脳血管障害に関わる病態として、頭蓋内圧亢進(ずがいないあつこうしん)というものがあります。
ちょっと難しそうな言葉ですが、その文字どおり「頭蓋内の圧が亢進する(高くなる)」状態です。
その頭蓋内圧亢進になると、脳が高くなった圧力によって押されることになります。
そこで今回は頭蓋内圧亢進(英語表記で「increased intracranial pressure」)について
- 症状
- 原因
- 診断
- 治療法
ということをご説明したいと思います。
先に結論:頭蓋内圧亢進(脳圧亢進)とは
- 読み方は「ずがいないあつこうしん」。頭蓋骨の中の圧(脳圧)が高くなった状態で、寝た姿勢で正常値60〜180mmH2Oを超えたものをいいます
- 主な症状は頭痛・嘔吐・うっ血乳頭。急に起こると激しい頭痛・嘔吐・意識障害・クッシング現象(徐脈と血圧上昇)、慢性では朝方の頭痛・嘔吐・物が二重に見える・めまいなどが出ます
- 原因は血腫・脳腫瘍・広い脳梗塞・くも膜下出血・水頭症など。進むと脳ヘルニアとなり命にかかわります
- CTでは脳底槽(脳のまわりの髄液のすき間)のつぶれや正中偏位が手がかりです。原因がはっきりしない特発性頭蓋内圧亢進症では、MRIで横静脈洞の狭窄・トルコ鞍が空っぽに見えるempty sella・眼球の後ろが平らになる所見などを探します
| CT・MRIで見るところ | 頭蓋内圧が高いときの所見 |
|---|---|
| 原因 | 血腫・腫瘍・脳梗塞・くも膜下出血・水頭症(脳室の拡大)など |
| 脳のはれ・圧迫 | 脳溝や脳槽が見えにくくなる、脳室が押しつぶされる |
| 正中偏位・脳ヘルニア | 脳が反対側へ押される(正中線のずれ)、大脳鎌の下やテント切痕へのはみ出し |
※CT・MRIで一見正常でも頭蓋内圧が高いことがあります。強い頭痛や嘔吐、意識の変化があるときはすぐに受診してください。
頭蓋内圧亢進とは?
頭蓋内圧亢進とは、頭蓋内圧が寝た状態で正常値(60~180mmH2O)を超えた180mmH2O以上になったものをいいます。

上のCT画像(冠状断像)のように脳は頭蓋骨に囲まれ、守られています。
ところが、血腫や腫瘍など本来ないものが脳内にあったり、何らかの原因で脳がむくむと、頭蓋内の圧が高くなります。

圧が高くなると、脳が圧迫され、本来あるべき場所から移動してしまい、様々な症状が引き起こされます。
怖いのが重篤な脳ヘルニアを起こすことです。

脳圧とは?頭蓋内圧が上がるしくみ
「脳圧」は頭蓋内圧のことで、頭蓋骨に囲まれた空間の中の圧力を指します。
頭蓋骨の中は、脳・血液・髄液の3つでほぼいっぱいになっていて、容積の合計はほとんど変えられません(Monro-Kellieの法則)。
どれか1つが増えると、はじめは髄液や静脈の血液が頭蓋の外へ逃げて圧を保ちますが、その余裕を使い切ると、わずかな増加でも圧が急に上がるようになります。
そのため、ゆっくり大きくなる病変では症状が出にくく、急な出血などでは短時間で重い症状が出ます。
では次に頭蓋内圧亢進の症状について見ていきましょう。
頭蓋内圧亢進はどういう症状が現れる?
