
先に結論:穿刺の「高さ」で起こる合併症が変わり、エコーで血流を見て、CTで広がりと出血源を確かめる
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 起こる合併症 | 出血・血腫、仮性動脈瘤、動静脈瘻、閉塞、解離など(Tonolini 2018) |
| 穿刺の高さ | 高い穿刺は後腹膜出血の危険因子(Tiroch 2008)。低い穿刺(浅大腿動脈・大腿深動脈)は仮性動脈瘤の危険が上がる(Gabriel 2007) |
| エコー | ドプラで動脈の血流の異常(仮性動脈瘤・動静脈瘻)をその場で見つけられる(Igidbashian 1989) |
| CT | 造影CT(CT血管造影)で、血腫の広がりと出血の場所、仮性動脈瘤の連絡路を一度に見られる(Tonolini 2018) |
| 注意 | 後腹膜の出血は体の表面からは見えない。腹痛・背部痛・血圧低下では画像で確認する |
穿刺部の合併症とは
心臓カテーテル検査、血管内治療、カテーテルを使った不整脈治療などでは、足の付け根にある総大腿動脈(または大腿静脈)に細い管を入れます。この穿刺部に起こる問題をまとめて「血管アクセス部位の合併症」と呼びます。
画像診断で出会う主なものは次のとおりです(Tonolini 2018)。
| 合併症 | 何が起きているか |
|---|---|
| 出血・血腫 | 動脈の穴から血液が周囲に漏れてたまる(鼠径部・大腿・腹壁・後腹膜・腹腔内) |
| 仮性動脈瘤 | 動脈の穴から漏れた血液が周囲の組織に包まれ、動脈と細い通路でつながったこぶになる |
| 動静脈瘻 | 穿刺で動脈と隣の静脈がつながり、動脈の血液が静脈へ流れ込む |
| 閉塞・解離 | 動脈が詰まる・壁が裂ける。足の血行障害につながる |
| 感染 | 血腫に感染して鼠径部の膿瘍になることがある |
頻度は検査や治療の種類で変わりますが、心臓カテーテル検査(大腿動脈から)11,992人の4年間の調査では、仮性動脈瘤は76例(0.6%)でした(Popovic 2010)。動静脈瘻は、心臓カテーテル検査2,609件で0.22%と報告されています(Sidawy 1993)。冠動脈インターベンション20,904人では、CTや手術で確認された後腹膜出血が93例(0.45%)でした(Maluenda 2012)。いずれも頻度は高くありませんが、見逃すと重症化します。
穿刺の「高さ」が合併症を決める
総大腿動脈は、大腿骨頭の高さあたりで体表に近く、後ろに骨があるため、抜いたあとの圧迫止血が効きやすい部位です。これより上に外れると腹腔の後ろ(後腹膜)に入り、下に外れると動脈が分かれて細くなり、圧迫しにくくなります。穿刺の高さと起こりやすい合併症は次のように整理できます。
| 穿刺の高さ | 起こりやすいこと | 根拠 |
|---|---|---|
| 高すぎる(鼠径靭帯より上) | 後腹膜出血。外から見えないまま出血が広がる | 高い穿刺は後腹膜出血の独立した危険因子(Tiroch 2008) |
| 適切(総大腿動脈) | 圧迫がしやすく、合併症が少ない | 一般的な解剖学的な理由 |
| 低すぎる(分岐より下) | 血腫、仮性動脈瘤、動静脈瘻 | 仮性動脈瘤の部位は浅大腿・大腿深動脈が38.1%で、穿刺部位としての19.8%を上回った(Gabriel 2007) |
動静脈瘻も同じ傾向で、心臓カテーテル検査後の8病変は、すべて総大腿動脈の分岐より下(浅大腿動脈3、大腿深動脈5)から起こっていました。総大腿動脈と総大腿静脈は並んでいるので1回の穿刺で両方を貫きにくく、分岐より下では大腿深静脈が動脈の後ろに回り込んで近くなるため、瘻孔ができやすいという解剖学的な説明が示されています(Sidawy 1993)。
仮性動脈瘤の危険因子を調べた研究では、インターベンション手技と左の鼠径部の穿刺が独立した因子でした(それぞれ調整オッズ比1.99と4.65)(Popovic 2010)。後腹膜出血では、慢性腎不全と糖蛋白IIb/IIIa阻害薬の使用、高い穿刺が独立した予測因子でした(Tiroch 2008)。
画像での見え方:エコーとCT
| 合併症 | エコー(ドプラ) | 造影CT |
|---|---|---|
| 血腫 | 動脈のそばの液体のたまり。内部は不均一で、血流信号はない(一般的な見え方) | 新鮮な血液は高吸収。液面形成(fluid-fluid level)を伴うことがある(Tonolini 2018) |
| 仮性動脈瘤 | 動脈につながる、血流のある袋状の構造。細い通路(ネック)で連絡する(一般的な見え方) | 動脈相で動脈と同じように造影される袋と、動脈とつながる細い連絡路。周囲に血腫を伴う(Tonolini 2018) |
| 動静脈瘻 | 動脈で拡張期にも前向きの血流が続く(正常は収縮期のみ)。静脈に乱流と拍動性の血流が出る(Igidbashian 1989) | 動脈相で動脈と隣の静脈が同時に造影される(Tonolini 2018) |
