神経線維腫症(neurofibromatosis type1:NF1)
- 母斑症・神経皮膚症候群のうち最多。Ⅱ型より多く、神経線維腫の95%。
- 皮膚の色素沈着症(カフェオレ斑)と皮下腫瘤(全身の皮膚に比較的柔らかい半球状結節)を臨床的特徴とする。これらの皮膚病変に症状は通常ない。
- 以前はvon Recklinghausen病と呼ばれていた。
- 神経外胚葉の形成異常で全人口の1/3,500に発生する。
- 腫瘍抑制遺伝子NF1の変異によって細胞増殖の抑制が不十分となり、さまざまな腫瘍が生じる。
- 神経線維腫が皮下および皮下組織の末梢神経の走行に沿って、神経根から遠位部にいたるあらゆる部位に多発性に生じる疾患。
- 神経系腫瘍、精神薄弱、脊椎の変形、血管性病変などを伴う。
NF1 | NF2 | |
名称 | von Recklinghausen病 | 両側聴神経腫 |
遺伝子 | Chromosome17欠損 | 22欠損 |
頻度 | 90% | 10% |
皮膚 | 結節、カフェオレ斑 | なし |
脳の合併腫瘍 | 過誤腫、神経膠細胞腫など | 髄膜腫、両側聴神経腫 |
後縦隔腫瘍 | 神経線維腫 | 神経鞘腫 |
神経線維腫症Ⅰ型の診断基準
- 6個以上のカフェオレ斑
・思春期以降は直径1.5cm以上。
・思春期以前は直径0.5cm以上。 - 2個以上の神経線維腫または1個以上の網状神経線維腫。
- 腋窩部、鼠径部の色素沈着
- 視神経膠腫
- 2個以上の小結節(虹彩の良性過誤腫)
- 1つ以上の骨病変
・蝶形骨の変形
・長管骨皮質の変形もしくは非薄化 - 1親等家族にNF1あり。
以上の2項目以上を満たす時に、NF1と診断される。
神経線維腫症Ⅰ型の合併症
脳
- 視神経膠腫(optic glioma)
- 脳実質の過誤腫様病変(hamartomatous lesion);白質、基底核、視床、海馬など。3-20歳に好発。10-12歳までに軽度拡大することあり、その後消失する。
腹部骨盤
- 蔓状神経線維腫が最多。
- 神経原性腫瘍:神経線維腫、悪性神経鞘腫(MPNST)、triton tumor、神経節細胞腫
- 神経内分泌腫瘍:カルチノイド腫瘍、褐色細胞腫、傍神経節腫
- 間質系腫瘍:GIST、平滑筋腫、平滑筋肉腫
- 胎児性腫瘍:横紋筋肉腫、神経芽腫、Wilms腫瘍
- その他:大腸癌、胃癌、膵癌、胆道癌。