頭蓋内圧亢進には急性と慢性と2つのパターンがあります。
急性と慢性、それぞれ症状が異なりますので、分けて説明します。
急性頭蓋内圧亢進
- 激しい頭痛
- 悪心
- 嘔吐
- クッシング現象(徐脈・血圧上昇)
- 意識障害
- 網膜出血
- 視力障害(散瞳)
- 痙攣
激しい頭痛や嘔吐(腹痛や腹部膨満感といった消化器症状は伴わない)が急性頭蓋内圧亢進の場合の特徴ともいえます。
また、意識障害はボーっとしてしまうといった軽度なものから徐々に症状が進行し、意識がなくなるまでになることもあります。
その他に、病態がある側の目の神経を圧迫したことにより、視点が定まらず散瞳の症状が現れることもあります。
慢性頭蓋内圧亢進
- 頭痛
- 嘔吐
- 視力障害
- めまい
- うっ血乳頭
- 神経麻痺
- 記憶障害
- 人格変化
とくに朝方に起こることが多いと言われているのですが、頭痛や消化器症状を伴わない嘔吐、物がだぶって見えてしまうなどの視力障害、めまいなどが起こります。
さらに症状を放置してしまうと、どんどん症状は悪化し、様々な神経を圧迫することに・・・。
それにより、思い出せないなどの記憶障害から、言ってることの辻褄が合わないなどの人格変化まで起こることがあります。
頭蓋内圧亢進の原因は?
頭蓋内圧が亢進するには主に3つの機序が考えられています。
- 髄液の圧が高まることによる:水頭症が代表
- 血流量が増えることによる:血腫や血管内血液が増える
- 脳実質の圧が高まる:腫瘍などがある
急性と慢性、それぞれの場合の原因について説明します。
急性頭蓋内圧亢進の原因
- 頭蓋内血腫
- 脳腫瘍(とくに急速にサイズが大きくなる悪性のもの)
- 脳梗塞(とくに広範な脳梗塞や出血性梗塞を合併した場合)
- くも膜下出血
- 水頭症 など
脳血管障害や外傷によるもの、脳の静脈の閉塞による循環不良のために起こる血液量が増えたことも原因の1つといわれています。
慢性頭蓋内圧亢進の原因
- 良性脳腫瘍
- 先天異常
- 特発性頭蓋内圧亢進症
髄膜腫や狭頭症なども原因として考えられます。
頭蓋内圧亢進の診断方法は?
検査としては、画像検査として頭部CT・MRIが一般的で、その他眼底検査や頭蓋内圧測定などを行い診断に至ります。
ただし、頭蓋内に占拠性病変や脳ヘルニアの兆候がある場合、腰椎穿刺は脳ヘルニアを誘発する恐れがあるため禁忌です(画像で占拠性病変を除外したうえで行う特発性頭蓋内圧亢進症の診断などは例外です)。
また、CTやMRIで一見正常に見えても頭蓋内圧が亢進していることがあるので注意が必要です。
画像所見で問題がなく、頭蓋内圧測定により頭蓋内圧が亢進している場合は、血流が増えている状態が考えられるので、CT perfusionを撮影すると異常が見られる場合もあります。
頭蓋内圧亢進の画像所見
それでは実際の画像を見てみましょう。
症例 80歳代女性 硬膜下血腫による脳ヘルニア 頭部CT冠状断像

左(向かって右)の血腫によって脳実質が右側(向かって左側)に押されているのがわかります。
頭蓋内血腫によって頭蓋内圧亢進が起こっています。
この画像の場合、非常に危険な切迫脳ヘルニアの状態で、緊急手術が必要な状態といえます。
CTのどこを見る?所見の当てになり具合
重症患者で、CT所見と実際に測った頭蓋内圧を比べた研究をまとめた解析では、
- 脳底槽の圧排:感度85.9%・特異度61.0%
- 正中偏位(わずかでもあり):感度80.9%・特異度42.7%
- 10mm以上の正中偏位:感度20.7%・特異度89.2%
と報告されています(Fernando 2019)。
脳底槽がつぶれていれば頭蓋内圧亢進を強く疑いますが、CTだけで圧の高さを言い切ることはできず、症状や他の検査と合わせて判断します。
MRI所見(特発性頭蓋内圧亢進症)
腫瘍や出血などの原因が見つからない特発性頭蓋内圧亢進症では、MRIで次のような所見を探します。
- 横静脈洞の狭窄(MR venography):感度84.4%・特異度94.9%で、最も役に立つ所見とされています
- empty sella(トルコ鞍が髄液で満たされ下垂体が平たく見える)
- 眼球後部の平坦化・視神経乳頭の突出
- 視神経鞘の拡張・視神経の蛇行
横静脈洞狭窄以外の所見は、特異度は84.0〜99.2%と高いものの、感度は6.1〜68.6%と低く、所見がなくても否定はできません(Kwee 2019)。
頭蓋内圧亢進はどういう治療法がある?
