先に結論:アテローム血栓性梗塞の3つの機序
- アテローム血栓性脳梗塞(太い動脈の動脈硬化が原因)は、血栓性・塞栓性(動脈原性塞栓)・血行力学性のどの機序でも起こります
- 動脈原性塞栓(artery-to-artery)はプラークの血栓が末梢に飛ぶもので、同じ血管領域に小さな梗塞が散在します。血行力学性は血圧低下などで境界領域(分水嶺)に梗塞が起こります
- 境界領域梗塞は表在型(皮質の分水嶺)と深部型(白質の分水嶺)に分けられ、どちらも頸動脈や中大脳動脈の高度狭窄を探すきっかけになります
- 分水嶺梗塞(境界領域梗塞)は脳梗塞の約10%を占め(Mangla 2011)、深部型はMRIで放線冠〜半卵円中心に数珠状に並ぶ梗塞として見えることが多いのが特徴です(Yong 2006)
脳梗塞の中でもアテローム血栓性梗塞とはどのような脳梗塞でしょうか?
ややこしいですが、アテローム血栓性梗塞は血栓性、塞栓性、血行力学性にさらに分けられます。
これらの違いについてまとめました。
アテローム血栓性梗塞の分類
実は、アテローム血栓性梗塞には分類があります。
その前に、もう一度脳梗塞の分類を見てみましょう。
脳梗塞の分類
a.発症機序による分類
- 血栓性
- 塞栓性
- 血行力学的
b.臨床カテゴリーによる分類
- アテローム血栓性
- 心原性塞栓
- ラクナ
- その他
心原性塞栓は心臓から血栓が詰まるからわかりやすいですが。
今は、bの臨床カテゴリーによる分類を①〜③まで順番に説明している途中ですが、発生機序による分類もあるんです。
そして、今説明しているアテローム血栓性というのは、このどの機序でも起こるということです。
- 血栓性、
- 塞栓性、
- 血行力学性
のいずれの機序でも起こるということですか?

関連記事)【保存版】アテローム血栓性脳梗塞とは?症状、画像、治療法まとめ!
アテローム血栓性脳梗塞(塞栓性の場合)

このような動脈のプラークから血栓が飛ぶことを、動脈原性梗塞(artery-to-artery infarction)と呼びます。
アテローム血栓性脳梗塞(血行力学性の場合)
境界領域梗塞ともよばれ、具体的には名前の通り、
- 前大脳動脈(ACA)と中大脳動脈(MCA)
- 中大脳動脈(MCA)と後大脳動脈(PCA)
の境界領域に起こります。
お腹の血管もそうですが、いざというときに端っこというのはつい虚血になりがちです。
ところが限界を超えてしまうと、血流が届かなくなってしまうのです。
特に、起立性低血圧や心原性ショックなどで血圧が低下すると起こりやすくなります。
- MCAとACAの灌流域の分水嶺やMCAとPCAの分水嶺などの表在型
- 大脳深部に生じる深部型
にさらに分類されます。
そして、表在型では塞栓性機序によるもの(artery-to-artery embolism)がかなり含まれています。

つまり、上の図の表在型の境界領域に生じた脳梗塞をみたときには、
- 血行力学性機序によるもの
- 塞栓性機序によるもの
の2つの可能性があるということですか?
その通りです。ですので、MRIの画像だけでは病型を診断できないことも多々あります。
ただし、何も知らないで、「脳梗塞あります!」で終わるのではなく、これらを知った上で、画像を読むようにしましょう。
それでは境界領域梗塞の実際の症例を見てみましょう。
動画で学ぶ境界領域梗塞
※動画の最初の左前頭葉深部白質→右!ですね。
▶キー画像
境界領域梗塞=分水嶺梗塞のまとめ
皮質型分水嶺:皮質枝領域間
・ACAとMCA(前方型)、MCAとPCA(後方型)、ACAとMCAとPCAの境界。
・塞栓性(特にA-to-A)が多い。
深部型分水嶺:穿通枝領域間
・高位放線冠から半卵円中心にかけて:外側線条体動脈と皮質枝の境界。
・血行力学性が多いとされる。境界領域梗塞は全脳梗塞の約10%を占め(Mangla 2011)、深部型(内側型)は主に血行力学的な灌流低下、皮質型(外側型)は主に塞栓によると考えられています。頭蓋内狭窄の内科治療群(SAMMPRIS)の解析では、境界領域梗塞があり狭窄より末梢の側副血行が乏しい患者の脳卒中再発率は37%と最も高かった(Wabnitz 2019)。境界領域梗塞を見たら、責任血管の狭窄と側副血行の評価まで進めることが大切です。

