精管(vas deferens)は、男性の生殖器系において精子を精巣から尿道まで運ぶ重要な管状構造です。
その精管は腹部CTで同定できないことが圧倒的に多いですが、同定できることもあります。
今回は精管がどこを走行するのかを、同定できた実際のCT画像を用いて解説しました。
精管の解剖と走行の要点
精管は、精巣上体下端から起こり、精巣後縁に沿って上行し、精巣動静脈・神経とともに精索(spermatic cord)を形成します。以下に主な経路を示します:
- 陰嚢から鼠径管を経て腹腔内へ移行
- 腹腔内では精管は精巣動静脈と分かれ、内側かつ尾側方向へ走行
- 膀胱後面にて精管膨大部(ampulla of vas deferens)を形成
- 精嚢の排出管と合流し射精管(ejaculatory duct)となる
- 最終的に前立腺部尿道(verumontanum)へ開口
このように、精管は陰嚢から始まり、骨盤内臓器を貫いて尿道までつながる複雑な経路を取ります。
CT画像で精管を確認するポイント
CT画像で精管を同定することは困難な場合もありますが、以下の部位では比較的明瞭に描出可能です。
1. 鼠径管通過部
鼠径管内を通過する精索の中に線状高吸収構造として確認可能。特に造影CTでは周囲の脂肪組織とのコントラストが明瞭になります。この部分は基本的に同定可能です。
2. 骨盤内走行部
膀胱の後面、精嚢の内側近くに走行します。膀胱底部に接するように両側から走行する管状構造として描出されることがありますが、石灰化が存在しない限り、圧倒的に同定できない症例の方が多いです。
以下に同定できた症例を用いて骨盤内を走行する様子を見てみましょう。
症例 70歳代男性 スクリーニング
鼠径部から連続して、腹腔内で、内側かつ尾側方向へ走行し、膀胱後面にて精管膨大部を形成する左精管を同定することができます。
この症例では左側だけでなく右側も同定できました。
こちらの症例の精管の走行の様子を動画にしました。連続する様子がわかりやすいと思います。
3. 精管膨大部
CT上では、精管膨大部に限局する石灰化としてしばしば観察されます。これは加齢や慢性炎症、糖尿病、特発性の変化と関連することが多く、無症候性であることもしばしばです。
関連記事:輸精管の石灰化のCT画像診断とその意義
参考文献:
- Duan Y et al. “Calcification of the vas deferens: CT findings and clinical correlation”, Abdom Radiol, 2019.
- Moore KL, Dalley AF. Clinically Oriented Anatomy, Lippincott Williams & Wilkins.
- Gray’s Anatomy, 41st Edition. Elsevier.
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