右側大動脈弓/右大動脈弓(right aortic arch)とは
- 大動脈弓が気管および食道の右側を走行する血管異常。
- 発生頻度は約0.1%と稀であり、通常は無症状であるが、一部の症例では嚥下障害や呼吸困難を引き起こすことがある。
- 左鎖骨下動脈の起始異常を伴う場合があり、左鎖骨下動脈起始部が瘤状に拡張していると“Kommerell憩室”と呼ばれる。
右側大動脈弓/右大動脈弓の発生と解剖
- 大動脈弓の形成は胎生3〜4週に始まり、通常は右側大動脈弓が退縮し、左側大動脈弓が発達する。
- しかし、一部の症例では右側大動脈弓が形成されることがあり、これが右側大動脈弓の発生機序である。右側大動脈弓では左鎖骨下動脈の起始異常を伴うことが多く、左鎖骨下動脈の基部には背側大動脈の不完全な退縮による嚢状の限局性拡張が見られる。
Edwards らの重複大動脈弓の仮説
- Edwards らの重複大動脈弓の仮説では、発生段階において両側に大動脈弓が存在し、一部の血管が退縮することで、通常の左側大動脈弓や右鎖骨下動脈起始異常、右側大動脈弓などの形態が生じるとされる。これに対し、血管が退縮しなかった場合には、重複大動脈弓として残存すると考えられている。(Lab Invest . 1953 Jan-Feb;2(1):56-75.)
右側大動脈弓/右大動脈弓の分類
右側大動脈弓は以下の2つのタイプに分類される。
- 食道の背側を走行しないタイプ(左側大動脈の鏡像)
- このタイプでは、血管構造が左右逆転しているが、食道を圧迫するような異常血管は認められない。
- 食道の背側を走行するタイプ
- さらに、異所性左鎖骨下動脈が食道背側を走行する場合と、大動脈自体が食道背側を走行する場合に分かれる。
症例 70歳代 男性 造影CT
大動脈弓が気管および食道の右側を走行する右側大動脈弓あり。
部分的に拡張した分岐部より、異所性左鎖骨下動脈あり。
部分的に拡張した分岐部をKommerell憩室という。
参考文献:
- 画像診断別冊KEY BOOKシリーズ これだけ走っておきたい心臓・血管疾患の画像診断 P274-7
- CT診断一問一答 P326
- 気管支の枝読みで考える胸部画像診断入門 P43-44
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