心原性脳梗塞とは脳梗塞の中でもどういった特徴があるのでしょうか?
また、画像診断のポイントはどのような点でしょうか?
今回は、心原性脳梗塞についてまとめました。
心原性塞栓症の特徴とは?
指導医
「心原性塞栓症」について見ていきましょう。どのような梗塞でしょうか?
心臓でできた血栓が飛んできて脳の血管に詰まって発症する脳梗塞ですよね。
指導医
その通りです。まずはこちらの動画をご覧ください。
動画で学ぶ心原性塞栓症の基礎
▶キースライド
なるほど。心臓でできた血栓が、飛んで、大きな梗塞を作るというのが特徴ですか?
指導医
その通りです。心原性塞栓症の特徴は以下の通りです。
心原性塞栓症の特徴は?原因は?
- 基礎疾患に心房細動があることが多い。左房・左心耳に血栓形成→脳に飛んで発症する。
- 心房細動は持続的だけでなく、発作性の心房細動でも左心耳血栓形成の原因となるので注意。心房細動が原因として最多であるが、他、
- 洞不全症候群
- 心筋梗塞
- 拡張型心筋症
- うっ血性心不全
- 心臓弁置換術後
- 僧帽弁狭窄症・逸脱症
- 感染性心内膜炎
などが血栓形成の原因となる。
- 大きな塞栓子が動脈分岐部に閉塞をきたす。そのため、日中の活動時に、突然の片麻痺、構音障害、失語などの皮質症状や意識障害などで突然発症する。
- 支配域に一致した境界明瞭な梗塞。皮質を含む。(急に詰まるため、側副路を形成している暇がない。)
- 自然溶解、破砕→末梢を再閉塞することがある。
- 著明な血管性浮腫を示す。
- 再開通により重篤な出血性梗塞をきたしやすい。
- MRAでは血管の途絶、閉塞が典型的。境界明瞭、皮質を含む。
指導医
では、実際の症例を見てみましょう。
動画で学ぶ心原性塞栓症①
左の頭頂葉および島皮質および島下白質にDWI(拡散強調像)で異常な高信号を認めています。
皮質のspareを認めず、塞栓性を疑う所見です。
MRAでは左の中大脳動脈(MCA)のM1の途中から描出を認めていません。
FLAIR像では、左のMCAに異常な高信号を認めており、塞栓性であることを示唆する、Intra arterial signalを認めています。
CT検査では皮質のspareを認めず、境界が明瞭な低吸収と変化しています。
塞栓性を疑う所見です。
発症10日後のCT画像では、梗塞を認めた部位に出血を示唆する高吸収域の出現を認めており、出血性梗塞を疑う所見です。
動画で学ぶ心原性塞栓症②
DWI(拡散強調像)で右の中大脳動脈ー後大脳動脈(MCA-PCA)領域に広範な異常高信号を認めています。
皮質のspareを認めていません。
拡散強調像(DWI)で高信号を認めている部位と一致して、ADCの信号低下を認めています。
MRAでは右の中大脳動脈(MCA)の途絶を認めています。
塞栓性の脳梗塞を疑う所見です。
かなり広い範囲で脳梗塞が起こりますね。脳梗塞の後の脳出血も起こりやすいんですね。
指導医
そうですね。速やかに診断して、加療する必要があります。超急性期の脳梗塞のサインにも注意しましょう。
気づいた点をコメントします。
http://遠隔画像診断.jp/archives/16022
spectacular shrinking deficit(SSD)とは、自然再開通や線溶療法の再開通で、皮質枝の血流が改善し、症状が急激に改善する状態を示すのではなかったでしょうか。
塞栓症が、自然再開通することがある、との記載については、かなりの頻度、中大脳動脈などでは半数近く再開通します。
http://遠隔画像診断.jp/archives/15976
脳梗塞の分類や、治療薬を述べておられます。
あえて rt-PA ではなくて、t-PA と書かれてるのは、生物由良に意味があるのでしょうか?
ガイドラインも rt-PA アルテプラーゼ、と記載しています。
治療薬のところでは、アテローム血栓症の下段に、血栓症、塞栓症、がありますが、これはアテローム血栓性の狭搾部に、塞栓がひっかかったような病態を示すのでしょうか?
そこの、オザグレルの、塞栓症△の記載ですが、豊富な経験を積んだ医師が限られた病態で使用することは想定されますが、添付文書でも、塞栓症は(心原性、血管原性を区別せず)禁忌です。
なお、オザグレル(キサンボン、カタクロット)は、発症数日後でも投与可能という利点があります。
rt-PAの心原性塞栓症◎についてですが、これは血栓親和性のことを書かれているのでしょうか?
rt-PAは、静注も、動注も、心原性塞栓のような大きな梗塞では、効果が期待できません。
心原性のような大きな塞栓が多い、内頸動脈閉塞ですが、ステント型デバイスが治療効果が高くなっています。
私の経験では、rt-PA静注がいちばん著効するのは、穿通枝ラクナ梗塞と思います。
そのほかの記載も、全体として釈然としません。
心原性塞栓にウロキナーゼ〇、という記載も検討が必要かと考えます。
ウロキナーゼは6万単位静注7が保険適応になっており、1990年代頃までに多用、国産t-PAが特許訴訟で負けて使用できない時などは、私も多数例、動注しましたが、いまは臨床現場での使用は皆無です。
ウロキナーゼは、そのような使用に対しても、エビデンスレベルはC1です。
なお、塞栓症については、近時、心原性でもない原因不明なESUSという概念があり、多くの研究者が解明に邁進しており、奥は深いです。
優れた画像診断指針を公開されていますので、聞きかじった情報ではなく、上にも書きましたが、血管内治療などについての情報が、放射線科医にとっても役立つと思います。
コメントいただきありがとうございます。
該当箇所を削除しました。
また治療方法によっては、治療に精通しておりませんので、ガイドラインをリンクしました。