先に結論:頭蓋底の孔と通るもの(一覧)
| 孔 | 主に通るもの | ポイント |
|---|---|---|
| 正円孔(せいえんこう) | 三叉神経第2枝(上顎神経・V2) | 前後方向に走る→冠状断で丸い穴に見える。翼口蓋窩へ通じる |
| 卵円孔(らんえんこう) | 三叉神経第3枝(下顎神経・V3) | 上下方向。上咽頭の病変が頭蓋内へ広がる通り道 |
| 棘孔(きょくこう) | 中硬膜動脈 | 卵円孔の後外側の小さな孔 |
| 頸動脈管 | 内頸動脈 | 側頭骨の錐体部の中を通る |
| 破裂孔 | (生体では軟骨でふさがり、ほぼ何も貫通しない) | 内頸動脈はその上を通る |
| 翼突管(Vidian管) | 翼突管神経・翼突管動脈 | 正円孔の下内側。翼口蓋窩へ通じる |
| 内耳道 | 顔面神経・内耳神経(蝸牛神経・前庭神経)・迷路動脈 | 側頭骨錐体部。小脳橋角部から内耳へ |
| 頸静脈孔 | 舌咽神経・迷走神経・副神経・内頸静脈(頸静脈球)・下錐体静脈洞 | 頸動脈管の後方 |
| Dorello管 | 外転神経 | 錐体尖の内側。錐体尖炎で外転神経麻痺 |
| 舌下神経管 | 舌下神経 | 後頭顆の上。後頭蓋窩から外へ |
※「卵円孔」は心臓の心房中隔にある胎児期の孔(同じ名前の別の構造)とは別物です。
※「頸動脈孔」は頸動脈管の入口(外頸動脈孔)と出口(内頸動脈孔)のことで、内頸動脈が通ります。
※上の表以外の頭蓋底の主な孔:篩板=嗅神経、視神経管=視神経・眼動脈、上眼窩裂=動眼・滑車・眼神経(V1)・外転神経・上眼静脈、大後頭孔=延髄・椎骨動脈・副神経の脊髄根。三叉神経はV1=上眼窩裂、V2=正円孔、V3=卵円孔と、前から順に別々の孔を通ります。
中頭蓋底を中心として認められる孔
中頭蓋底を中心として認められる孔では
- 正円孔
- 卵円孔
- 棘孔
- 頸動脈管
- 翼突管
- 内耳道
- 頸静脈孔
- Dorello管
- 舌下神経管
を中心に、走行するものと、解剖学的位置を押さえておきましょう。
正円孔
- 海綿静脈洞部-翼口蓋窩を繋ぐ孔。
- 前後方向を走る。なので冠状断で穴として確認できる。
- 通るもの:三叉神経第2枝(V2(上顎神経))(ほかに細い正円孔動脈・導出静脈)


正円孔を通るものは?
- 三叉神経第1枝(眼神経)
- 三叉神経第3枝(下顎神経)
- 三叉神経第2枝(上顎神経)
正解!
不正解...
正解は三叉神経第2枝(上顎神経)です。
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卵円孔
- Meckel腔-咀嚼筋間隙に連続する。
- 上下方向。上咽頭近傍の病変が頭蓋内へ進展するルートとなる。
- 通るもの:三叉神経第3枝(V3(下顎神経))、副硬膜枝(副中硬膜動脈)、導出静脈
▶三叉神経と正円孔、卵円孔の位置関係
- このように三叉神経は脳幹からMeckel腔に入り、3本に分かれる。
- 卵円孔は上下方向にあり、頭蓋内←→外の腫瘍や炎症の進展経路。頭頸部腫瘍の神経周囲進展では、神経の腫大による孔の拡大・破壊はCTで、卵円孔を通ってMeckel腔へ及ぶ進展は冠状断T1強調像で、神経の造影効果は脂肪抑制造影T1強調像で見やすい。神経症状がなくても進展していることがあるので注意する。一方、脳神経の神経鞘腫は発育が緩徐な良性腫瘍のため、境界明瞭で周囲構造を圧排し、骨性の孔を平滑に拡大させる(smooth expansion)のが特徴である。
卵円孔を通るものは?
- 三叉神経第3枝(下顎神経)
- 三叉神経第2枝(上顎神経)
- 三叉神経第1枝(眼神経)
正解!
不正解...
