頭部に外傷を受けた場合、頭蓋骨骨折を伴うことがあります。
そして骨折の形状(種類)として、線状骨折・陥没骨折 があり、骨折が起こる部位により、円蓋部(えんがいぶ)骨折・頭蓋底(ずがいてい)骨折と分けられます。
今回はその中でも、頭蓋底骨折(Basal skull fracture)について
- 症状
- 診断・画像所見
- 治療法
など、イラストと実際のCT画像を交えて、わかりやすく解説します。
先に結論:頭蓋底骨折とバトル徴候・パンダの目徴候
- 頭蓋底骨折は、頭の骨の底の部分(前頭蓋底・中頭蓋底・後頭蓋底)の骨折です。骨が薄く複雑な形のため、CTでも骨折線が見えにくいことがあり、次のような体の表面のサインが診断の手がかりになります
- パンダの目徴候(ブラックアイ・眼鏡様血腫):両目のまわりが紫色になる→前頭蓋底骨折を疑う。鼻から髄液が出る(髄液鼻漏)・においがわからないこともあります
- バトル徴候(Battle sign):耳の後ろ(乳様突起の上)の皮膚が青紫色になる→中頭蓋底(側頭骨・錐体骨)の骨折を疑う。耳からの出血・髄液耳漏、聴力低下、顔面神経まひを伴うことがあります。これらの皮下出血は受傷直後には目立たず、時間がたってから現れることがあります
- CTでは骨条件の薄いスライスで骨折線を探し、副鼻腔や乳突蜂巣の液体、頭蓋内の空気(気脳症)も間接的なサインになります。髄液漏れからの髄膜炎に注意します
頭蓋底骨折とは?
脳は非常に重要な臓器であり、骨の中に収まっていますが、周りには髄液があり、外傷を受けた場合の損傷を最小限に抑えるような構造になっています。
イメージイラストでは下のようになります。

実際のCT画像で見てみると、次のようになります。

動画で解説しました。
頭蓋骨が外傷を受けた際に、骨折を起こすことがありますが、これを頭蓋骨骨折といいます。
頭蓋骨骨折は、上のように骨折部位により、
- 主に頭のてっぺんに位置する→円蓋部(えんがいぶ)骨折
- 顔面・頭部の最深部に位置する→頭蓋底(ずがいてい)骨折
に分けられます。
頭蓋底骨折とはその顔面・頭部の最深部である頭蓋骨の底部分に起こる骨折で、種類としては線状骨折となります。
頭蓋底骨折は、頭蓋円蓋部の骨折が伸びて起こることの多い骨折で、その他の原因として、下顎への打撃や尻もちによって脊柱と後頭蓋底がぶつかり起こることもあります。
頭蓋底骨折の好発部位は?
頭蓋底は下のように前頭蓋底・中頭蓋底・後頭蓋底に分けることができます。

この中でも骨折が好発する部位は以下の通りです。
- 前頭蓋底(篩板・視神経管・前頭洞)
- 中頭蓋底(錐体骨)
後頭蓋底骨折は非常に稀ですが、脳幹部を損傷していることが多い為、死亡率が高くなっています1)。
それぞれには、以下の脳神経があります。
| 前頭蓋底 | Ⅰ嗅神経 |
| 中頭蓋底 | Ⅱ視神経・Ⅲ動眼神経・Ⅳ滑車神経・Ⅴ三叉神経・Ⅵ外転神経 |
| 後頭蓋底 | Ⅶ顔面神経・Ⅷ内耳神経・Ⅸ舌咽神経・X迷走神経・XI副神経・XII舌下神経 |
頭蓋底骨折の症状は?
上に述べたように頭蓋底骨折では、骨折部位により
- 前頭蓋底
- 中頭蓋底
- 後頭蓋底
とに分けられます。
それぞれ部位によって症状が異なりますので、分けて説明します。
前頭蓋底
- 頭痛
- 目眩
- 眼鏡状出血
- 髄液鼻漏
- 持続性鼻出血
- 嗅覚障害
- 視力悪化

臨床所見として、
- 気脳症
- パンダ目のような眼鏡状皮下出血(ラクーン・アイ(raccoon eye))
- 髄液鼻漏
- 鼻血
などが確認できます。
中頭蓋底
- バトル徴候(Battle徴候)
- 髄液耳漏
- 持続性耳出血
- 顔面神経麻痺
- 感音性難聴(耳鳴り・聴力低下)

臨床所見として、
- 気脳症
- 耳介後部の皮下出血(バトル徴候(Battle徴候))
- 髄液耳漏
- 耳出血
が見られます。
後頭蓋底
- 目眩
- 項部・頸部の出血斑
- 咽頭後壁粘膜下出血斑
- 下位脳神経麻痺
- 脳幹損傷(呼吸抑制→致死的)

