
先に結論:出血が今まさに速いときは造影CT、出血が止まったり再開したりするときは標識赤血球シンチ。子どもの無痛性の血便には、メッケル憩室シンチ
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 標識赤血球シンチ | 99mTcで印を付けた赤血球が血管から腸にもれ出る様子を、時間をかけて撮る。間欠的な出血に向く |
| 造影CT(CTA) | 短時間で、出血部位や原因病変を形でとらえる。急ぐ出血・不安定な患者さんで第一に選ばれることが多い |
| ACRの基準(下部消化管出血、2021年版) | 持続する出血では大腸内視鏡・CTA・赤血球シンチが選択肢。不安定ならCTAとカテーテル(塞栓) |
| メッケル憩室シンチ | 99mTc-過テクネチウム酸が異所性胃粘膜に集まる性質を使う。感度は中等度、特異度は高いが、偽陰性もある |
| 受診の目安 | 大量の血便・黒色便に、ふらつき・動悸・冷や汗を伴うときは救急受診。子どもの血便は小児科へ |
消化管出血シンチ(標識赤血球シンチ)とは
消化管出血シンチは、患者さん自身の赤血球を99mTc(テクネチウム)で標識して静脈に戻し、腹部をガンマカメラで繰り返し撮る検査です。標識した赤血球は血管の中にとどまるため、健康な状態では腸には出てきません。出血があると、血液と一緒に標識赤血球が腸の中へもれ出し、時間とともに腸管内で形が変わる放射能の集積として見えます。
この検査の強みは、一度の撮像時間が長い点です。標識した赤血球は血管内にしばらく残るため、出血が止まったり再開したりしても、その間に撮像を続けて「ちょうど出血したとき」を拾えます。ACRの下部消化管出血の基準(2021年版)も、赤血球シンチは間欠的な出血を同定でき、SPECTを加えると腸の小さな範囲まで位置を絞れると述べています(Expert Panel on Interventional Radiology 2021)。
どのくらいゆっくりした出血まで見えるか
赤血球シンチで見える出血の速さには、文献ごとの値があります。62人の患者さんの検討では、シンチグラフィで検出できた最小の平均出血速度は0.1 mL/分でした(Smith 1987)。ただし、これは輸血量と出血期間から平均値を計算した推定で、陽性の出方(早く強く写るか、遅く弱く写るか)は出血が速いほど強いという傾向でした。つまり、非常にゆっくりした出血でも検出できることがあるが、陰性なら出血がないとは言い切れません。
造影CT(CTA)との使い分け
造影CT(CT血管造影、CTA)は、造影剤を急速に注入して腹部を撮り、造影剤が血管の外(腸の中)へもれ出る様子をとらえます。ACRの基準(2021年版)では、CTAは患者さんの負担が少なく、出血部位や出血しうる病変を大多数の例で同定できる検査とされ、血行動態が不安定な患者さんではCTAとカテーテル検査(塞栓術)を行うことができると整理されています(Expert Panel on Interventional Radiology 2021)。下部消化管出血のCT所見は下部消化管出血の原因と造影CTで解説しています。
| 項目 | 標識赤血球シンチ | 造影CT(CTA) |
|---|---|---|
| 得意な出血 | 間欠的・ゆっくりした出血 | 活動性の出血、速い出血 |
| 撮像時間 | 長い(繰り返し撮像できる) | 短い(数回の撮像) |
| 位置の絞り込み | SPECTを加えると精度が上がる | 形の画像で、原因病変の位置まで示せる |
| 造影剤・被ばく | 放射性薬剤。造影剤は不要 | ヨード造影剤。腎機能・アレルギーに注意 |
| 撮像の間に出血がないとき | 撮像中に出血が再開すれば写る | 撮影の瞬間に出血がなければ、造影剤のもれは写らない |
診断の成績を比べた文献
急性の消化管出血の検出と位置の同定について、CTAと標識赤血球シンチを比べたメタ解析(44研究)があります。出血の検出の感度は、CTAが0.83、赤血球シンチが0.84で、ほぼ同じでした。特異度はCTAが0.90、シンチが0.84でしたが、どちらの差も統計学的に有意ではありませんでした。一方、出血の位置を正しく示せた割合は、CTAが1.00、シンチが0.90で、CTAが有意に優れていました(P<0.001)。著者らは、これをもとに、第一選択の画像検査としてCTAを用いることを支持しています(Yaxley 2023)。
下部消化管出血の疑いでCTA(45件)とRBCシンチ(90件)を後ろ向きに比べた別の検討では、活動性の出血が見つかった割合は、どちらも38%で同じでした。しかし、出血部位を正確に同定できた割合は、CTAが53%、シンチが30%で、CTAが有意に高いという結果でした。入院期間、輸血量、急性腎障害、院内死亡には差がありませんでした(Feuerstein 2016)。
どちらを選ぶか(ACR 2021年版の整理)
- 出血が持続・多量で、血圧が不安定:CTAとカテーテル検査(塞栓術)が検討される。大腸内視鏡も、短時間で腸の準備ができるなら選択肢になる。
- 出血が間欠的で、CTAで出血点が見えない:赤血球シンチを検討する。SPECTを加えると位置の精度が上がる。
- 原因がわからず出血を繰り返す(不明の再出血):カプセル内視鏡やCTエンテログラフィで、出血の原因になる粘膜病変を探す。
