胸部造影CTにおいて、奇静脈弓(azygos arch)における高吸収域が観察されることがあります。

これは腫瘤や石灰化といった病的所見ではなく、造影剤が奇静脈弁に一時的に滞留することによって起こる生理的な現象です。

奇静脈弁(Azygos arch valve)への造影剤の残留

  • 造影CTにおいて平衡相や遅延相で奇静脈弓(Arch of azygos vein)に高吸収が目立って残っているのは石灰化などではなく、奇静脈弁(Azygos arch valve)に造影剤が残留するため。
  • 奇静脈弓には二尖弁があり、この部分に造影剤が残る。
  • 造影CTの早期相では上大静脈から奇静脈弓に造影剤が逆流することがある。
  • 肺動脈相での逆流は右注入で多いが、遅い相だと左右の影響は少ない。

診断上の注意点

CT画像上で奇静脈弓に高吸収域が認められた際は、以下のポイントに留意しましょう。

  • 正常構造との鑑別: 造影剤の一時的な貯留であり、腫瘤や石灰化と誤認しない。
  • 注入相の確認: どのタイミングの相で撮像されたかを確認し、造影剤の流れを考慮。
  • 他の異常所見との関連: 他の異常所見がなければ正常バリアントとして評価。

症例60歳代男性 スクリーニング

奇静脈弓に高吸収が目立つ部位があるが、石灰化などではなく、奇静脈弁に残った造影剤である。

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まとめ

奇静脈弓の高吸収域は、正常解剖に基づく造影剤の一過性貯留であり、特に遅延相で目立ちます。診断にあたっては、造影相・注入経路・周囲構造の状態を併せて評価し、不要な精査を避けることが重要です。

参考文献:

  • 東海大学医学部 放射線科. Visualization of Azygos Arch Valves using Computed Tomography.
  • Yonetsu T, et al. “CT demonstration of valves in the azygos vein and their clinical significance.” AJR Am J Roentgenol. 1996;167(1):125-126.

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