脳出血というと、最も多い被殻出血・続いて多い視床出血・そして脳幹出血・小脳出血と、皮質下に出血をきたす皮質下出血というのもあります。
皮質下出血でも高血圧は多くみられますが、高血圧性以外の原因も考慮しなければならないのが皮質下出血です。
今回は、皮質下出血(英語ではSubcortical hemorrhage)について・・・
- 症状
- 原因
- CT画像診断
- 治療法
- 後遺症
ということをご説明したいと思います。
先に結論:皮質下出血とは
- 脳の表面(皮質)のすぐ下の白質に起こる脳出血で、脳葉型出血ともよばれます。前頭葉・頭頂葉・側頭葉・後頭葉のどこにも起こります
- どこ?:脳の奥(被殻・視床などの深部)や脳幹・小脳の出血とは違い、大脳の表面に近い浅いところに起こります。CTでは血腫が脳の外側寄りにあり、脳のしわ(脳溝)の近くまで達していることが多いのが特徴です
- 症状は出血した場所によって違い、突然の頭痛・けいれん(てんかん発作)に加え、前頭葉なら反対側の手足のまひ、頭頂葉なら反対側の感覚障害、側頭葉なら失語、後頭葉なら視野の半分が見えにくい(同名性半盲)などが出ます
- 原因は高血圧だけでなく、高齢者では脳アミロイドアンギオパチー、若い人では脳動静脈奇形、脳腫瘍、抗凝固薬、外傷なども考えます。CTで白い(高吸収の)出血として見え、原因を調べるためにMRIや血管の検査を追加します。治療は血圧管理が中心で、大きな出血では手術も検討します
※突然の頭痛・手足のまひ・ことばの障害があれば、すぐに救急受診してください。
皮質下出血とは?
皮質とは、大脳・小脳の表層を作る灰白質部のことをいい、下の実際のCT画像を用いた図のように、皮質下とは大脳の皮質のすぐ直下の白質部分をいいます。
その白質部分である皮質下に出血をともなうものが皮質下出血です。脳出血に占める割合は地域や年齢で異なり、米国シンシナティの集計では75歳未満の脳出血の46%、75歳以上の34%が脳葉型(皮質下)でした(Broderick 1993)。

皮質下出血はどこに起こる?場所(脳葉)と症状の対応
皮質と皮質下の違い:皮質は脳の表面をおおう灰白質(神経細胞が集まる層)、皮質下はそのすぐ内側の白質(神経線維の通り道)です。皮質下出血は、この白質の浅いところに起こる出血で、出血した脳葉の働きに応じた症状が出ます。
| 場所 | 主な働き | 出血で出やすい症状 |
|---|---|---|
| 前頭葉 | 体を動かす(中心前回)、考える・意欲・注意 | 反対側の手足のまひ(中心前回に及ぶとき)、意欲低下・注意障害、左の前頭葉では言葉が出にくい(運動性失語) |
| 頭頂葉 | 体の感覚(中心後回)、空間の把握 | 反対側のしびれ・感覚障害、右の頭頂葉では左側を見落とす(左半側空間無視) |
| 側頭葉 | 言葉の理解、記憶、聴覚 | 左の側頭葉では言葉が理解しにくい(感覚性失語)、視野の上半分の欠け |
| 後頭葉 | ものを見る(視覚野) | 反対側の視野が見えにくい(同名性半盲) |
言葉の中枢は多くの人で左の大脳半球にあるため、失語は左の皮質下出血で起こりやすくなります。右前頭葉の皮質下出血では、左の手足のまひ(中心前回に及ぶとき)や、注意・意欲の低下などが中心で、失語は目立たないことが多いです。
皮質下出血はどんな症状が現れる?
皮質下出血が起きた時は、出血が起こった部位に相当する以下のような症状が現れます。
- 突然の頭痛
- てんかん発作
- 反対側の感覚障害 (頭頂葉での出血)
- 同名性半盲 (後頭葉での出血)
- 失語 (側頭葉での出血)
- 視野障害 (側頭葉での出血)
- 反対側の運動麻痺 (前頭葉での出血)
これらの症状は一度現れた症状が治まることもあり、注意が必要です。
前頭葉・頭頂葉・側頭葉・後頭葉と出血が起きた部位によっても症状は異なるものの、上のような症状が組み合わさって現れます。
- 突然の頭痛
- 意識が薄れていく
- 対側の感覚障害
- 目の半分が見えにくい(半盲)
- ろれつが回らない
- 言葉が出づらくなる(失語)
- 視野障害
- 対側の運動麻痺
がみられることもあります。
皮質下出血の原因は?