| 後腹膜出血 | 見つけにくい(骨盤の深部で、腸管ガスに隠れる) | 後腹膜に高吸収の血腫、液面形成、造影剤の血管外漏出(活動性出血)(Tonolini 2018) |
エコーは、ベッドサイドで、放射線を使わずに、血流の向きや速さを見られるのが強みです。動静脈瘻では、心臓カテーテル検査後の6人全員に、動脈の拡張期にも続く前向きの血流が見つかり、その部位の静脈には乱流を伴う拍動性の血流がありました(Igidbashian 1989)。エコーの基本はエコー(超音波)検査の基礎にまとめています。
一方でCTは、血腫の広がり、出血している場所、仮性動脈瘤とつながる動脈をまとめて見られるので、治療方針(経過をみる、血管内で治す、手術)を決めるときに役立ちます(Tonolini 2018)。以前はカラードプラが主に使われていましたが、近年は骨盤から大腿までのCT血管造影が増えているとされています(Tonolini 2018)。
仮性動脈瘤
「仮性」というのは、動脈の壁そのものがふくらんだ真性の動脈瘤と違い、穴から漏れた血液が周囲の組織に包まれてできたこぶだからです。手術後の仮性動脈瘤の別の例は膵十二指腸アーケード動脈瘤・PD後の仮性動脈瘤で説明しています。
鼠径部の仮性動脈瘤は、CT血管造影で袋と連絡路が見えます。大きさは治療方針を考える材料になり、心臓カテーテル検査後の仮性動脈瘤76例の検討では、径が4cmを超えることと糖蛋白IIb/IIIa阻害薬の使用が、手術が必要になる独立した予測因子でした(Popovic 2010)。
症例 80歳代女性 鼠径部の仮性動脈瘤(CT血管造影)

引用:Tonolini M, et al. Insights Imaging 2018(Figure 5)、CC BY 4.0
冠動脈インターベンション後に出血があった87歳の女性です。論文の記載では、右総大腿動脈に直径2cmの丸い仮性動脈瘤と、動脈とつながる短い連絡路が見られ、単純CT(a)、動脈相(b)、ボリュームレンダリング像(c)、静脈相(d)で確認されています。画像には別の2症例(e〜i)も並んでいます。
動静脈瘻
動脈と静脈がつながると、静脈に動脈の血液が流れ込むため、足の付け根にザーザーという雑音(血管雑音)や振動(スリル)を触れることがあります(Sidawy 1993)。CT血管造影では動脈相で静脈が早く造影されるのが決め手で、肺で同じ仕組みが起こる病気は肺動静脈瘻(肺動静脈奇形・PAVM)にまとめています。
症例 動静脈瘻(カテーテル検査24時間後のCT血管造影)

引用:Tonolini M, et al. Insights Imaging 2018(Figure 7)、CC BY 4.0
冠動脈造影の24時間後に見つかった動静脈瘻です。論文の記載では、皮下の血腫(*)と、総大腿動脈(矢印)と隣接する大腿静脈(矢頭)が同時に造影されており、動静脈瘻と判断されています。軸位断(a)、冠状断(b)、矢状断(c)の多断面像です。
後腹膜出血と血腫:CTの役割
後腹膜出血は、穿刺が高すぎたときなどに、腹腔の後ろ側(後腹膜)に血液がたまります。体の表面は腫れないのに、腹痛・背部痛・血圧の低下・ヘモグロビンの低下が出ることがあるため、疑ったらCTで確認します。関連する話題として、腹腔内出血の出血源の推定はsentinel clot sign、腹壁の血腫は腹直筋血腫も参考になります。
カテーテル後の出血をCTで調べた21人の検討では、出血は後腹膜、腹腔内、鼠径部と大腿、腹壁の4つの型に分けられ、CTは全員で、集中的な観察の必要性や手術の可能性を判断するのに役立ちました(Trerotola 1990)。
ただし、CTの出血量がいつも予後を決めるわけではありません。冠動脈インターベンション後の後腹膜出血93例では、血圧が安定していた患者で、造影なしCTで測った出血量は予後に関係しませんでした。ショックになった患者は、CTの出血量が多く、輸血も多く、侵襲的な治療を受けることが多くなっていました(Maluenda 2012)。量だけでなく、血圧・ヘモグロビンの推移と、造影での活動性出血の有無を合わせて判断します。
見落としやすい所と読み方のコツ
| 落とし穴 | コツ |
|---|---|
| 術後の正常な変化を異常と読む | 合併症のない穿刺でも、穿刺経路に沿った軽い脂肪織の濃度上昇と少量の液体は見られる(Tonolini 2018)。ふくらみや造影剤の漏れがあるかで区別する |
| 単純CTだけで終わる | 仮性動脈瘤や動静脈瘻、活動性出血は造影の動脈相でわかる。造影ができない事情があれば、エコーで血流を補う |
| 初回CTで少量だから安心する | 早期のCTで少量の液体だった例が、その後4.5cmの血腫と造影剤の漏れに進んだ報告がある(Tonolini 2018) |
| 腫れた鼠径部だけを見る | 血腫は大腿、腹壁、後腹膜にも広がる。骨盤の上まで範囲に入れる |