正解は三叉神経第3枝(下顎神経)です。
卵円孔を走行するのは三叉神経第3枝(下顎神経)です。
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棘孔
- 通るもの:中硬膜動脈

棘孔を通るものは?
- 中硬膜動脈
- 上顎動脈
- 内頸動脈
正解!
不正解...
正解は中硬膜動脈です。
棘孔を通るのは中硬膜動脈です。
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頸動脈管
- 通るもの:内頸動脈
- 変異:頸部の内頸動脈が欠損し、拡張した下鼓室動脈などの側副路が中耳を通って錐体部の内頸動脈につながる異所性(aberrant)内頸動脈がある。CTでは頸動脈管の垂直部が欠損(または低形成)し、下鼓室小管の拡大と鼓室内の索状の血管影を認める。中耳の腫瘤(傍神経節腫)と誤って生検すると大出血の危険がある

破裂孔
- 生体では軟骨でふさがっており、厳密には骨の孔ではない(骨と骨のすき間)。
- 内頸動脈は破裂孔を貫通せず、その上を通る。
- 大錐体神経が後外側から入り、深錐体神経と合流して翼突管神経として前方へ出る。
- 何も貫通しない孔だが、上咽頭がんが頭蓋内へ広がる経路になる。上咽頭がん114例のMRIでは31%に中頭蓋窩への進展があり、経路は卵円孔34%、破裂孔17%、頭蓋底の骨破壊17%、蝶形骨洞17%、卵円孔と破裂孔の両方14%でした(Chong 1996)。
翼突管(Vidian管)
- 蝶形骨の翼状突起の付け根を前後に走り、中頭蓋窩(破裂孔付近)と翼口蓋窩をつなぐ。
- 正円孔の下内側にある。冠状断で正円孔と並んで見える。
- 通るもの:翼突管神経(Vidian神経)・翼突管動脈
内耳道
- 側頭骨錐体部にあり、小脳橋角部から内耳へ向かう。
- 通るもの:顔面神経(中間神経を含む)・内耳神経(蝸牛神経・上前庭神経・下前庭神経)・迷路動脈
- 内耳道底では横稜(falciform crest)で上下に分かれ、前上=顔面神経、前下=蝸牛神経、後上=上前庭神経、後下=下前庭神経の配置になる。
頸静脈孔
- 側頭骨錐体部と後頭骨の間、頸動脈管の後方にある。
- 前内側の神経部(pars nervosa):舌咽神経・下錐体静脈洞
- 後外側の血管部(pars vascularis):頸静脈球(内頸静脈)・迷走神経・副神経
- 名前は「神経部・血管部」だが、実際にはどちらにも神経と血管が通る。
Dorello管
- 錐体尖の内側で、上を錐体蝶形靱帯(Gruber靱帯)に覆われた硬膜のすき間。
- 通るもの:外転神経(橋前槽から海綿静脈洞へ)
- 錐体尖炎が外転神経に及ぶとGradenigo症候群(外転神経麻痺など)を起こす。髄膜腫や神経鞘腫の浸潤でも外転神経麻痺の原因になる。
舌下神経管
- 後頭顆と頸静脈結節の間にあり、後頭蓋窩から前外側へ向かう。
- 通るもの:舌下神経(ほかに上行咽頭動脈の硬膜枝・舌下神経管静脈叢)
頭蓋底をつくる骨と、孔の位置の目安
頭蓋底は前頭骨・篩骨・蝶形骨・側頭骨・後頭骨で構成され、前・中・後の3つの頭蓋窩に分けられます。孔は「どの骨にあるか」と一緒に覚えると位置関係が整理できます。
| 骨 | 主な部位 | ここにある主な孔・管 |
|---|---|---|
| 前頭骨 | 前頭蓋窩の底(眼窩の屋根) | (主な孔はなし。篩骨と接する) |
| 篩骨 | 前頭蓋窩の正中(篩板) | 篩板の小孔(嗅神経) |
| 蝶形骨 | 中頭蓋窩の中心(体・大翼・小翼) | 視神経管、上眼窩裂、正円孔、卵円孔、棘孔、翼突管 |
| 側頭骨 | 中頭蓋窩の外側から後頭蓋窩(錐体部) | 頸動脈管、内耳道、頸静脈孔(後頭骨と接する) |
| 後頭骨 | 後頭蓋窩(斜台・後頭顆) | 大後頭孔、舌下神経管、頸静脈孔(側頭骨と接する) |
破裂孔は、蝶形骨・側頭骨の錐体尖・後頭骨の間のすき間です。
頭蓋底の骨髄信号は年齢で変わる(MRIの正常像)
- 斜台や蝶形骨の骨髄は、T1強調像で見ると年齢によって見え方が変わります。小児は造血髄が多く低信号で、成長とともに脂肪髄に置き換わって高信号になります。
- 斜台を正中矢状断のT1強調像で見た201人の検討では、低信号が主体のパターン(Grade I)は10歳未満の92%でみられ、50歳を超えるとほぼ1人を除いて消えていました。斜台と橋の信号の比は男女とも年齢とともに高くなり、男性のほうが高い値でした(Bayramoglu 2003)。
間違えやすいポイント:小児で斜台や蝶形骨の骨髄が低信号に見えるのは、多くは正常です。年齢に合わない範囲の低信号や、境界のはっきりした信号の変化があるときに、骨髄の病気を考えます。T1強調像を見る順番は頭部MRIの読み方も参考にしてください。
頭蓋底の孔でよくある疑問(Q&A)
Q1. CTで孔の左右差や小さな孔が見えるのは異常ですか?