表在型と深部型の分水嶺梗塞の違い(比較表)
| 表在型(皮質型・外側型) | 深部型(内側型) | |
|---|---|---|
| 場所 | ACAとMCA、MCAとPCAの皮質枝の境界 | 放線冠〜半卵円中心(穿通枝と皮質枝の境界) |
| 主な機序 | 塞栓性(artery-to-artery)の関与が大きい | 血行力学性(灌流低下) |
| MRI(拡散強調像) | 小さな皮質梗塞を伴うことが多い | 数珠状(rosary-like)に並ぶ梗塞が多い |
| 血管の状態 | 深部型のほうが中大脳動脈・内頸動脈の高度狭窄や閉塞を伴うことが多い | |
| 経過 | 深部型のほうが入院後1週間以内の症状悪化と3か月後の転帰不良が多い | |
中大脳動脈領域の脳梗塞946例から表在型75例・深部型45例を比べた報告にもとづきます(Yong 2006)。
分水嶺梗塞・アテローム血栓性梗塞でよくある疑問(Q&A)
Q. 分水嶺梗塞とは何ですか?どこにできますか?
A. 2つの主な動脈の灌流域の境目(分水嶺)にできる脳梗塞です。境目は血流の末端にあたるため、血圧低下や高度狭窄で灌流が落ちると虚血になりやすいと考えられています(Mangla 2011)。場所はACA・MCA・PCAの皮質の境目(表在型)と、大脳深部の白質(深部型)です。手足のまひやしびれ、言葉が出にくいなどの症状が急に出たときは、すぐに医療機関を受診してください。
Q. artery-to-artery embolism(動脈原性塞栓)とは?
A. 動脈硬化のプラークにできた血栓などが、より末梢の動脈に流れて詰まるものです。症状のある頭蓋内動脈狭窄136例の検討では、画像から推定される機序として最も多く(50.7%)、灌流低下だけによるものは8.8%でした(López-Cancio 2014)。
参考文献
- Mangla R, Kolar B, Almast J, et al. Border zone infarcts: pathophysiologic and imaging characteristics. Radiographics. 2011;31(5):1201-1214. PubMed
- Adams HP Jr, Bendixen BH, Kappelle LJ, et al. Classification of subtype of acute ischemic stroke. Definitions for use in a multicenter clinical trial. TOAST. Trial of Org 10172 in Acute Stroke Treatment. Stroke. 1993;24(1):35-41. PubMed
- Amarenco P, Bogousslavsky J, Caplan LR, et al. The ASCOD phenotyping of ischemic stroke (Updated ASCO Phenotyping). Cerebrovasc Dis. 2013;36(1):1-5. PubMed
- Wabnitz AM, Derdeyn CP, Fiorella DJ, et al. Hemodynamic Markers in the Anterior Circulation as Predictors of Recurrent Stroke in Patients With Intracranial Stenosis. Stroke. 2019;50(1):143-147. PubMed
- Müller H, Fisch L, Viaccoz A, et al. Embolic and Hemodynamic Transcranial Doppler Characteristics in Patients with Acute Ischemic Stroke due to Carotid Occlusive Disease: Contribution to the Different Infarct Patterns on MRI. J Neuroimaging. 2015;25(5):766-75. PubMed
- Yong SW, Bang OY, Lee PH, et al. Internal and cortical border-zone infarction: clinical and diffusion-weighted imaging features. Stroke. 2006;37(3):841-6. PubMed
- López-Cancio E, Matheus MG, Romano JG, et al. Infarct patterns, collaterals and likely causative mechanisms of stroke in symptomatic intracranial atherosclerosis. Cerebrovasc Dis. 2014;37(6):417-22. PubMed
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