| 足の血流を見ない | 総大腿動脈の閉塞は、足の急な冷感・しびれ・痛みの原因になる。造影で血管の途切れを確認する(Tonolini 2018) |
よくある疑問(Q&A)
Q1. 検査のあとに穿刺部が腫れた場合、どうすればいいですか?
腫れ、強い痛み、青あざの拡大、足の冷たさやしびれがあれば、すぐに検査を受けた施設や医療機関に連絡してください。気になる症状があれば医療機関を受診してください。
Q2. エコーでわかるのに、CTも必要ですか?
エコーは血流の異常をその場で見つけるのに向いています。一方、後腹膜は深く、エコーでは見えにくいため、腹痛や血圧低下があるときはCTで確認します(Tonolini 2018)。
Q3. 仮性動脈瘤は、すべて治療が必要ですか?
大きさや出血の有無で方針が変わります。CTで小さく出血がない仮性動脈瘤が経過をみられた例もあれば、5cmで血管内治療を受けた例もあります(Tonolini 2018)。方針は、主治医と相談して決まります。
Q4. 穿刺部の合併症を減らすには?
穿刺の高さが重要で、高すぎても低すぎても合併症が増えます(Tiroch 2008、Gabriel 2007)。穿刺前に総大腿動脈の位置をエコーで確かめる方法で、仮性動脈瘤の頻度が下がった報告もあります(Gabriel 2007)。
あわせて読みたい:下肢静脈瘤のエコー検査、冠動脈解離(SCAD)と冠動脈瘤のCT
参考文献
- Tonolini M, Ierardi AM, Carrafiello G, et al. Multidetector CT of iatrogenic and self-inflicted vascular lesions and infections at the groin. Insights Imaging. 2018;9(4):631-642. PubMed
- Popovic B, Freysz L, Chometon F, et al. Femoral pseudoaneurysms and current cardiac catheterization: evaluation of risk factors and treatment. Int J Cardiol. 2010;141(1):75-80. PubMed
- Gabriel M, Pawlaczyk K, Waliszewski K, et al. Location of femoral artery puncture site and the risk of postcatheterization pseudoaneurysm formation. Int J Cardiol. 2007;120(2):167-71. PubMed
- Sidawy AN, Neville RF, Adib H, et al. Femoral arteriovenous fistula following cardiac catheterization: an anatomic explanation. Cardiovasc Surg. 1993;1(2):134-7. PubMed
- Igidbashian VN, Mitchell DG, Middleton WD, et al. Iatrogenic femoral arteriovenous fistula: diagnosis with color Doppler imaging. Radiology. 1989;170(3 Pt 1):749-52. PubMed
- Trerotola SO, Kuhlman JE, Fishman EK. Bleeding complications of femoral catheterization: CT evaluation. Radiology. 1990;174(1):37-40. PubMed
- Maluenda G, Mitulescu L, Ben-Dor I, et al. Retroperitoneal hemorrhage after percutaneous coronary intervention in the current practice era: clinical outcomes and prognostic value of abdominal/pelvic computed tomography. Catheter Cardiovasc Interv. 2012;80(1):29-36. PubMed
- Tiroch KA, Arora N, Matheny ME, et al. Risk predictors of retroperitoneal hemorrhage following percutaneous coronary intervention. Am J Cardiol. 2008;102(11):1473-6. PubMed
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