尿管は腎盂から膀胱まで尿を輸送する細長い管状構造であり、画像診断においてはその部位ごとに解剖学的・臨床的区分を明確に理解しておくことが重要です。
今回は、尿管の解剖区分とCT画像における走行、追い方の要点について、まとめました。
尿管の区分:解剖学的 vs 臨床的分類
■ 解剖学的分類
尿管は一般に以下の3つの区間に分けられます:
- 上部尿管(upper ureter): 腎盂〜腸骨動脈交叉部(iliac vessel crossing)
- 中部尿管(mid ureter): 腸骨動脈交叉部〜仙腸関節レベル
- 下部尿管(lower ureter): 仙腸関節レベル〜膀胱尿管接合部(VUJ)
この分類は、主に解剖学的な位置関係を基にしたものですが、CTやIVPなどの画像診断においても基本的な構造理解に役立ちます。
■ 臨床的分類(U1〜U3)
泌尿器科・画像診断科などでは、治療や手技の便宜上、以下のように尿管を3つに分けることが一般的です:
- U1(上部尿管): 腎盂から骨盤縁に入る手前まで
- U2(中部尿管): 骨盤骨にかかる範囲(腸骨動脈交叉部付近)
- U3(下部尿管): 骨盤腔内から膀胱まで
この分類は、尿管ステントや結石の部位記載、手術報告などで広く用いられています。
※U1(腎盂尿管移行部)、U2(腸骨動脈交叉部)、U3(VUJ)が生理的狭窄部であり、結石停留の好発部位として重要。
CT画像における尿管の区分の解剖
実際のCT画像に腎盂・尿管だけに色を付けてみました。
まず、腎盂よりも尾側(~総腸骨動脈交差部まで)が上部尿管です。
上部尿管は、総腸骨動脈交差部までで、それより尾側は中部尿管と名前を変えます。
中部尿管は、仙腸関節までで、それより尾側は下部尿管と名前を変えます。
下部尿管は尿管膀胱移行部までで、それ以降は膀胱へと解剖が変わります。
実際のCT画像に腎盂・尿管だけに色を付けたものはこちら→腹部CT画像における腎盂・尿管の正常解剖
実際の画像をスクロールして動画で尿管の区分の解剖について示しました。
腹部CTで尿管の走行の追い方のポイント
1. 腎盂から下に追う方法(順行性)
最も基本的な方法は、腎盂を起点として下方向に尿管をたどる順行性の追跡です。
- 腎盂の確認: 腎盂が明瞭であれば、そこから連続する低吸収の細い構造が尿管です。
- スライスを少しずつ下げながら追跡: 特に骨盤縁付近での蛇行や側方への移動に注意。
- 腸腰筋の前を通過: 尿管は一般に腸腰筋(psoas major)の前内側を走行するため、この筋をランドマークとして使用すると有効です。
2. 膀胱から上に追う方法(逆行性)
上から追っても途中で分からなくなる場合は、膀胱を起点として上にたどる逆行性の方法が有用です。
- 膀胱壁貫通部を確認: 尿管が膀胱壁に開口する部位(尿管口)から上行。
- 左右差に注意: 左右の走行は非対称なこともあり、側方偏位が見られることがあります。
- 骨盤腔内のガスや腸管に惑わされない: スクロールと多断面再構成(MPR)で正確な追跡を行います。
3. 多断面(MPR)とランドマークの活用
尿管は単純CTでも造影CTでも不明瞭なことが多いため、以下のテクニックが有効です。
- 冠状断・矢状断の併用: 尿管の上下方向の移動や屈曲が把握しやすくなります。
- 腸腰筋の前を走行: 特に骨盤腔に入る前後では、腸腰筋の前内側を通る尿管の位置を意識して観察します。
- 腸骨動脈交叉部で一度確認: 外腸骨動脈の前を横切るポイントは重要な確認箇所です。
尿管の全貌を追えないこともある
これらを駆使しても尿管の全貌を追えないことはあります。
尿管を全て追えない理由
- 尿管が細く・蛇行しているため:正常な尿管は非常に細く、特に非造影CTでは識別が困難。骨盤内では腸管ガスや周囲の脂肪と重なり、不明瞭になることが多い。特に中部〜下部尿管では左右方向の蛇行もある。
- 患者体位や体格の影響:肥満・腸管ガス・術後の癒着などにより、解剖が変化・圧排されていると追いにくい。撮影時の体動や位置ずれも影響。
参考文献
- Smith RC, Verga M, McCarthy S, Rosenfield AT. Diagnosis of acute flank pain: value of unenhanced helical CT. AJR Am J Roentgenol. 1996;166(1):97–101. doi:10.2214/ajr.166.1.8571913
- Silverman SG, Leyendecker JR, Amis ES Jr. What is the current role of CT urography and MR urography in the evaluation of the urinary tract? Radiology. 2009;250(2):309–323. doi:10.1148/radiol.2502080552
- 倉林隆一. 尿管結石の画像診断. 画像診断. 2021;41(6):617-628.
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