先に結論:脳の静脈奇形(発達性静脈奇形:DVA)
- 静脈奇形(DVA)は、脳の静脈の生まれつきの走り方の違いで、最も多い脳の血管奇形です。ほとんどが無症状で、MRIで偶然見つかります
- 造影MRIで放射状に集まる細い静脈(メドゥーサの頭)が1本の太い静脈に流れ込む形が特徴です。この静脈は正常な脳の血液を流しているため、切除すると静脈性梗塞を起こす危険があり、通常は治療しません
- 海綿状血管腫(出血の原因)を合併することがあるため、SWI・T2*強調像で周囲の出血を確認します。動静脈奇形とは異なり、早期に静脈が描出される動静脈短絡はありません
静脈奇形/静脈性血管腫(venous malformation/angioma)
- 動脈は正常で、静脈に特異な構造を有する疾患。
- 胎児期の脳静脈系の発達異常。
- venous angioma、venous malformation、developmental venous anomaly(DVA)、medullary venous malformations(MVM)などの名称がある。venous angiomaが最も有名であるが、最も病態を表しているのは、developmental venous anomaly(DVA)。
- umbrellaあるいはcaput medusaeと呼ばれる放射状の髄質静脈+1本の太い流出静脈を特徴とする。傘の骨が柄に集まる形からumbrella sign(アンブレラサイン)とも呼ぶ。
- 最も多く診断される頭蓋内の血管奇形(Rammos 2009)。連続した頭部造影MRI 1,165件の検討では6.4%にみられた(Gökçe 2014)。
- 多くは単発(75例中65例: Gökçe 2014)。
- 放射状の静脈が集まる部分は深部(脳室近傍)にあることが最も多い(54.5%: Gökçe 2014)。
- ほとんどが無症状。まれに頭痛や痙攣、神経巣症状を伴う出血。流出静脈が血栓で詰まると、静脈性梗塞や出血を起こすことがある(Rammos 2009)。
- 前向き研究では症候性出血は年0.34%と低く、出血例の多くは合併する(血管造影で写らない)海綿状血管奇形によると考えられています。
- 組織学的に、海綿状血管奇形と混在することがある。造影MRIでDVAが見つかった1689例の検討では6.9%に海綿状血管奇形が合併し、その頻度は10歳以下の0.8%から70歳超の11.6%へと年齢とともに増加していた。このことから、DVAに伴う海綿状血管奇形は後天的に生じると考えられている。
- 通常単発ならば無治療。切除術が静脈性梗塞の原因となる事がある。
画像診断
- T2WIでflow voidとして低信号の血管が見られる。ただし血流がかなり遅い場合には高信号になることもある。
- 流出域の脳実質に萎縮や白質信号変化などの異常を伴うことが多く(84例の検討で65.4%)、白質病変は28.3%、出血は2.4%と報告されている。
- 造影MRIで造影されて、特徴的な構造(放射状の細かな静脈が1本の太い静脈に集まる)を認める。
- 流出静脈は硬膜静脈洞、上衣下静脈に流入する。
- 動静脈奇形との鑑別が問題となるが、静脈奇形は拡張した血管は1本で直線的である点で鑑別できることが多い。
DVA・海綿状血管腫・動静脈奇形(AVM)のMRIの違い
| DVA(静脈性血管腫) | 海綿状血管腫 | 動静脈奇形(AVM) | |
|---|---|---|---|
| 形 | 放射状の細い静脈+1本の太い流出静脈 | ポップコーン状の塊、周囲に黒い縁(出血の跡) | 血管の塊(ナイダス)と太い流入動脈・流出静脈 |
| 動静脈短絡 | なし | なし | あり(早期に静脈が写る) |
「静脈奇形(venous malformation)」という言葉の注意
- 脳のDVAは、昔の呼び名「静脈奇形」「静脈性血管腫(venous angioma)」で呼ばれることがありますが、顔・首・手足などの皮膚や筋肉にできる「静脈奇形(venous malformation)」は別の病気です。
動画で学ぶ静脈奇形(70歳代女性)
脳の静脈奇形(DVA)でよくある疑問(Q&A)
Q. 脳ドックでDVA(静脈性血管腫)と言われました。脳外科で治療が必要ですか?
A. 多くは治療不要で、手術の危険が経過観察の危険を大きく上回るとして経過観察が勧められています(McLaughlin 1998)。急な強い頭痛・けいれん・まひなどがあれば早めに受診してください。
参考)
- 画像診断ポケットガイド 脳Top100診断 百島祐貴先生
- よくわかる脳MRI 青木 茂樹先生
参考文献
- Rammos SK, Maina R, Lanzino G. Developmental venous anomalies: current concepts and implications for management. Neurosurgery. 2009;65(1):20-9. PubMed
- McLaughlin MR, Kondziolka D, Flickinger JC, et al. The prospective natural history of cerebral venous malformations. Neurosurgery. 1998;43(2):195-200. PubMed
- San Millán Ruíz D, Delavelle J, Yilmaz H, et al. Parenchymal abnormalities associated with developmental venous anomalies. Neuroradiology. 2007;49(12):987-95. PubMed
- Brinjikji W, El-Masri AE, Wald JT, et al. Prevalence of cerebral cavernous malformations associated with developmental venous anomalies increases with age. Childs Nerv Syst. 2017;33(9):1539-1543. PubMed
- Rinaldo L, Lanzino G, Flemming KD, et al. Symptomatic developmental venous anomalies. Acta Neurochir (Wien). 2020;162(5):1115-1125. PubMed
- Gökçe E, Acu B, Beyhan M, et al. Magnetic resonance imaging findings of developmental venous anomalies. Clin Neuroradiol. 2014;24(2):135-43. PubMed
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