大きく分けて内科的治療と外科的治療とがあります。
内科的治療
- 浸透圧性利尿剤
- ステロイド剤
- バルビツレート療法
- 低体温療法
全てにおいて脳の浮腫を軽減させ圧を下げることが目的です。なお、ステロイドが有効なのは主に脳腫瘍などに伴う血管原性浮腫で、頭部外傷ではステロイド投与で死亡率が上昇した大規模試験(CRASH試験)があり、使用は推奨されていません。重症頭部外傷でICPモニタリングを行う場合の治療については、2019年の国際コンセンサス(SIBICC)が、危険度の低い治療から順に3段階(tier)に分けたアルゴリズムを示しています。上の段階ほどリスクの高い治療と位置づけられ、同じ段階の中の治療はほぼ同等とされています。
利尿を促したり、脳血管を収縮させたり、脳代謝を低下させ血液量を減らすという方法などです。
しかし、脱水や血圧低下、血小板低下や心肺機能低下などの副作用が出ることもあるため、治療は慎重に行う必要があります。
外科的治療
- 脳腫瘍切除術
- 腫瘍摘出術
- 脳室ドレナージ
- V-Pシャント
- 開頭外減圧術
- 内減圧術
- 外減圧術
外科的治療の場合、頭蓋内に貯蓄した髄液を排出したり、頭蓋骨を開放し、圧を外に逃す方法や頭蓋内圧亢進によって壊死した組織を除去する手術が行われます。
また、全てにおいて呼吸管理も重要となります。
最後に
頭蓋内圧亢進について、ポイントをまとめます。
- 頭蓋内圧亢進は、浮腫により頭蓋内圧が高まるもの
- 急性の場合と慢性の場合があり、それぞれ症状が異なるが頭痛や嘔吐、神経症状がある
- 脳腫瘍や血腫、循環不良や水頭症が原因となる
- 診断は症状と合わせ、画像検査や眼底検査、頭蓋内圧測定が一般的
- 内科的治療や外科的治療が行われ、呼吸管理も重要
休んで経過観察をしていたら症状が悪化し脳ヘルニアとなり、命に関わることも多くあります。
そのため、早期診断・治療が重要です。
頭蓋内圧亢進でよくある疑問(Q&A)
Q1. 頭蓋内圧亢進の原因を5つにまとめると?
頭蓋の中の「中身」が増えると考えると整理しやすくなります。
- できもの(占拠性病変):脳腫瘍・膿瘍など
- 出血:頭蓋内血腫・くも膜下出血
- 脳のむくみ(脳浮腫):広い脳梗塞・頭部外傷・脳炎など
- 髄液がたまる:水頭症
- 静脈の流れが悪くなる:脳静脈洞血栓症など
このほか、原因がはっきりしない特発性頭蓋内圧亢進症があります。
Q2. 頭蓋内圧亢進症(特発性頭蓋内圧亢進症)とは?
CT・MRIで腫瘍や出血などの原因がないのに頭蓋内圧が高い状態で、頭痛と、視神経乳頭のむくみ(うっ血乳頭)による見えにくさが主な症状です。MRIは、他の原因を除外することと、上の横静脈洞狭窄などの所見を探すことの2つの目的で撮影されます。
Q3. CTで異常がなければ安心ですか?
いいえ。上のように、CT所見だけでは頭蓋内圧亢進を見逃すことがあります。頭痛が日に日に強くなる、朝に吐く、物が二重に見える、意識がぼんやりするなどの症状があれば、早めに医療機関を受診してください。
あわせて読みたい:脳ヘルニアとは?種類(帯状回・鉤・テント切痕・大後頭孔)と症状、CT画像所見と治療、特発性頭蓋内圧亢進症のMRI
参考文献
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- Carney N, Totten AM, O’Reilly C, et al. Guidelines for the Management of Severe Traumatic Brain Injury, Fourth Edition. Neurosurgery. 2017;80(1):6-15. PubMed
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- Fernando SM, Tran A, Cheng W, et al. Diagnosis of elevated intracranial pressure in critically ill adults: systematic review and meta-analysis. BMJ. 2019;366:l4225. PubMed
- Kwee RM, Kwee TC. Systematic review and meta-analysis of MRI signs for diagnosis of idiopathic intracranial hypertension. Eur J Radiol. 2019;116:106-115. PubMed
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