先に結論:脳MRAの正常解剖ツール

  • 頭部MRAで内頸動脈の区分(C1〜C5)・前大脳/中大脳/後大脳動脈・椎骨脳底動脈系の名前を、カーソルを合わせて確認できるツールを紹介しています
  • 後交通動脈・前脈絡動脈・外側線条体動脈など見えにくい細い血管も描出されています
  • 動脈瘤や狭窄の場所を正しい名前で伝える練習に役立ててください
  • 内頸動脈の床上部は、海綿静脈洞を出て頭蓋内(くも膜下腔)に入った部分で、眼動脈・後交通動脈・前脈絡動脈が出ます

脳血管MRAの正常解剖ツール

headMRA

いくつかリリースしているツールの中でも大人気の脳MRI正常解剖ツールの続編ということで、脳血管MRAの正常解剖ツールをリリースしました。
→脳MRAの正常解剖ツールはこちら。

3テスラのMRI装置を用いて撮影された30歳代の正常男性例で作成しました。

特に解剖名を忘れがちな

  • 内頚動脈のC1-5の解剖、
  • 床上部(C1,C2)、
  • 海綿静脈洞部(C3,4) 
  • 三叉神経節部・錐体部(C5)、
  • 頸部(頭蓋外のためFischer分類の番号はない)

といったところにも対応しています。なお、C1〜C5はFischer(1938)の分類で、血流と逆向きに番号が振られ、頭蓋外の内頸動脈は含まれません。血流の向きにC1頸部・C2錐体部・C3破裂孔部・C4海綿静脈洞部・C5床突起部・C6眼動脈部・C7交通部と番号を付けるBouthillier分類(1996)もあるため、所見ではどちらの分類かを明記すると誤解を防げます。

headMRA1

中大脳動脈は、M1とM2以降。後大脳動脈は、P1とP2以降という分類で表現しています。それ以上細い分類はしておりません。なお、3D-TOF MRAで150人を調べた研究では、ウィリス動脈輪が前半部・後半部とも完全にそろっていたのは42%(前半部の完全例74%、後半部52%)にすぎませんでした。後交通動脈やA1の低形成・欠損はよくある正常変異なので、MRAで細い血管が見えなくてもすぐに異常と判断しないことが大切です。

割と細い血管が見易い症例を選びましたので、

  • 後交通動脈
  • 前脈絡動脈(AchA)
  • 外側線条体動脈(LSA)

といったなかなか見にくい血管も描出されています。

これまでと同様に、知りたい解剖名にカーソルを合わせるだけで、解剖名を教えてくれる仕様にしています。

※脳血管MRA正常解剖ツールは一般公開はしませんのでご覧いただくには登録が必要です。
→→脳MRAの正常解剖ツールはこちら。

どう動くは動画を参照ください。

内頸動脈の区分(C1〜C5)と床上部の位置

MRAで内頸動脈を見るときは、頸部から頭蓋内へ向かって次の順に走行を追います。

部位 Fischer分類(本ツール) Bouthillier分類 MRAでの見え方・主な枝
頸部 (含まれない) C1 cervical 総頸動脈分岐部から頭蓋底まで、ほぼまっすぐ上行
錐体部(petrous portion) C5付近 C2 petrous 側頭骨の頸動脈管の中を、上行してから前内側へ水平に曲がる
破裂孔部 C5付近 C3 lacerum 破裂孔の上を通る短い部分
海綿静脈洞部 C3・C4(C5の一部) C4 cavernous トルコ鞍の横でS字に曲がる。いわゆるサイフォン部
床突起部 C3付近(膝部) C5 clinoid 前床突起の内側の短い部分
床上部(supraclinoid portion) C1・C2 C6 ophthalmic・C7 communicating 眼動脈、後交通動脈、前脈絡動脈が出て、前大脳動脈と中大脳動脈に分かれる
  • Fischer分類(1938年)は血管撮影での走行をもとにした区分で、血流と逆向きに番号が振られ、頭蓋外の内頸動脈は含まれません。Bouthillier分類は内頸動脈全体を周囲の解剖にもとづいて7つに分け、血流の向きに番号を付けています(Bouthillier 1996)。
  • Fischer分類の境界の決め方は文献や施設によって少しずつ違うため、表の対応はおおよその目安です。
  • 「サイフォン」は血管撮影での曲がりを表す歴史的な言葉で、境界の定義が文献ごとに異なるため、解剖学的な区分としては使わないほうがよいとされています(Sanders-Taylor 2014)。

