肝細胞癌(HCC)治療の最新ガイドラインについて
概要
肝細胞癌(Hepatocellular Carcinoma: HCC)は、肝臓に発生するがんの一種です。治療法は、患者の状態やがんの特徴によって異なります。
Child-Pugh(CP)分類と治療法
Child-Pugh(CP)分類AもしくはBで肝外転移や脈管侵襲を伴わない場合、以下の通り治療法が異なります。
腫瘍数と大きさによる治療法の分類
- 腫瘍数が1〜3個、最大径3cm以内の場合
- 切除と焼灼術が優先度なく推奨されます。
- 腫瘍数が1〜3個、最大径3cm超の場合
- 第一選択は切除、第二選択は肝動脈化学塞栓療法(Transcatheter Arterial Chemoembolization: TACE)です。
- 腫瘍数が4個以上の場合
- 第一選択はTACE、第二選択は動注化学療法または分子標的薬です。
- 脈管侵襲を認める場合
- 第一選択は切除、第二選択は薬物療法です。
ガイドラインの変化
- 2017年版から2021年版への変化
- 2017年版の「肝癌診断ガイドライン」では、第一選択は塞栓療法でしたが、2021年版では、肝切除や全身薬物療法が適応とならない場合の動注化学療法や塞栓療法の推奨が弱まり、薬物療法の重要性が増しています。
実際の治療の選択
- 総合的な判断と治療法の組み合わせ
- 実際には、肝機能や年齢、パフォーマンスステータス、薬物耐性などを総合的に考慮して治療が行われます。TACE、動注化学療法、放射線治療の組み合わせが行われることもあります。
肝切除の方法
切除方法の選択
- 肝予備能に基づく方法の選定
- 肝切除の方法は、肝予備能に応じて異なります。系統的肝切除(門脈分枝領域)が行われることもあれば、腫瘍の場所や個数、脈管との関係から部分切除が選択されることもあります。
分子標的薬と治療
利用される薬剤と治療法
- 分子標的薬の使用
- 分子標的薬には、ソラフェニブやレンバチニブなどが使用されます。
- 切除不能肝細胞癌の治療法
- 切除不能な肝細胞癌では、マテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)とベバシズマブ(抗VEGF抗体)の併用療法が有用です。
参考文献:画像診断 Vol.43 No.11 増刊号 2023 P85-6