頭部に外傷を受けると、程度によってさまざまな症状を引き起こすことがあります。
その中でも頭蓋底骨折を起こした場合、頭の中の髄液が外に漏れ出す髄液漏が起こる危険性もあるのです。
今回は髄液漏(読み方は「ずいえきろう」英語表記で「Liquorrhea」)について
- 症状
- 原因
- 検査
- 治療法
- 看護
などについて詳しくまとめました。
先に結論:髄液漏のCT・MRI
- 髄液漏は、頭蓋底骨折などで硬膜が破れ、脳のまわりの髄液が鼻(髄液鼻漏)や耳(髄液耳漏)から漏れ出す状態で、透明でさらさらした鼻水が片側から止まらないことで気づかれます。髄膜炎の危険があります
- CT(薄いスライスの骨条件)で頭蓋底の骨折・骨欠損や頭蓋内の空気(気脳症)を確認し、漏れている場所の特定にはMRI(強いT2強調像)なども使います。漏れ出た液は髄液特有の蛋白(β2-トランスフェリン)で確認します
- 外傷による髄液漏の多くは安静など保存的治療で自然に止まりますが、続く場合は手術で穴をふさぎます
※頭を打ったあとに、透明な鼻水や耳だれが続くときは、すぐに受診してください。
髄液漏とは?
頭部に外傷を受け、頭蓋底骨折が起こったり、なんらかの原因で、骨と強い癒着のある硬膜やくも膜に穴が空いて(損傷)してしまうことがあります。
すると、そこから髄液が外部へと漏れ出してしまうのですが、これを髄液漏といいます。

髄液漏をきたしている場合、外部と髄液内との交通があるために、感染症のリスクが高くなるので注意が必要です。
また、髄液漏によって頭蓋内圧が下がると、外部の空気が頭蓋内に逆流してしまい、気脳症を来すこともあります。
髄液漏の症状は?
- 頭痛
- 吐き気
- 目眩
- 倦怠感
- 耳鳴り
- 聴力低下
- 首や背中の痛み
- 自律神経症状
- 脳神経症状
- 睡眠障害
- 内分泌異常
- 免疫異常
などの症状が現れますが、多くの場合頭痛が起こり、横になれば軽減する特徴があります。

また、それ以外にもさまざまな症状が出ますが、それらは髄液が漏れ出すことによって髄液が減り、頭蓋内圧が降下して起こる症状です。
髄液鼻漏と鼻水の違い・見分け方
| 髄液鼻漏 | ふつうの鼻水(かぜ・アレルギー) | |
| 色・性状 | 無色透明で水のようにさらさら | 透明〜白・黄色で粘りがあることが多い |
| 出方 | 片側から、ぽたぽた続く。下を向くと増えやすい | 両側のことが多い |
| ほかの症状 | 頭痛、頭のけが・鼻や頭の手術のあと | くしゃみ・鼻づまり・のどの痛み |
- ただし見た目だけでの区別は難しく、確定には検査が必要です。片側の透明な鼻水で受診した105例では、最終的に髄液鼻漏と診断されたのは38.1%でした(Eide 2025)。
- 試験紙(テステープ)などによる糖の検出は手軽ですが、糖尿病の人では偽陽性が多く、細菌の混入で偽陰性にもなるため、確定のための検査としては勧められていません。β2-トランスフェリンやβトレース蛋白の測定が使われます(Mantur 2011)。
- β2-トランスフェリンにも限界があり、上記105例(149検査)では感度89.5%・特異度78.3%で、誤りの原因として副鼻腔炎の膿や採取時の鼻かみによる混入がありました(Eide 2025)。
- 頭部外傷のあとで、CTで頭蓋底骨折があり、臨床的に髄液漏が明らかな場合は、確認検査を追加しなくてよいとされます(Abuabara 2007)。
髄液漏の原因は?
考えられる原因は以下の通りです。
- 頭部への強い衝撃
- 脱水
- 出産時等のいきみ
- 穿刺
交通事故やスポーツ、暴力などさまざまな原因で頭部に強い衝撃を受け、頭部外傷による骨折で起こることがほとんどです。
それ以外では、出産時のいきみ、腰椎穿刺検査などによって起こることもありますが、以上のようなことがなくても起こる原因不明の場合もあるのです。
外傷による髄液鼻漏は、多くが受傷後3か月以内に現れます(Abuabara 2007)。一方、きっかけのない特発性(自然発生)の髄液鼻漏は、頭蓋内圧の高い状態との関係が指摘されています。手術を受けた21例では18例が女性、85.7%が過体重で、66.7%に画像で空虚トルコ鞍(empty sella)がみられました(Yang 2011)。
髄液漏の検査は?
髄液漏は、イラストのように、鼻や耳から確認出来ます。

