先に結論:膵十二指腸アーケード動脈瘤・PD後の仮性動脈瘤
- 膵十二指腸アーケードは、膵頭部のまわりで腹腔動脈系(胃十二指腸動脈)と上腸間膜動脈系をつなぐ細い動脈の輪です。ここにできる動脈瘤はまれですが、大きさに関係なく破裂しやすく、見つかれば治療の対象になります
- 原因は大きく2つ:①膵炎や膵頭十二指腸切除術(PD)後の膵液瘻で血管の壁が溶けてできる仮性動脈瘤、②腹腔動脈の狭窄・閉塞(正中弓状靱帯による圧迫など)でアーケードに流れる血液が増えてできる動脈瘤
- PD後にドレーンからの出血・吐血・下血がある、あるいはその前ぶれの少量出血(sentinel bleeding)がある場合は、造影CT(ダイナミックCT)で仮性動脈瘤を探し、カテーテルによる塞栓術(コイルなど)で止血するのが第一選択です
膵十二指腸アーケード動脈瘤
- まれな動脈瘤だが、破裂の危険は最大50%とされ、258例の系統的レビューでも40%に破裂がみられた。
- サイズや性状によらず、発見次第治療適応となる。258例をまとめた系統的レビューでは、61%に腹腔動脈の狭窄・閉塞を伴っていました。治療は経カテーテル動脈塞栓術(TAE)単独が54.6%と最も多く、TAEに腹腔動脈ステントを併用した例や、外科手術と血管内治療を組み合わせた例もありました。正中弓状靱帯症候群に伴う真性の膵十二指腸・胃十二指腸動脈瘤72例の系統的レビューでは、破裂例の瘤径(平均12.3mm)は非破裂例(平均30.8mm)より小さく、大きさにかかわらず速やかに治療することが支持されています。
- 原因としては、膵液瘻による仮性動脈瘤(膵炎後、膵頭十二指腸切除後(PD)など)の他、腹腔動脈の狭窄〜閉塞によるSMAからの代償性血流増加による。
- 腹腔動脈の狭窄〜閉塞によるSMAからの代償性血流増加の原因の1つが、正中弓状靭帯による腹腔動脈起始部の圧迫(呼気時に靭帯圧迫が強くなるので呼気で撮影する)。
仮性動脈瘤とは?真性動脈瘤との違い
| 真性動脈瘤 | 仮性動脈瘤 | |
|---|---|---|
| 壁 | 動脈の壁(内膜・中膜・外膜)がそろったままふくらむ | 動脈の壁が破れ、周りの組織や血腫が壁の代わりになっている |
| 主な原因 | 動脈硬化、腹腔動脈の狭窄・閉塞による血流増加など | 膵炎・膵液瘻、手術、外傷、感染、カテーテル操作 |
| 治療の考え方 | 大きさや部位で判断(膵十二指腸アーケードは大きさによらず治療) | 見つかればすべて治療の対象(Jesinger 2013) |
造影CTでの仮性動脈瘤の見え方
- 動脈相で、近くの動脈と同じくらい濃く染まる丸いかたまりとして見え、動脈とつながる。
- 周りに血腫や液体貯留(膵液瘻、膿瘍)を伴うことが多い。造影剤が血管の外に広がる(extravasation)ときは活動性の出血。
- 単純CTだけでは血腫との区別が難しいため、出血が疑われるときは動脈相を含むダイナミックCTで撮る。
膵炎に伴う仮性動脈瘤
膵炎に伴う仮性動脈瘤をまとめたメタ解析(29研究・840例)では、発生部位は脾動脈が37.7%で最も多く、胃十二指腸動脈や膵十二指腸動脈にも生じます。血管内塞栓術の技術的成功率は97%で、塞栓物質はコイルが最も多く使われていました(Sagar 2021)。膵炎や膵切除後の仮性動脈瘤にNBCAで塞栓した報告もあります(Izaki 2011)。
症例 50歳代男性 胃切除後。術後膵炎、膵液瘻。

術後膵炎あり。胃十二指腸動脈(GDA)から膵十二指腸アーケードに内側に突出する動脈瘤の形成あり。この時点で血管内治療を行なうべきだった。

膵十二指腸アーケード動脈瘤の破裂による腹腔内出血。出血性ショック。→緊急アンギオ施行となる。

膵十二指腸アーケード動脈瘤あり。コイリング施行にて止血。
症例 70歳代男性 膵臓NETにてPD後。吐血あり。

ダイナミックCTの早期相において、固有肝動脈より、仮性動脈瘤の形成あり、同部位からextravasationあり。緊急アンギオとなる。
アンギオでは、腹腔動脈造影にて、固有肝動脈より、17mm大の仮性動脈瘤の形成あり。
▶︎コイリング施行
子カテを用いて、瘤よりやや末梢へアプローチし、造影。瘤の描出がないことを確認し、同部位より、コイリング施行。(2mm/6mm 4本、2mm/5mm 4本、2mm/4mm 4本、3mm/2mm 1本留置。瘤内へのコイル留置は不可であった。)
造影にて瘤への造影剤の混入が消失。
▶︎ヒストアクリル注入
子カテから造影剤を注入し、逆流しない注入量をテスト。ヒストアクリルとリピオドールを混和し、同部位より注入。直ちに子カテ抜去。