掲載される解剖名

内頸動脈 Internal carotid artery(ICA)
床上部(C1,C2) Supraclinoid portion(C1,2)
海綿静脈洞部(C3,4) Cavernous portion(C3,4)
三叉神経節部(C5) Ganglial portion(C5)
錐体部(C5) Petrous portion(C5)
頸部(頭蓋外・番号なし) Cervical portion(extracranial)
内頸動脈(ICA C1) Internal carotid artery C1(ICA C1)
内頸動脈(ICA C2) Internal carotid artery C2(ICA C2)
内頸動脈(ICA C3) Internal carotid artery C3(ICA C3)
内頸動脈(ICA C4) Internal carotid artery C4(ICA C4)
内頸動脈(ICA C5) Internal carotid artery C5(ICA C5)
眼動脈(OphA) Ophthalmic artery(OphA)
前脈絡動脈(AchA) Anterior choroidal artery(AchA)
前大脳動脈(ACA A1) Anterior cerebral artery A1(ACA A1)
前大脳動脈(ACA A2以降) Anterior cerebral artery A2-(ACA A2-)
中大脳動脈(MCA M1) Middle cerebral artery M1(MCA M1)
中大脳動脈(MCA M2以降) Middle cerebral artery M2-(MCA M2-)
外側線条体動脈(LSA) Lateral striate artery(LSA)
椎骨動脈(VA) Vertebral artery(VA)
脳底動脈 Basilar artery(BA)
後大脳動脈(PCA P1) Posterior cerebral artery P1(PCA P1)
後大脳動脈(PCA P2-) Posterior cerebral artery P2-(PCA P2-)
上小脳動脈(SCA) Superior cerebellar artery(SCA)
後下小脳動脈(PICA) Posterior inferior cerebellar artery(PICA)
前下小脳動脈(AICA) Anterior inferior cerebellar artery(AICA)
前交通動脈(Acom) Anterior communicating artery(Acom)
後交通動脈(Pcom) Posterior communicating artery(Pcom)

脳MRAの正常解剖でよくある疑問(Q&A)

Q. 内頸動脈の床上部とはどこですか?
A. 内頸動脈が海綿静脈洞を出て頭蓋内に入った部分で、前大脳動脈と中大脳動脈に分かれるまでの区間です。Fischer分類のC1・C2、Bouthillier分類のC6・C7にあたります。この部分の動脈瘤はくも膜下出血の原因になります。

Q. 眼動脈はMRAで見えますか?
A. 床上部の始まり付近から前方へ出る細い枝で、3D-TOF MRAでは起始部が見えることがよくあります。見えにくい場合も、すぐに異常とは判断しません。

Q. C1・C2・C3はどの分類の番号ですか?
A. 日本ではFischer分類(C1が頭蓋内の末梢側)がよく使われますが、Bouthillier分類ではC1が頸部です。同じ「C2」でも指す場所が違うため、レポートではどちらの分類かを書くと誤解を防げます。

→脳MRAの正常解剖ツールはこちら。

あわせて読みたい:脳MRA(頭部MRA)の血管名称と略語一覧

参考文献

  1. Bouthillier A, van Loveren HR, Keller JT. Segments of the internal carotid artery: a new classification. Neurosurgery. 1996;38(3):425-432. PubMed
  2. Sanders-Taylor C, Kurbanov A, Cebula H, et al. The carotid siphon: a historic radiographic sign, not an anatomic classification. World Neurosurg. 2014;82(3-4):423-427. PubMed
  3. Krabbe-Hartkamp MJ, van der Grond J, de Leeuw FE, et al. Circle of Willis: morphologic variation on three-dimensional time-of-flight MR angiograms. Radiology. 1998;207(1):103-11. PubMed
  4. Groenheide PJ, Vos IN, Bülow R, et al. Sex-specific anatomical variation of circle of Willis arteries. Neuroimage. 2025;307:121035. PubMed

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