臨床症状から、髄液漏があることは鼻や耳からの分泌物を確認することが可能です。
しかし、それを髄液か鼻水と鑑別するには、β2-トランスフェリンなど髄液に特有の蛋白を調べる検査が確実です(従来の試験紙による糖の確認は、鼻汁などでも陽性になることがあり参考程度とされます)。
また、上記以外に、CTやMRIで検査し、骨折や髄液の流出を確認することも必要です。成人の頭蓋底髄液漏の画像評価では、まず薄いスライスのマルチスライスCTで頭蓋底の骨欠損を探すことが基本とされています。漏出部位と原因を特定することが、鼻漏・耳漏や低髄液圧による頭痛、髄膜炎を防ぐ治療につながります(PMID: 18710972)。
髄液漏の治療法は?
鼻腔や外耳(鼻栓や耳栓)をするのは逆効果で、感染のリスクを高めてしまうため、原則として行いません1)。
多くは、自然治癒します。
保存療法という方法でしばらく様子を見ますが、その保存療法期間は、安静のため横になり水分補給に注意する必要があり、脱水症状対策として点滴も必要です。
しかし、保存療法で改善されない場合、頭蓋底からの髄液鼻漏・耳漏では内視鏡下経鼻手術や開頭による漏出部の閉鎖術を行います。一方、脊髄レベルで髄液が漏れる脳脊髄液漏出症(特発性低髄液圧症候群など)では、以下のような治療を行うこともあります。
- ブラッドパッチ治療
- アートセレブ注入療法
それぞれについての説明です。
ブラッドパッチ治療
硬膜外自己血注入法(英語表記で「epidural blood patch」略語でEBP)とも呼ばれます。
患者の血液採取をし、その血液を漏出部位の近くの、硬膜外側の脂肪組織に注射する方法です。
そうすることにより、硬膜の外側(硬膜外腔)に血液が広がり、血液凝固作用を利用し、開いた穴が塞がることを期待します。
効果は個人差がありますが、効果が不十分なときは、くり返し行うこともあります。
アートセレブ注入療法
人工髄液を注入する方法で、人工に作られた脊髄液に近い人工髄液を注入し、減少してしまった髄液の補充を目的としています。
この方法は、ブラッドパッチ治療を行ったにも関わらず、症状がなかなか改善しない時に行われる方法です。
また、抗菌薬を投与し、感染予防を行うこともあります。
参考文献:
全部見える 脳・神経疾患―スーパービジュアル 徹底図解でまるごとわかる! P63・250
1)病気がみえる vol.7:脳・神経 P445
髄液漏でよくある疑問(Q&A)
Q. 髄液鼻漏は自然に治りますか?
A. 外傷による髄液漏の多くは自然に止まります。ただし7日を超えて続く髄液瘻では髄膜炎の危険が有意に高かったと報告されており(Abuabara 2007)、長引く場合は手術で漏れている部分を閉じることを検討します。
Q. 耳から髄液が出るのはどんなとき?
A. 側頭骨の骨折などで中耳に髄液がたまり、鼓膜が破れていると耳から出ます(髄液耳漏)。鼓膜が保たれていると、耳管を通って鼻から出ることもあります。
Q. 看護で観察することは?
A. 鼻・耳からの液の量と性状、頭痛、発熱や首の硬さ・意識の変化(髄膜炎のサイン)を観察します。鼻を強くかむ・いきむなど頭の中の圧が変わる動作を避けるよう説明し、鼻や耳に栓はしません。
最後に
髄液漏についてのまとめです。
- 硬膜やくも膜が損傷して、そこから髄液が漏れ出すことを髄液漏という
- 外部と髄液内との交通があるために、感染症のリスクが高くなる
- 髄液が減り、頭蓋内圧が降下することにより、頭痛を中心としたさまざまな症状が起こる
- 頭部外傷・脱水・出産時のいきみ・穿刺が原因となる
- 鼻汁との鑑別診断と画像診断が行われる
- 基本的には水分補給を行いながら安静にし、自然治癒を期待する
- ブラッド・パッチ治療やアートセレブ注入療法を行うこともある
髄液漏は、鼻汁との自己判断は難しく、原因となるようなことが思い当たる場合には、一度病院で相談してみることをオススメします。
- Prosser JD, Vender JR, Solares CA. Traumatic cerebrospinal fluid leaks. Otolaryngol Clin North Am. 2011;44(4):857-873. PubMed
- Abuabara A. Cerebrospinal fluid rhinorrhoea: diagnosis and management. Med Oral Patol Oral Cir Bucal. 2007;12(5):E397-E400. PubMed
- Mantur M, Łukaszewicz-Zając M, Mroczko B, et al. Cerebrospinal fluid leakage–reliable diagnostic methods. Clin Chim Acta. 2011;412(11-12):837-840. PubMed
- Eide JG, Mason W, Mackie H, et al. Diagnostic Accuracy of Beta-2 Transferrin Gel Electrophoresis for Detecting Cerebrospinal Fluid Rhinorrhea. Laryngoscope. 2025;135(1):94-96. PubMed
- Yang Z, Wang B, Wang C, et al. Primary spontaneous cerebrospinal fluid rhinorrhea: a symptom of idiopathic intracranial hypertension? J Neurosurg. 2011;115(1):165-170. PubMed
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