腹腔動脈からの造影にて、瘤の描出は消失した。
症例 40歳代女性 膵体尾部切除術後。十二指腸一部切除術後。


GDA造影にて、末梢に仮性動脈瘤あり。ただし、より末梢の血管の描出は認めず。末梢にコイルを置いて、コイルを積み上げるのは断念。ヒストアクリルを使用に。
GDA末梢から造影剤をテスト注入し、仮性動脈瘤の描出を確認。生理食塩水を2.5ccシリンジに3本用意し、ゆっくり流し続ける。
ヒストアクリルとリピオドールを混和して注入。仮性動脈瘤及びそこからのextravasationの描出を認めた、小カテに陰圧をかけたまま、小カテを抜去。
その後、再び別の小カテを用いて、GDAを選択して造影。

鋳型状にヒストアクリルは積み上がり、仮性動脈瘤とともに造影剤の流入なし。
その後、SMAから造影し、仮性動脈瘤に血流がないことを確認して終了。
ヒストアクリルとは?
- NBCA(N-butyl-2-cyanoacrylate)のことで、血液や組織に触れると固体となる特性を生かして、血管内液体塞栓物質として使用される。
- 細い血管まで入り、血管内で鋳型となるため、しっかりした塞栓が得られやすい。
- また再開通も起こりにくいとされる。
- 脳脊髄神経領域での脳脊髄動静脈奇形、動静脈瘻、髄膜腫などで用いられることが多い。
- ただし、血管内への使用は禁忌とされ正式な適応疾患はなく、十分な説明と、症例を選んで使うことが必要。
使い方:
- 塞栓部位もしくはできるだけ遠位までマイクロカテーテルを進める。
- NBCAとリピオドールをよく混合する。
- 注入前は、2.5ccのシリンジを複数用意し、生食を、マイクロカテーテル内に絶えず流す。
※リピオドール量を増やすと固まるまでの時間が延長する。 - 透視下で2で作ったNBCAを注入。注入後は、シリンジで陰圧をかけながらマイクロカテーテルを速やかに抜去する。
参考)十二指腸潰瘍からの出血などの対応(memo)
内視鏡で十二指腸潰瘍などからの出血を止血できない場合などは、血管内治療(アンギオ)の対象となることがある。この場合は、主に胃十二指腸動脈(GDA)を造影して、extravasationや動脈瘤の有無をチェックすることになる。
はっきりしない時は、ノルアドレナリンを用いることがある。これにより出血部位が明らかになることがある。
この際の止血の方法としては、
- GDAの枝を選べない場合、出血部位の末梢からコイルをひたすら積み上げていく。
- 最初はコイルを積み上げ、途中で、セレスキューなどを使い、コイルでサンドイッチする。
- 最初はコイルを積み上げ、途中で、ヒストアクリルを用いる。
方法が考えられる。
1、コイルをひたすら積み上げる。
この場合、相当数のコイルが必要で10-20個必要な場合もある。GDAは割と太いので、4-5mm径のコイルを用いてみる。3mm程度だとコロコロとより末梢へ流れていく可能性あり。
2、途中からセレスキューを用いる。
コイルのみを積み上げるのは大変なので、間にセレスキューをサンドイッチする方法。この場合、セレスキューは1mlシリンジをギリギリ通るような割と大きめなサイズで切る。肝臓のTAEの時のように、造影剤の中にパラパラと塞栓物質があるのではなく、液体の割合を少なくする。大きなセレスキューを1つずつ流していくイメージ。
3、途中でヒストアクリルを用いる。
これも、コイルのみを積み上げるのが大変な場合に用いられるが、それ以外に、
- コイルが積み上がらない場合
- コイルが伸びてしまう場合
などが適応となる。塞栓物質が、GDAより中枢の枝に入らないように、コイルとGDAの残りにはある程度の距離が必要。使用方法は、上の症例で行っている通り。カテーテルの先をコイルの中に置いた状態で用いるのがポイント。
ちなみに、コイルを置かない状態で、ヒストアクリルを用いるとより末梢へ塞栓物質が流れてしまうので、NG。ただし、上の症例のように末梢の描出が認められない仮性動脈瘤などでは、コイルを置かない状態でいきなりヒストアクリルを用いることもある。
関連記事:正中弓状靱帯圧迫症候群(MALS)とは?症状・膵頭部アーケード動脈瘤とCT画像所見(腹腔動脈起始部の狭窄)
仮性動脈瘤でよくある疑問(Q&A)
Q. 膵十二指腸アーケードとは何ですか?
A. 胃十二指腸動脈から出る上膵十二指腸動脈と、上腸間膜動脈から出る下膵十二指腸動脈が、膵頭部の前後でつながってできる動脈の輪です。腹腔動脈が細くなると、この輪を通って上腸間膜動脈から肝臓側へ血液が流れます。
Q. 小さい仮性動脈瘤でも治療が必要ですか?
A. 仮性動脈瘤は壁が弱く破れやすいため、大きさにかかわらず治療の対象とされます(Jesinger 2013)。腹痛や吐血・下血、ドレーンからの出血があれば、すぐに医療機関に連絡してください。
参考文献
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- Jesinger RA, Thoreson AA, Lamba R. Abdominal and pelvic aneurysms and pseudoaneurysms: imaging review with clinical, radiologic, and treatment correlation. Radiographics. 2013;33(3):E71-96. PubMed
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- Sagar S, Soundarajan R, Gupta P, et al. Efficacy of endovascular embolization of arterial pseudoaneurysms in pancreatitis: A systematic review and meta-analysis. Pancreatology. 2021;21(1):46-58. PubMed
- Izaki K, Yamaguchi M, Kawasaki R, et al. N-butyl cyanoacrylate embolization for pseudoaneurysms complicating pancreatitis or pancreatectomy. J Vasc Interv Radiol. 2011;22(3):302-8. PubMed
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