皮質下出血でも高血圧の既往は多く、米国の集計では脳葉型出血の67%に高血圧の既往があり、深部の出血(73%)と大きく変わりませんでした(Broderick 1993)。ただし皮質下出血では、高血圧以外の原因も探す必要があります。
また原因は簡単には特定出来ないともいわれていますが、以下のような理由が考えられます。
- 高血圧
- 外傷によるもの
- 脳動静脈奇形(AVM) :特に若年者
- 脳アミロイドアンギオパチー :特に高齢者
など
上のように、外傷による毛細血管の破壊によって起こる場合もあります。
- また若年者の場合は、動静脈奇形
- 高齢者の場合は、脳アミロイドアンギオパチー
が原因となることがあります。脳アミロイドアンギオパチーの臨床診断には、2022年に改訂されたBoston基準2.0が使われます。50歳以上で、MRIで脳葉に限られた出血性病変(脳出血・微小出血・脳表ヘモジデリン沈着)が2つ以上、または1つ以上に加えて白質の所見(半卵円中心の高度な血管周囲腔拡大、多発斑状の白質高信号)があれば「probable CAA」とし、剖検例を基準とした感度は74.5%、特異度は95.0%と報告されています(Charidimou 2022)。
皮質下出血の診断は?画像所見は?
皮質下出血の診断は、他の脳出血と同様に、頭部CT検査が基本となります。
出血はCTで白く見える(高吸収)のが特徴です。
CTで脳アミロイドアンギオパチーを疑う特徴
脳葉型の出血62例を剖検と照らし合わせた研究では、中等度以上の脳アミロイドアンギオパチーに関連した出血で、次の所見が多くみられました(Rodrigues 2018)。
| 所見 | 中等度以上のアミロイドアンギオパチーあり | なし・軽度 |
|---|---|---|
| くも膜下腔への出血の広がり | 89% | 42% |
| 血腫の縁から指のように伸びる突起(finger-like projections) | 39% | 0% |
この2つに遺伝子型(APOE ε4)を加えた「Edinburgh基準」は、CTでアミロイドアンギオパチー関連の出血を見分ける目安として使われます(Rodrigues 2018)。
高血圧以外を疑う皮質下出血:年齢と画像の手がかり
皮質下出血では、高血圧の既往があっても、血腫のかげに別の病気が隠れていないかを考えます。年齢と画像の特徴から、次のように整理できます。
| 原因 | 疑う場面 | 画像の手がかり |
|---|---|---|
| 脳アミロイドアンギオパチー | 高齢、脳葉に何度も出血 | 上に述べた、くも膜下腔への出血の広がりや指状の突起。MRIで脳葉の微小出血や脳表のヘモジデリン沈着 |
| 脳動静脈奇形(AVM) | 若い人 | 血腫のそばの異常な血管(ナイダス)。MRIのT2強調像で蜂の巣状の低信号、造影CT・MRI・血管撮影で確認 |
| 海綿状血管腫 | 高血圧がなく原因がはっきりしない出血 | 血腫が吸収されたあと、MRIで周囲にヘモジデリンの黒い縁をもつ病変が残る |
| 腫瘍内出血(脳転移・悪性神経膠腫など) | がんの既往、血圧が高くないのに出血 | 血腫の大きさの割に周りのむくみ(浮腫)が強い、血腫のわきに造影される結節、多発する出血 |
| 脳静脈洞血栓症 | 若い人、妊娠・出産後、脱水など | 静脈洞が白く(高吸収に)見える、出血が静脈の流れに沿って複数にわたる、CT静脈造影・MR静脈造影で静脈洞が欠ける |
| 外傷・抗血栓薬・出血しやすい病気 | 頭を打った、薬を内服している | 脳挫傷のパターン、薬の内服歴・採血で確認 |