以上は、Expert Panel on Interventional Radiology 2021 の整理に沿ったものです。ACRの基準は米国の指針であり、日本の診療体制とは異なる部分があります。実際の選択は、症状・血圧・内視鏡の可否・施設の体制で決まります。消化管疾患の画像診断全体は消化管疾患の画像診断まとめにあります。
画像の読み方と注意点
赤血球シンチでは、画像を一定の間隔で連続して撮り、動画のように見ます。出血による集積は、時間とともに腸管の走行に沿って移動し、強さも増していくのが特徴です。一方で、動かない集積は、血管腫や静脈瘤などの血管性の病変のこともあります。出血点を決めるには、最初に現れた場所と、その後の動きを合わせて読みます。標識がうまくいかないと、胃・膀胱・唾液腺・甲状腺などに本来の出血と無関係な集積が出て、読影の妨げになります。
症例 80歳代男性 上行結腸のDieulafoy潰瘍

引用:Kwak CB, Powell CR, Harrison NM. Atomic Accuracy: Unmasking a Colonic Dieulafoy Lesion With a Nuclear Medicine Scan. Cureus. 2026(Figure 1). PMC(CC BY 4.0)
抗凝固薬を内服している80歳代の男性で、黒色便と血便を繰り返した症例の標識赤血球シンチです。症例ページでは、再検したCTAでは異常がなく、その後に撮った標識赤血球シンチで、右の中腹部に放射能の集積(矢印)が示されたと説明されています。この集積をもとに、あらためて大腸内視鏡を詳しく行い、上行結腸でゆっくり出血するDieulafoy潰瘍が見つかり、止血クリップなどで治療されました。
この症例のように、CTAで出血点が見えなくても、出血が間欠的な場合に、シンチが位置の手がかりになることがあります。
メッケル憩室シンチ
メッケル憩室は、胎生期の卵黄腸管が残った回腸の憩室で、胃粘膜(異所性胃粘膜)を含むと、胃酸で周囲の腸が傷つき、痛みを伴わない血便を起こします。特に子どもで、突然の鮮やかな赤い血や暗赤色の便が出て、血液の貧血につながることがあります。画像の所見と症状はメッケル憩室・メッケル憩室炎とは?で解説しています。
メッケル憩室シンチでは、99mTc-過テクネチウム酸(99mTcO4−)を静脈に注射します。この薬は胃粘膜の粘液を出す細胞に取り込まれるため、異所性胃粘膜をもつ憩室が、胃と同じタイミングで右下腹部などに集積する像として見えます。出血の有無にかかわらず、胃粘膜の有無を見る検査であり、赤血球シンチ(出血そのものを見る)とは原理が異なります。
| 項目 | 標識赤血球シンチ | メッケル憩室シンチ |
|---|---|---|
| 使う薬 | 99mTc標識した自分の赤血球 | 99mTc-過テクネチウム酸 |
| 見ているもの | 腸管への血液のもれ(出血) | 異所性胃粘膜(憩室) |
| 主な対象 | 成人の消化管出血全般 | 子どもの無痛性の血便(成人にも使う) |
| 出血していないとき | 陰性になりうる | 憩室があれば陽性になりうる |
診断の成績と偽陰性
出血を起こした小児のメッケル憩室に対する99mTcシンチのメタ解析(16研究、子ども1,115人)では、まとめた感度は0.80(95%信頼区間0.73〜0.86)、特異度は0.95(0.86〜0.98)、AUCは0.88でした。著者らは、特異度は高いが感度は中等度で、限界があると述べています(Yan 2023)。
単施設の報告では、成績にばらつきがあります。10年間に144件の検査を行った小児病院では、陽性の22件はすべて手術でメッケル憩室が確認され、陰性122件のうち53件で別の原因が見つかり、残る69件では原因不明のまま症状が消えました。著者らは、丁寧な手技で、感度・特異度ともに高くなりうると述べ、また、血便の既往のない子どもでは検査が役立つことは少ない、としています(Irvine 2017)。別の12年間・94人の報告では、感度76.9%(20/26)、特異度100%で、陰性の74人中6人が偽陰性でした。曖昧な例にSPECT/CTや再検を行うと診断が上積みされています(Li 2025)。
偽陰性・偽陽性になる場面
- 偽陰性:異所性胃粘膜が少ない、あるいは憩室に胃粘膜がない、準備が不十分、出血で薬が洗い流される、などが原因として考えられます。疑いが強いのに最初の検査が陰性または曖昧だった場合、再検が有用でした。曖昧な12件のうち7件(58%)、陰性で疑いが強い21件のうち3件(14%)が、2回目で陽性になっています(Vali 2015)。この報告では、最初の検査が適切な準備なしで行われた場合に、再検が特に有用と述べられています。検査前の処置は、検査施設の指示に従ってください。
- 偽陽性:胃粘膜をもつ別の構造(腸管の重複症など)、尿路への排泄、炎症や腸重積などで、憩室以外の場所に集積することがあるとされます。CTやMRI、エコーの形の情報を合わせて判断します。
受診の目安
消化管出血は、量が多いと命にかかわります。次のようなときは、救急を受診してください。
- 大量の血便や、黒くてタールのような便が出て、ふらつき・動悸・冷や汗・顔色が悪いなどを伴うとき
- 意識が遠のく、立ち上がれないなどのとき
- 子どもに、突然の血便が出て、顔色が悪い、ぐったりしている、腹痛で泣き続けるとき
少量でも血便や黒い便が続くとき、貧血を指摘されたときは、消化器内科(子どもは小児科)で、内視鏡や画像検査について相談してください。血液をサラサラにする薬を飲んでいる方は、自己判断で中止せず、主治医に相談してください。
