クリプトコッカスの脳病変

  • 鳥類(主にハト)の糞から経気道性に感染→肺感染→血行性に頭蓋内へ移行。よって、感染臓器は主に肺と中枢神経系。
  • 中枢神経では、まず髄膜に感染→髄膜内小血管の壁を浸潤→くも膜下腔→穿通枝の血管周囲から脳内へ進展。
  • 髄膜炎が主体だが、半数では脳病変を生じる。
  • 脳実質、髄膜に大小の肉芽腫性病変を形成する。
  • 症状は、頭痛、発熱、倦怠感など非特異的なことが多い。
  • AIDS指標疾患の1つであるが、健常者にも認められる。
  • 30-50%の患者が、白血病、悪性リンパ腫、糖尿病、AIDSなどの基礎疾患あり。
  • AIDS患者の中枢神経系感染症としてはHIV脳症、トキソプラズマ脳症に次いで多い。
  • CD4陽性リンパ球<100μLで発症する。
  • 真菌感染では最も頻度が高い。
  • 脊髄病変はまれ。

クリプトコッカスの脳病変の3大病変

  • ①髄膜炎
  • ②肉芽腫病変(Cryptococcoma)
  • ③ゼラチン性偽嚢胞(cryptococcal gelatinous pseudocyst)

おおまかに、髄膜→血管周囲から脳内へ進展する。
なので、髄膜病変、血管病変、脳内病変を形成する。

それぞれ、
・髄膜病変:髄膜炎、肉芽腫形成
・血管病変:血管炎→脳梗塞
・脳内病変:ゼラチン性偽嚢胞・肉芽腫
と考える。

肉芽腫病変(Cryptococcoma)

  • 肉芽腫は脳実質や軟膜、脈絡叢にみられる。
  • T1強調像で低信号、T2強調像で高信号を示す。菌体からの代謝物である鉄イオン、マンガンによりT2強調像で低信号を呈する場合がある。
  • 造影では結節状あるいはリング状の増強効果がみられる。
  • ゼラチン様偽嚢胞と異なり、周囲に浮腫がみられる。

症例 60歳代男性 複視、発熱、頭痛

引用:radiopedia

小脳の脳溝沿いに広範な造影効果(PS pattern)を認めています。

関連記事:髄膜の異常増強効果とは?DA pattern/PS patternとは?

右基底核にも血管周囲腔経由で進展したと考えられる造影効果があり、同部はT2WIで高信号を示しています。

脳底槽に軟髄膜に沿った造影効果を認めています。こちらもPS patternの造影効果です。

また、右基底核では血管周囲腔経由で進展したと考えられる造影効果を認めています。

クリプトコッカス髄膜炎と診断されました。

ゼラチン性偽嚢胞(cryptococcal gelatinous pseudocyst)

  • クリプトコッカスの集合とゼラチン様被膜でできた構造で、造影されない嚢胞性病変。
  • 基底核、中脳に両側性に嚢胞が形成される。
  • 血管周囲腔拡大に似た所見となるが、FLAIR像で高信号となる点で鑑別できる。(髄液よりも高信号となる。)
  • 多くは両側性、形態は類円形で、時に癒合してsoap bubble appearanceと称されることもある。
  • T2WI高信号、T1WIは粘稠度によって低信号〜中間信号。増強効果、浮腫、占拠効果はない。ただし免疫正常例ではリング状に染まることあり。
  • 粘液様物質を反映し、拡散強調画像で高信号を呈し、ADC値は低下する。

症例 成人例

引用:radiopedia

両側基底核にT1WI,T2WI高信号を認めており、中心部はT1WIで低信号、T2WIでは高信号を示す。造影効果は認めない。

髄液からクリプトコッカスが検出され、クリプトコッカスによるゼラチン性偽嚢胞(cryptococcal gelatinous pseudocyst)と診断されました。

症例 30歳代男性 体重減少、頭痛、HIV陰性

 

引用:radiopedia

画像は左上からT2WI,FLAIR,T1WI,造影T1WI,DWI,ADC。

左大脳半球の広範に広がる病変で、T2WI高信号だがFLAIRでも高信号で髄液とは異なる液貯留と判断できます。

T1WI低信号で、辺縁のみに造影効果あり、拡散制限は認めません。

手術が施行され、クリプトコッカスによる脳病変と診断されました。

クリプトコッカスの鑑別診断

  • 1、髄膜炎+結節 →癌性髄膜炎
  • 2、肉芽腫性病変 →結核性髄膜炎など
  • 3、血管周囲腔進展 →サルコイドーシス

参考)臨床画像2012年4月増刊 中枢神経系の感染症

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