管浮腫の見え方がどの程度違いがあるのか、確認できればと思いました。
アウトプットありがとうございます。
単純があれば必ず提示していますので、この症例につきましては申し訳ありませんが、単純はありません。(単純例が少ない点は申し訳ございません。)