よくある疑問(Q&A)
Q. 造影CTで出血点がなければ、出血シンチをするべきですか?
A. 出血が間欠的な可能性があるときは、赤血球シンチが役立つことがあります。ACR 2021年版でも、赤血球シンチは間欠的な出血を同定でき、SPECTで位置を絞れると整理されています(Expert Panel on Interventional Radiology 2021)。ただし、実際の選択は主治医の判断です。
Q. 出血シンチが陰性なら、出血はありませんか?
A. 検査中に出血が止まっていたり、速度が検出の限界より遅かったりすると陰性になります。62人の検討では、検出できた最小の平均出血速度は0.1 mL/分でした(Smith 1987)。症状が続くときは、内視鏡など別の検査も検討します。
Q. メッケル憩室シンチは、大人にも行いますか?
A. 子どもの無痛性の血便が主な対象ですが、原因不明の消化管出血で疑う場合に大人でも行われることがあります。結果は、CTや内視鏡など他の検査と合わせて判断します。
Q. CTとシンチ、どちらが被ばくが少ないですか?
A. 検査の種類・施設の装置や撮り方で変わります。気になるときは、検査を行う施設に確認してください。
あわせて読みたい:核医学検査(シンチ・PET)の種類と読み方まとめ
参考文献
- Expert Panel on Interventional Radiology, Karuppasamy K, Kapoor BS, et al. ACR Appropriateness Criteria® Radiologic Management of Lower Gastrointestinal Tract Bleeding: 2021 Update. J Am Coll Radiol. 2021;18(5S):S139-S152. PubMed
- Yaxley KL, Mulhem A, Godfrey S, et al. The Accuracy of Computed Tomography Angiography Compared With Technetium-99m Labelled Red Blood Cell Scintigraphy for the Diagnosis and Localization of Acute Gastrointestinal Bleeding: A Systematic Review and Meta-Analysis. Curr Probl Diagn Radiol. 2023;52(6):546-559. PubMed
- Feuerstein JD, Ketwaroo G, Tewani SK, et al. Localizing Acute Lower Gastrointestinal Hemorrhage: CT Angiography Versus Tagged RBC Scintigraphy. AJR Am J Roentgenol. 2016;207(3):578-84. PubMed
- Smith R, Copely DJ, Bolen FH. 99mTc RBC scintigraphy: correlation of gastrointestinal bleeding rates with scintigraphic findings. AJR Am J Roentgenol. 1987;148(5):869-74. PubMed
- Yan P, Jiang S. Tc-99m scan for pediatric bleeding Meckel diverticulum:a systematic review and meta-analysis. J Pediatr (Rio J). 2023;99(5):425-431. PubMed
- Vali R, Daneman A, McQuattie S, et al. The value of repeat scintigraphy in patients with a high clinical suspicion for Meckel diverticulum after a negative or equivocal first Meckel scan. Pediatr Radiol. 2015;45(10):1506-14. PubMed
- Li B, Gao J, Ding X, et al. Diagnostic accuracy of [(99m) Tc]pertechnetate scintigraphy in pediatric patients with suspected Meckel’s diverticulum: a 12-year, monocentric, retrospective experience. Front Med (Lausanne). 2025;12:1585313. PubMed
- Irvine I, Doherty A, Hayes R. Bleeding meckel’s diverticulum: A study of the accuracy of pertechnetate scintigraphy as a diagnostic tool. Eur J Radiol. 2017;96:27-30. PubMed
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