先に結論:大動脈乳頭(aortic nipple)
- 大動脈乳頭は、胸部X線で大動脈弓の外側に乳首のような小さな突出が見えるもので、左上肋間静脈が大動脈弓の横を走るために見えます
- 1割弱(9.5%)の人に見られる正常構造で、それ自体に病的な意味はありません
- ただし左腕頭静脈や上大静脈の閉塞があると側副路として太くなり目立つことがあり、リンパ節腫大と間違えないことも大切です
大動脈乳頭(aortic nipple)とは?
- 正常では左第2−4肋間静脈は左上肋間静脈に合流して左腕頭静脈へ流入し、左上肋間静脈は副半奇静脈とも交通している。
- 胸部レントゲンにおいて、9.5%の頻度で(Ball 1982)、左上肋間静脈が大動脈弓の外側に沿って走行し、大動脈から乳頭(nipple)が突出したように見え、これを大動脈乳頭(aortic nipple)と呼ぶ。
- 大動脈乳頭(aortic nipple)自体には、特に病的意義はない。
- 左腕頭静脈閉塞や上大静脈症候群を起こしている場合は、左上肋間静脈が側副路として拡大していることがあり、この大動脈乳頭(aortic nipple)が目立つ場合がある。大動脈乳頭が新たに出現・拡大してきた症例では、上大静脈症候群の臨床症状が出る7〜10週前に胸部X線で捉えられていたという報告がある(Carter 1985)。右上胸部の腫瘤がある40例のMRIでは6例に大動脈乳頭が描出され、うち4例は上大静脈症候群を伴っていた(Medrea 1988)。以前の写真と比べて大きくなっている場合は、上大静脈や左腕頭静脈の閉塞を疑ってCTで確認するとよい。
症例 30歳代女性

引用:Radiopaedia
胸部レントゲンの正面像の大動脈弓部のところを拡大したものです。
大動脈弓部から上外側に突出像を認め、大動脈乳頭(aortic nipple)を疑う所見です。

CTでは横断像で、左上肋間静脈が大動脈弓の外側に沿って走行している様子がわかります。
また、冠状断像ではレントゲンと同じように大動脈から乳頭(nipple)を形成しているように見えます。

ちなみに横断像では、副半奇静脈から左上肋間静脈が大動脈弓部の外側に向かって走行し、左腕頭静脈に合流する様子がよくわかります。
左上肋間静脈と最上肋間静脈の違い
名前が似ていますが別の静脈です。最上肋間静脈は第1肋間の静脈で、腕頭静脈などに注ぎます。左上肋間静脈は第2〜4肋間の静脈を集め、大動脈弓の外側を前へ回って左腕頭静脈に注ぐ静脈で、大動脈乳頭として写るのはこちらです。
胸部レントゲンの「乳首(乳頭陰影)」とは別物
「レントゲン 乳首」で調べられることが多いのは、乳頭そのものが肺に重なって写る乳頭陰影で、大動脈乳頭とは別のものです。
| 大動脈乳頭 | 乳頭陰影 | |
|---|---|---|
| 正体 | 左上肋間静脈 | 体表の乳頭 |
| 場所 | 大動脈弓の外側 | 下肺野(片側のことも両側のこともある) |
| 注意点 | 大きくなれば静脈の閉塞を疑う | 肺の結節と紛らわしい |
健診の男性1150人では3.5%に乳頭陰影が写り、大きさは15mm以下の円形〜楕円形でした(Ohwada 2005)。乳頭に目印(乳頭マーカー)を付けて撮る方法もありますが、目印が正しい位置にないことが多く、ルーチンの使用は勧められないとする報告もあります(Lee 2023)。
関連記事:傍横隔膜隆起(juxtaphrenic peak sign)の胸部レントゲン、CT画像所見のポイント
参考文献:画像診断 Vol.41 No.6 2021 P544-5
- Ball JB, Proto AV. The variable appearance of the left superior intercostal vein. Radiology. 1982;144(3):445-52. PubMed
- Carter MM, Tarr RW, Mazer MJ, et al. The “aortic nipple” as a sign of impending superior vena caval syndrome. Chest. 1985;87(6):775-7. PubMed
- Medrea M, Meydam K, Schmitt WG. MRI visualization of the aortic nipple. Cardiovasc Intervent Radiol. 1988;11(1):29-31. PubMed
- Ohwada A, Sato K, Tamori Y, et al. Visible male nipple shadows in chest radiographs. Respirology. 2005;10(1):111-5. PubMed
- Lee E, Sayyouh M, Aslam A, et al. Utility of Nipple Markers in the Era of Digital Imaging. J Thorac Imaging. 2023;38(1):4-9. PubMed
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