頭部画像診断 TIPS症例36

【頭部】TIPS症例36

【症例】20歳代女性

スクリーニング

両側内包後脚にT2WI/FLAIRで高信号を認めていますが、これは正常?異常?

画像はこちら

確かに拡散強調像(DWI)では両側の内包後脚に淡い高信号を認めていることがわかります。

ただし、同部位のADCの信号低下は認めていません

ということは、T2 shine throughの影響が疑われます。

T2WI,FLAIRを見てみましょう。

T2WI/FLAIRでも両側の内包後脚に淡い高信号を認めていることがわかります。

やはり、拡散強調像(DWI)での高信号は、このT2WIの高信号を拾っているT2 shine throughの影響であることがわかります。

では、このT2WI/FLAIRでの高信号の正体は何なのでしょうか?異常なのでしょうか?

実は、正常でも錐体路に沿ってT2WI/FLAIRで軽度高信号を示すことが知られています。

 

診断:正常の錐体路

 

※ですので、慌てて異常所見とせずに、ご自身の施設のMRIの画像では正常例でどのように同部が見えるかを普段からチェックしておきましょう。

※ただし、錐体路に沿った異常高信号を示す疾患もたくさん知られていますので、正常か異常かの判断は他の正常例との比較や他の画像所見、症状の有無などから総合的に判断します。

 

関連:錐体路とは?MRI画像でどうみえる?

【頭部】TIPS症例36の動画解説

関連動画

 

お疲れ様でした。

今日は以上です。

今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。

過去のコメント
  1. 最近、DWIを使用したテンソル画像による脳神経イメージングが話題になっています。そういった意味では、正常の錐体路が高信号として見られても不思議ではありません。

    1. アウトプットありがとうございます。

      そうですね。錐体路部分を可視化できるということですもんね。

  2. こんにちは。本日もよろしくお願いいたします。
    ワーラー変性やALSなどの可能性も考えて病巣の有無を確認しましたがとくになく、「両側性」ということと症状がなく「スクリーニング」とのことだったので「おそらく正常」と判断することができました。
    ごろ〜先生のご解説にあわせて、
    ・高信号部位は内包後脚を4等分した前から3番目の位置(淡蒼球後端にほぼ一致)
    ・皮質脊髄路内の線維は内包降脚内の他の線維に比べて径が太く(大径線維が多く)、線維の線維との間に隙間が多いのでT2WIで高信号となりやすい
    ・橋では皮質脊髄路が分散されることによって高信号を認めにくくなると考えられている
    ・小児では大径線維が少なく認められにくい
    ということも教科書で学習しました。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >・高信号部位は内包後脚を4等分した前から3番目の位置(淡蒼球後端にほぼ一致)
      ・皮質脊髄路内の線維は内包降脚内の他の線維に比べて径が太く(大径線維が多く)、線維の線維との間に隙間が多いのでT2WIで高信号となりやすい
      ・橋では皮質脊髄路が分散されることによって高信号を認めにくくなると考えられている
      ・小児では大径線維が少なく認められにくい

      高信号部位の解剖の詳細
      なぜ高信号なのか

      といった点、詳細に補足ありがとうございます!

  3. 初歩的な質問をさせてください。
    T2 shine throughを呈するT2高信号域はそうではないものと比較し、どのような違い、臨床的意義があるのでしょうか。
    ただのアーチファクトという認識で良いのでしょうか。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >T2 shine throughを呈するT2高信号域はそうではないものと比較し、どのような違い、臨床的意義があるのでしょうか。

      T2 shine throughというのは、DWIで高信号だけどそれは拡散制限を反映してではなく、T2WIの影響を受けているだけということです。

      DWIは、拡散制限を反映する+T2WIを反映します。つまり、2つの顔があるということです。
      そして、DWIで高信号でADCで信号低下がある場合、拡散制限を伴っていると言えます。

      このあたりの内容は、
      https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/training/hmri
      passは、HNdVGbiN

      こちらのDWI,T2WIの動画を復習してください。

      頭部MRI画像診断において非常に重要な内容です。

  4. 錐体路の高信号を示す病変をしっかりと覚えてなかったので良い復習になりました。
    両側性であり、あまりヤバそうな印象は受けませんでしたが改めて聞かれると「なんだろう?」となりますね。

    1. アウトプットありがとうございます。

      脳梗塞を疑う患者の場合にこのような両側の錐体路の高信号を安易に脳梗塞としないように注意が必要ですね。

      >錐体路の高信号を示す病変をしっかりと覚えてなかったので良い復習になりました。

      これはたくさんありすぎてとても覚えられないですね(^_^;)

  5. T1では低信号になるようですね。
    普段、気づかなかった所見なのですが、びまん性軸索損傷の症例でT2で錐体路が高信号になる症例を何例か経験して、検討している時に気がつくようになりました(左右差があったので)。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >びまん性軸索損傷の症例でT2で錐体路が高信号になる症例を何例か経験して

      そうなんですね。それはうらやましいです。
      びまん性軸索損傷の症例はこれといって典型例が当院ではないので・・・。

      >(左右差があったので)。

      左右差が大事ですね。ALSなど両側のこともしばしばありますが。

  6. 錐体路は頭部画像で見えないから通っているイメージが付きにくくて勉強しにくいなぁと学生のときには思っていましたが、今回のように見えるのであれば、その連続性が勉強しやすいですね。学生の時に知りたかったです笑。

    1. アウトプットありがとうございます。

      イメージしやすいものとしてテンソル画像などもありますが、DWIでも錐体路が見えることがあるという点は是非覚えておきましょう。