症例27
【症例】50歳代 女性
【主訴】腹痛
【現病歴】本日昼食中からしんどくなり全部食べられなかった。その後、腹痛が出現し、下痢も出現したため救急外来受診。嘔吐もあり。 昨日夕方、アジ、イカ、鯛、鮪を食べた。
【既往歴】虫垂炎術後
【身体所見】BT 36.2℃、P 72bpm、BP 114/78mmHg、SpO2 100%(RA)、腹部平坦・軟、下腹部正中から左側腹部にかけて圧痛あり、反跳痛なし。
【データ】WBC 6100、CRP 0.03
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小腸の拡張および液貯留を認めています。
ケルクリング襞が目立ちますが、粘膜下層の肥厚は認めません。
結腸には広範に液体貯留を認めており、下痢症に矛盾しない所見です。
これらの所見以外に特に所見がないのが今回の症例です。
生ものの摂取があるため、アニサキス小腸炎や感染性結腸炎などがないかをチェックする必要がありますが、それらを疑う所見は認めていません。
こういう場合に考えるべきが、感染性小腸炎です。
小腸型の感染性腸炎の画像所見1)としては、
- 小腸を中心に多量の液貯留を認める。
- 内腔の拡張は軽度でガスは少ない。
- 通常、壁の浮腫性肥厚を認めない。(∵この群は粘膜に侵入しないため)
といったものが挙げられるのでした。
診断:感染性小腸炎疑い。
※保存的に加療されました。
その他所見:
- 肝嚢胞あり。
- 胃内に残渣あり。(麺類)
症例27の動画解説
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
胃の前庭部の粘膜下層が肥厚して、
三層構造を保ったままの壁肥厚をしているように見えたので、胃アニサキスと勘違いしました…
粘膜下層が肥厚しているように見えたのは内容物ですね…
粘膜に見えたのは高吸収の麺類
ですね。
よく見ると粘膜下層は肥厚していませんでした…
食歴も合わせて早とちりしました…
救急外来できたら勘違いしそうです。
今日もありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>粘膜に見えたのは高吸収の麺類ですね。
おっしゃるように胃内には麺類がありますね。
>食歴も合わせて早とちりしました…
救急外来できたら勘違いしそうです。
今回あえてややこしい食歴も残して掲載しました。
胃幽門部から十二指腸上行脚にかけて粘膜の腫大があるよう見えますが、如何でしょうか?
アウトプットありがとうございます。
胃幽門部は壁が肥厚して見えることがあるので注意が必要です。
参考
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/37798
ケルクリング襞が目立つとされた部分について、「壁肥厚」と解釈してしまいました。
浮腫性肥厚は感染性小腸炎では起きない(起きにくい)ということになりますと、この「ケルクリング襞が目立つ」というのはどういう現象を見ているのでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>この「ケルクリング襞が目立つ」というのはどういう現象を見ているのでしょうか。
粘膜に炎症があることなどを示唆するのだと思います。
感染性小腸炎の場合は結腸炎と異なり粘膜下層に入り込まないため、粘膜下層が肥厚しないことがポイントですね。