頭部に外傷を受けた場合、頭蓋骨骨折を伴うことがあります。
そして骨折の形状(種類)として、線状骨折・陥没骨折 があり、骨折が起こる部位により、円蓋部(えんがいぶ)骨折・頭蓋底(ずがいてい)骨折と分けられます。
今回はその中でも、頭蓋底骨折(Basal skull fracture)について
- 症状
- 診断・画像所見
- 治療法
など、イラストと実際のCT画像を交えて、わかりやすく解説します。
頭蓋底骨折とは?
脳は非常に重要な臓器であり、骨の中に収まっていますが、周りには髄液があり、外傷を受けた場合の損傷を最小限に抑えるような構造になっています。
イメージイラストでは下のようになります。
実際のCT画像で見てみると、次のようになります。
動画で解説しました。
頭蓋骨が外傷を受けた際に、骨折を起こすことがありますが、これを頭蓋骨骨折といいます。
頭蓋骨骨折は、上のように骨折部位により、
- 主に頭のてっぺんに位置する→円蓋部(えんがいぶ)骨折
- 顔面・頭部の最深部に位置する→頭蓋底(ずがいてい)骨折
に分けられます。
頭蓋底骨折とはその顔面・頭部の最深部である頭蓋骨の底部分に起こる骨折で、種類としては線状骨折となります。
頭蓋底骨折は、頭蓋円蓋部の骨折が伸びて起こることの多い骨折で、その他の原因として、下顎への打撃や尻もちによって脊柱と後頭蓋底がぶつかり起こることもあります。
頭蓋底骨折の好発部位は?
頭蓋底は下のように前頭蓋底・中頭蓋底・後頭蓋底に分けることができます。
この中でも骨折が好発する部位は以下の通りです。
- 前頭蓋底(篩板・視神経管・前頭洞)
- 中頭蓋底(錐体骨)
後頭蓋底骨折は非常に稀ですが、脳幹部を損傷していることが多い為、死亡率が高くなっています1)。
それぞれには、以下の脳神経があります。
前頭蓋底 | Ⅰ嗅神経 |
中頭蓋底 | Ⅱ視神経・Ⅲ動眼神経・Ⅳ滑車神経・Ⅴ三叉神経・Ⅵ外転神経 |
後頭蓋底 | Ⅶ顔面神経・Ⅷ内耳神経・Ⅸ舌咽神経・X迷走神経・XI副神経・XII舌下神経 |
頭蓋底骨折の症状は?
上に述べたように頭蓋底骨折では、骨折部位により
- 前頭蓋底
- 中頭蓋底
- 後頭蓋底
とに分けられます。
それぞれ部位によって症状が異なりますので、分けて説明します。
前頭蓋底
- 頭痛
- 目眩
- 眼鏡状出血
- 髄液鼻漏
- 持続性鼻出血
- 臭覚障害
- 視力悪化
臨床所見として、
- 気脳症
- パンダ目のような眼鏡状皮下出血(ラクーン・アイ(raccoon eye))
- 髄液鼻漏
- 鼻血
などが確認できます。
中頭蓋底
- バトル徴候(Battle徴候)
- 髄液耳漏
- 持続性耳出血
- 顔面神経麻痺
- 感音性難聴(耳鳴り・聴力低下)
臨床所見として、
- 気脳症
- 耳介後部の皮下出血(バトル徴候(Battle徴候))
- 髄液耳漏
- 耳出血
が見られます。
後頭頭蓋底
- 動悸
- 目眩
- 項部・頸部の出血班
- 咽頭後壁粘膜下出血班
- 下位脳神経麻痺
- 脳幹損傷(呼吸抑制→致死的)
臨床所見としては、
- 項部・頸部の出血班
- 咽頭後壁粘膜下出血班
が見られます。
頭蓋底骨折の診断は?
臨床所見の他、X線検査やCT検査を行い診断します。
頭部外傷に加え、頭蓋底骨折を疑う症例では、下顎から頭頂部まで連続して撮影し診断します。
しかし、頭蓋底骨折では画像検査による骨折線の確認は難しいものとなっていますが、気脳症を来した場合は、脳内に流入した空気は明瞭に確認できます。
骨の損傷を確認するためには、3DCTが有用ですが、MRIで脳の障害がないか調べることもあります。
まずは、頭部CTにおける頭蓋底の場所を動画で確認しましょう。
症例 40歳代男性 高所より転落
頭部CTの骨条件で、右視神経管および側頭骨に骨折を認めています。
頭蓋底骨折の所見です。
頭蓋底骨折の治療法は?
髄液漏や脳神経麻痺に対する治療が基本となります。
それぞれについて治療法を説明します。
髄液漏に対する治療
基本的には、安静が必要になります。
脳脊髄液の漏れは、通常安静にしていると止まることが多いため、漏れがなくなるまで安静が必須です2)。
ですが、この保存療法で改善が見られない場合は、手術を行うこともあります。
手術方法としては、開頭硬膜形成術といって、硬膜(脳脊髄液を包む)を縫い合わせる方法で行われます。
脳神経麻痺に対する治療
傷ついた脳神経の障害を抑える必要があります。
薬物療法が行われ、ステロイド剤が使用されます。
また、骨折により脳神経を圧迫している場合には、それを取り除く治療として外科的手術が行われます。
頭蓋底骨折の看護は?
頭部に外傷を受けている場合は、頭蓋内出血の可能性もあるため、受傷当時の状況や様子を問診することが重要です。
また、急変もあり得るため、バイタルサインや神経症状を継続的に観察する必要があり、ちょっとした変化を見逃さないことが大切です。
その他、急なことでショックを受けている患者や家族を不安にさせないため、十分な説明が必要でしょう。
参考文献:
1)病気がみえる vol.7:脳・神経 P442〜445
参考サイト:
2)脳脊髄液減少症 ガイドライン2007
最後に
頭蓋底骨折について、ポイントをまとめます。
- 顔面・頭部の最深部である頭蓋骨の底部分で起こる骨折
- 頭蓋円蓋部の骨折が延伸して起こることの多い骨折
- 骨折部位により、前頭蓋底・中頭蓋底・後頭蓋底とに分けられ症状がそれぞれ異なる
- CT検査が有用
- 髄液漏や脳神経麻痺に対する治療が基本
中には、頭蓋底に穴が空いていてその後に髄膜炎を繰り返すこともあります。
その場合は、その穴を塞ぐ手術が必要になることもあります。