- 血管の評価はどのくらい必要か:自然な脳内出血203人でCT血管造影を行うと、血管病変が見つかったのは11人(5.4%)でした(動静脈奇形4・動脈瘤4など)。血管病変がある人は、脳葉に出血があり、若い傾向がありました。そのため、全員ではなく、脳葉の出血・若い人・高血圧がない人などで追加の血管評価を考える方法が支持されています(Kjølhede 2024)。
- 静脈洞血栓症を見逃さない:脳静脈・静脈洞の血栓症の624人のうち、診断時に脳内出血があったのは245人(39%)でした(Girot 2007)。若い人の皮質下出血で、頭痛が続くなど、血圧で説明しにくい経過があれば、静脈の評価を考えます。
- 初回で原因が分からないとき:血管撮影や造影MRIでも原因が見つからなかった18〜45歳の脳内出血9例では、摘出した組織の検査で7例に原因(隠れたAVM3・海綿状血管腫3・腫瘍1)が見つかったという報告があります(Elhammady 2008)。血腫が大きいうちは病変が隠れやすいため、血腫が小さくなった時期(数週〜3か月後)に画像を撮り直す対応が一般的とされています(同報告)。
症例 50歳代女性 右上肢痺れ、失語(高血圧性皮質下出血)

頭部単純CTの横断像(輪切り)の画像です。
左の頭頂葉皮質下に出血を認めています。
高血圧性皮質下出血と診断されました。
症例 90歳代女性 高血圧性皮質下出血

右の前頭葉に白い塊があります。皮質下出血です。
軽度左側への正中構造の偏位を認めています。
症例 60歳代女性 頭痛、左不全麻痺

左側の画像は頭部CTです。右頭頂葉を中心に広範な皮質下出血を認めています。
右側の画像は血腫除去術後に撮影された頭部MRIのT2強調像の画像です。
血腫の内側にはnidus(ナイダス)を疑う血管構造を認めています。
脳動静脈奇形による脳出血(皮質下出血)と診断されました。
症例 50歳代男性

頭部CTで右の側頭葉に皮質下出血を認めました。
MRIのT2強調像で蜂の巣状の低信号を認めており、ナイダスを疑う所見です。
脳動静脈奇形(AVM)による脳皮質下出血と診断されました。
症例 50歳代女性 左上肢筋力低下

右の頭頂葉から前頭葉にかけて皮質下出血を認めています。
前頭葉の中心前回に出血が及んでいるため、筋力低下(麻痺)の症状が現れていると考えられます。
皮質下出血はどんな治療法が行われる?
高血圧性の皮質下出血の治療法について解説します。
非高血圧性の場合はその原因疾患ごとに異なります。
手術を考えるかどうかには、意識の状態や血腫の大きさに加えて、血腫が脳の表面からどれくらい深いかが関わります。
脳表から深い位置に血腫がある場合
内科的治療が行われることになります。
手術によって血腫を取り除くのではなく、降圧薬による血圧の管理を中心に保存的に加療されます。
脳表に近い(浅い)位置に血腫がある場合
皮質下出血は、大脳皮質のすぐ下で出血するものです。
深さが浅い場合は手術が検討されることがあり、方法は2パターンあります。
頭を開き血腫を取り除く開頭血腫除去術、もしくは小さな穴を開け血腫を吸引して取り除く吸引手術です。
意識が保たれ脳室内出血のない、脳表に近い脳葉型出血(10〜100mL)を対象とした国際的な比較試験(STICH II)では、早期手術は初期の保存的治療と比べて6か月後の死亡や障害を増やさず、生存にわずかな利点がある可能性が示されました(Mendelow 2013)。さらに、発症24時間以内の脳葉型または前方の基底核の出血(30〜80mL)300例を対象とした比較試験(ENRICH)では、小さな穴から行う低侵襲の血腫除去を加えた群で180日後の機能的な転帰が良く、その効果は脳葉型出血で認められました。30日以内の死亡は手術群9.3%、内科治療のみの群18.0%でした(Pradilla 2024)。どの患者さんに手術を行うかは、症状や血腫の状態をみて個別に判断されます。
皮質下出血の予後は?後遺症は?
