頭部画像診断 TIPS症例62

【頭部】TIPS症例62

【症例】70歳代 女性
【主訴】頭痛、嘔吐、食欲不振、倦怠感
【現病歴】2年前に肺腺癌と診断され化学療法を受けている。4ヶ月前より本人希望で休薬している。1ヶ月半前のMRIで異常を指摘されたが、本人希望で経過を見ていた。2日前より上記主訴を認めたため来院。

1ヶ月半前

今回

この1ヶ月半でどんな変化があり、どう診断しますか?

 

まず1ヶ月半前のMRIから見てみましょう。

大脳半球の皮髄境界を中心に、脳転移を疑う造影される微小結節が散見されます。

脳実質内だけでなく、右中心溝に沿って異常な造影効果を認めています。

矢状断像でないと指摘は難しいかもしれませんが、小脳の脳溝に沿って存在する造影される微小結節が散見されます。

これらは、前回の症例で見たように、PS patternの髄膜転移であり、癌性髄膜炎を疑う所見です。

次に今回の画像を見てみましょう。

まず、癌性髄膜炎を疑う所見は前回よりもやや増強しています。

わかりやすくするために1ヶ月半前のMRIと並べて見てみましょう。

すると、1ヶ月半前と比較して脳室およびシルビウス裂や脳溝の拡張を認めていることがわかります。

側脳室下角レベルにおいても同様です。

 

何が起こっているのでしょうか?

 

1ヶ月半前と比較して脳室やくも膜下腔が開大しています。

今は癌性髄膜炎がありますので、その影響で髄液の吸収障害が生じたことが推測されます。

つまり、癌性髄膜炎→髄液の吸収障害→交通性水頭症 を来したということです。

 

診断:癌性髄膜炎による交通性水頭症

 

※その後、化学療法が再開され、全脳照射による加療がなされました。

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【頭部】TIPS症例62の動画解説

お疲れ様でした。

今日は以上です。

今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。

過去のコメント
  1. 変化は気づきませんでした。普段並べてみるのに慣れていて、頭の中で比較すると難しいです。PCで見るときは別ウィンドウで開くこともできるのですが、良い方法はないですよね?(癌性髄膜炎→髄液の吸収障害→交通性水頭症)この流れは気を付けたいです。この症例の場合、普通全脳照射でしょうが、炎症が増悪して一時的に悪くなりそうですね。RTしている立場から少し怖いです。ステロイドとかどのように投与するかよくわかってないですが、慎重にならないといけない症例ですね。ありがとうございます。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >普段並べてみるのに慣れていて、頭の中で比較すると難しいです。PCで見るときは別ウィンドウで開くこともできるのですが、良い方法はないですよね?

      確かにスマホからですと並べて見るのは厳しいですね・・・。
      脳室が開いていることにまず気づきたいですね。
      あとは脳溝などに沿って造影効果を認めていることから診断したいところです。

      >この症例の場合、普通全脳照射でしょうが、炎症が増悪して一時的に悪くなりそうですね。RTしている立場から少し怖いです。

      そうですね。化学療法の再開と、全脳照射がなされていますが、慎重にですね。

  2. 脳室開大の理由が髄液吸収不良と結びつきませんでした。
    脳室辺縁の不整な感じが水頭症を連想させたものの、物理的な圧排がないことや脳梁角が鈍角であること、脳溝も拡大していたことなどからシンプルに萎縮が進んだのかと思いました。
    髄膜疾患の際は髄液吸収にも着目しないといけませんね。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >脳室開大の理由が髄液吸収不良と結びつきませんでした。

      非交通性の水頭症ならば行き止まりがあるのでわかりやすいですが、交通性は意外と盲点かもしれませんね。

      >シンプルに萎縮が進んだのかと思いました。

      1ヶ月ですからねえ。。

      >髄膜疾患の際は髄液吸収にも着目しないといけませんね。

      そうですね。たまたまbefore→afterの画像があったこの症例で是非頭にいれてください。

  3. 大きな腫瘤が出現したわけではないので難しいですね。脳室や脳溝の大きさなど細かいところに気がつくようにしないとだめですね。

    1. アウトプットありがとうございます。

      そうですね。今回の画像だけですと、脳室の拡大に気づきにくいかもしれません。
      過去画像との比較が重要だと言うことを改めて教えてくれる症例ですね。