多くは正常のバリエーションです。側頭骨CT 123例では、卵円孔の内側の小さな孔(Vesalius孔)が少なくとも片側に80%でみられ、その左右差は病気を意味しませんでした。棘孔がない人も3.2%いました(Ginsberg 1994)。一方、孔が壊れたように広がっているときは、神経に沿ったがんの広がりを考えます(Caldemeyer 1998)。
Q2. 頭蓋底はどの骨でできていますか?
前頭骨・篩骨・蝶形骨・側頭骨・後頭骨の5つです。前・中・後の頭蓋窩に分かれ、中頭蓋窩の中心が蝶形骨、後頭蓋窩の中心が後頭骨です。正円孔・卵円孔・棘孔は蝶形骨、頸動脈管と内耳道は側頭骨、舌下神経管は後頭骨にあります。
Q3. 子どもの頭蓋底が、MRIのT1強調像で暗く見えるのは異常ですか?
多くは正常です。小児の斜台の骨髄は低信号が主体で、10歳未満の92%がこのパターンでした。加齢とともに脂肪髄に置き換わって明るくなります(Bayramoglu 2003)。
Q4. 上咽頭がんは、どの孔から頭蓋内に広がりますか?
上咽頭がん114例のMRIでは、中頭蓋窩への進展が31%にあり、経路は卵円孔が最も多く(34%)、頭蓋底の骨破壊・破裂孔・蝶形骨洞がそれぞれ17%でした(Chong 1996)。卵円孔を通る神経に沿った進展は、CTで骨破壊がなくても起こるため、MRIで確認します。
あわせて読みたい:頭蓋底・側頭骨の正常変異
参考文献
- Ginsberg LE, Pruett SW, Chen MY, et al. Skull-base foramina of the middle cranial fossa: reassessment of normal variation with high-resolution CT. AJNR Am J Neuroradiol. 1994;15(2):283-291. PubMed
- Caldemeyer KS, Mathews VP, Righi PD, et al. Imaging features and clinical significance of perineural spread or extension of head and neck tumors. Radiographics. 1998;18(1):97-110. PubMed
- Radiopaedia – Foramen lacerum
- Radiopaedia – Pterygoid canal
- Radiopaedia – Internal acoustic meatus
- Radiopaedia – Jugular foramen
- Radiopaedia – Dorello canal
- Radiopaedia – Hypoglossal canal
- Radiopaedia – Aberrant internal carotid artery
- Cochinski R, Agarwal M, Albuquerque J, et al. Anatomy and diseases of the greater wings of the sphenoid bone. Radiographics. 2022;42(4):1177-1195. PubMed
- Skolnik AD, Loevner LA, Sampathu DM, et al. Cranial nerve schwannomas: diagnostic imaging approach. Radiographics. 2016;36(5):1463-1477. PubMed
- Chong VF, Fan YF, Khoo JB. Nasopharyngeal carcinoma with intracranial spread: CT and MR characteristics. J Comput Assist Tomogr. 1996;20(4):563-9. PubMed
- Bayramoglu A, Aydingöz U, Hayran M, et al. Comparison of qualitative and quantitative analyses of age-related changes in clivus bone marrow on MR imaging. Clin Anat. 2003;16(4):304-8. PubMed
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正円孔を走行するのは三叉神経第2枝(上顎神経)です。