皮質下出血を起こした時の症状が、治療後も残る場合が多くあります。
それは、麻痺や運動障害、めまい等のものが多く、一度損傷してしまった脳は元には戻らないからです。
ですが、時間の経過と共にリハビリを行うことによって回復も見られます。
諦めずに続けることが回復への第一歩です。
そして、医師の指示のもと薬を飲み、再発予防に気をつけることも重要です。
脳アミロイドアンギオパチーが原因の脳出血は再発しやすく、10研究1306人のメタ解析では、年間の再出血率がアミロイドアンギオパチー関連の脳出血で7.4%、関連しない脳出血で1.1%でした。MRIで微小出血が多い人ほど再出血が多い傾向がありました(Charidimou 2017)。
皮質下出血でよくある疑問(Q&A)
Q. 皮質下出血は脳のどこに起こりますか?
A. 大脳の表面(皮質)のすぐ内側の白質に起こり、前頭葉・頭頂葉・側頭葉・後頭葉のいずれにも起こります。被殻出血や視床出血のような脳の奥の出血とは場所が違い、そのため原因も高血圧以外を考える必要があります。
Q. 皮質と皮質下は何が違うのですか?
A. 皮質は脳の表面の灰白質(神経細胞の層)、皮質下はそのすぐ内側の白質(神経線維の層)です。「皮質下出血」は白質の浅いところの出血を指します。
Q. 皮質下出血は手術が必要ですか?
A. 小さな出血や脳の深いところの出血は、血圧の管理を中心とした内科治療が基本です。脳の表面に近い大きめの出血では、意識の状態や血腫の大きさを見て手術が検討されます。
Q. 皮質下出血で血圧が高くなければ、何を疑いますか?
A. 若い人ならAVMや海綿状血管腫、高齢者なら脳アミロイドアンギオパチー、そのほか腫瘍内出血、静脈洞血栓症、抗血栓薬の影響などを考え、MRIや血管の検査を追加します。
Q. 脳腫瘍が原因の出血は、CTで見分けられますか?
A. 血腫の大きさに比べてむくみが強い、血腫のわきに造影される結節がある、複数の場所に出血があるときは腫瘍を疑います。確定には造影MRIなどで血腫が小さくなってからの再確認が必要になることがあります。
突然の頭痛、手足のまひ、言葉の障害、けいれんなどがあれば、すぐに医療機関(救急)を受診してください。
参考文献
- Greenberg SM, Ziai WC, Cordonnier C, et al. 2022 Guideline for the Management of Patients With Spontaneous Intracerebral Hemorrhage: A Guideline From the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke. 2022;53(7):e282-e361. PubMed
- Charidimou A, Boulouis G, Frosch MP, et al. The Boston criteria version 2.0 for cerebral amyloid angiopathy: a multicentre, retrospective, MRI-neuropathology diagnostic accuracy study. Lancet Neurol. 2022;21(8):714-725. PubMed
- Broderick J, Brott T, Tomsick T, et al. Lobar hemorrhage in the elderly. The undiminishing importance of hypertension. Stroke. 1993;24(1):49-51. PubMed
- Rodrigues MA, Samarasekera N, Lerpiniere C, et al. The Edinburgh CT and genetic diagnostic criteria for lobar intracerebral haemorrhage associated with cerebral amyloid angiopathy: model development and diagnostic test accuracy study. Lancet Neurol. 2018;17(3):232-240. PubMed
- Mendelow AD, Gregson BA, Rowan EN, et al. Early surgery versus initial conservative treatment in patients with spontaneous supratentorial lobar intracerebral haematomas (STICH II): a randomised trial. Lancet. 2013;382(9890):397-408. PubMed
- Pradilla G, Ratcliff JJ, Hall AJ, et al. Trial of Early Minimally Invasive Removal of Intracerebral Hemorrhage. N Engl J Med. 2024;390(14):1277-1289. PubMed
- Charidimou A, Imaizumi T, Moulin S, et al. Brain hemorrhage recurrence, small vessel disease type, and cerebral microbleeds: A meta-analysis. Neurology. 2017;89(8):820-829. PubMed
- Kjølhede M, Hjort N, Homburg S, et al.. Diagnostic yield of computed tomography angiography in patients presenting with spontaneous intracerebral hemorrhage. Acta Radiol. 2024;65(7):817-824. PubMed
- Girot M, Ferro JM, Canhão P, et al.. Predictors of outcome in patients with cerebral venous thrombosis and intracerebral hemorrhage. Stroke. 2007;38(2):337-42. PubMed
- Elhammady MS, Baskaya MK, Heros RC. Early elective surgical exploration of spontaneous intracerebral hematomas of unknown origin. J Neurosurg. 2008;109(6):1005-11. PubMed
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