臨床所見としては、
- 項部・頸部の出血斑
- 咽頭後壁粘膜下出血斑
が見られます。
頭蓋底骨折の診断は?
臨床所見の他、X線検査やCT検査を行い診断します。
ただし、パンダの目徴候・バトル徴候・髄液耳漏・鼻漏といった体のサインだけでは確定できません。頭部外傷136例を受傷後48時間観察した研究では28例(20.6%)に頭蓋底骨折があり、これらのサインがあっても実際に骨折があったのは約26〜27%(陽性的中率)にとどまりました(Solai 2018)。サインは受傷直後より時間がたってからのほうが見つかりやすく、最終的にはCTで確認します。
頭部外傷に加え、頭蓋底骨折を疑う症例では、下顎から頭頂部まで連続して撮影し診断します。
しかし、頭蓋底骨折では画像検査による骨折線の確認は難しいものとなっていますが、気脳症を来した場合は、脳内に流入した空気は明瞭に確認できます。
骨の損傷を確認するためには、3DCTが有用ですが、MRIで脳の障害がないか調べることもあります。
まずは、頭部CTにおける頭蓋底の場所を動画で確認しましょう。
症例 40歳代男性 高所より転落

頭部CTの骨条件で、右視神経管および側頭骨に骨折を認めています。
頭蓋底骨折の所見です。
頭蓋底骨折の治療法は?
髄液漏や脳神経麻痺に対する治療が基本となります。
それぞれについて治療法を説明します。
髄液漏に対する治療
基本的には、安静が必要になります。
脳脊髄液の漏れは、通常安静にしていると止まることが多いため、漏れがなくなるまで安静が必須です2)。外傷による小さな髄液漏は自然に止まりやすい一方、1週間を超えて続く場合は髄膜炎の危険から手術による修復が検討されます(Nasrollahi 2026)。なお、髄液漏の有無にかかわらず、頭蓋底骨折に対する予防的抗菌薬投与で髄膜炎・死亡が減るというランダム化比較試験の根拠はなく、コクランレビューでも予防投与は支持されていません(Ratilal 2015)。
ですが、この保存療法で改善が見られない場合は、手術を行うこともあります。
手術方法としては、内視鏡を用いて鼻から漏れ口を塞ぐ経鼻内視鏡的修復術や、開頭して硬膜(脳脊髄液を包む)を修復・形成する開頭硬膜形成術が行われます。
脳神経麻痺に対する治療
傷ついた脳神経の障害を抑える必要があります。
薬物療法が行われ、ステロイド剤が使用されます。ただし、頭部外傷患者1万人を対象としたCRASH試験では、メチルプレドニゾロン大量投与で2週間以内の死亡率がかえって上昇しており(21.1% vs 17.9%)、頭部外傷そのものに対するステロイドのルーチン投与は推奨されません(Roberts 2004)。
また、骨折により脳神経を圧迫している場合には、それを取り除く治療として外科的手術が行われます。
頭蓋底骨折の看護は?
頭部に外傷を受けている場合は、頭蓋内出血の可能性もあるため、受傷当時の状況や様子を問診することが重要です。
また、急変もあり得るため、バイタルサインや神経症状を継続的に観察する必要があり、ちょっとした変化を見逃さないことが大切です。
その他、急なことでショックを受けている患者や家族を不安にさせないため、十分な説明が必要でしょう。
参考文献:
1)病気がみえる vol.7:脳・神経 P442〜445
参考サイト:
2)脳脊髄液減少症 ガイドライン2007
最後に
頭蓋底骨折について、ポイントをまとめます。
- 顔面・頭部の最深部である頭蓋骨の底部分で起こる骨折
- 頭蓋円蓋部の骨折が延伸して起こることの多い骨折
- 骨折部位により、前頭蓋底・中頭蓋底・後頭蓋底とに分けられ症状がそれぞれ異なる
- CT検査が有用
- 髄液漏や脳神経麻痺に対する治療が基本
中には、頭蓋底に穴が空いていてその後に髄膜炎を繰り返すこともあります。
その場合は、その穴を塞ぐ手術が必要になることもあります。
- Roberts I, Yates D, Sandercock P, et al. Effect of intravenous corticosteroids on death within 14 days in 10008 adults with clinically significant head injury (MRC CRASH trial): randomised placebo-controlled trial. Lancet. 2004;364(9442):1321-1328. PubMed
- Ratilal BO, Costa J, Pappamikail L, et al. Antibiotic prophylaxis for preventing meningitis in patients with basilar skull fractures. Cochrane Database Syst Rev. 2015;(4):CD004884. PubMed
- Solai CA, Domingues CA, Nogueira LS, et al. Clinical Signs of Basilar Skull Fracture and Their Predictive Value in Diagnosis of This Injury. J Trauma Nurs. 2018;25(5):301-306. PubMed
- Nasrollahi TS, Kuan EC. Conservative Management of Cerebrospinal Fluid Leaks. Otolaryngol Clin North Am. 2026;59(3):531-545. PubMed
- Baugnon KL, Hudgins PA. Skull base fractures and their complications. Neuroimaging Clin N Am. 2014;24(3):439-465. PubMed
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