ESPRESSO腹部救急画像診断 復習症例25

症例25

【症例】20歳代 男性
【主訴】2日前からの左下腹部痛
【身体所見】腹部:平坦、軟、左下腹部に圧痛あり。反跳痛あり。

【データ】WBC 6300、CRP 0.18

画像はこちら

S状結腸~下行結腸移行部(SDJ:sigmoid-descending colon junction)に、楕円形で周囲に壁肥厚を有する内部脂肪濃度を認めています。

また周囲にはわずかに脂肪織濃度上昇を認めています。

腹膜垂炎を疑う所見です。

※またそのやや尾側にも腹膜垂を認めています。

冠状断像では、腹膜垂に接する腹膜の肥厚を認めており、局所的な腹膜炎を疑う所見です。

Douglas窩には腹水貯留も認めています。

診断:腹膜垂炎+局所的腹膜炎

※保存的に加療されます。

※腹膜垂が遊離して石灰化したものを腹膜ネズミなどと呼びます。また脂肪濃度のまま肝辺縁に移動すると肝偽脂肪腫などとも呼ばれます。

関連:腹膜垂炎とは?CT画像診断のポイントは?

その他所見:とくになし。

 

症例25の動画解説

お疲れ様でした。

今日は以上です。

今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。


過去のコメント
  1. これこそ「見たことがあるか」で勝負が決まる症例ですね(╹◡╹)

    結果保存治療でも、「よく分からないけど放置」なのと「理由を持って保存療法」では患者さんにとって雲泥の差ですよね(・・;)

    1. アウトプットありがとうございます。

      >「よく分からないけど放置」なのと「理由を持って保存療法」では患者さんにとって雲泥の差ですよね(・・;)

      おっしゃるとおりですね。
      前者の場合気持ち悪いですね。
      何か見落とししていないかという不安が少し残ります。

      まあ、重要疾患を除外できたと確信できることも大事ですが。

  2. 小腸が拡張していて、液体貯留してきたので、小腸イレウス?かと思ったのですが、
    直腸から大腸を追っていくと、
    炎症所見の目立つ部位と、以前ここで
    見させていただいたこともあり、
    腹膜垂炎と疑うことができました。

    知っていないと本当に、わからない症例でした。

    一つお聞きしたいのですが
    周囲の小腸の、炎症所見は
    腹膜垂の炎症波及でしょうか?

    1. アウトプットありがとうございます。

      >腹膜垂炎と疑うことができました。

      良かったです!

      >一つお聞きしたいのですが
      周囲の小腸の、炎症所見は
      腹膜垂の炎症波及でしょうか?

      おっしゃるように確かに少し隣接する小腸の液貯留が目立ちますね。
      炎症波及により局所的な麻痺性イレウスのような状態になっている可能性はあると考えます。

  3. お世話になっています。

    腹膜垂炎でも炎症が強くなると、腹水貯留や小腸の蠕動不良(液体貯留)が見られるのですね。

    1. そうですね。
      腹膜垂炎を起こしている腹膜垂の場所によっては、周囲に炎症所見が及ぶこともありますね。
      ただし、結腸には基本及ばないとされます。

  4. 炎症の部位などはすぐわかりましたが・・・
    腹膜垂炎も覚えていましたが・・・
    なかなか難しいですね.小さな膿瘍と思ってしまいました.

    1. アウトプットありがとうございます。

      見たことがあるものでも顔を変えてでてくると、なかなか気付かないこともありますね。
      そういう意味でこの復習企画は意味があると思います。ぜひ次に活かしてください。

  5. ここで出題されるぐらいだから何かあるに決まっていると確信して探すのでなんとかかんとか腹膜垂炎を見つけることはできましたが、普段のERで見ていたら「虫垂炎もなさそうだし、CRPも上がってないし…なんだかわからないけど感染性腸炎かな、とりあえず経過観察で増悪したらまたきてください」などと言ってしまいそうです…精進します
    横断像60/93あたりで回盲部付近に見える高吸収なものは虫垂内の糞石でしょうか?

    1. アウトプットありがとうございます。

      >「虫垂炎もなさそうだし、CRPも上がってないし…なんだかわからないけど感染性腸炎かな、とりあえず経過観察で増悪したらまたきてください」などと言ってしまいそうです

      それでとくに問題にはならないのが,腹膜垂炎ですね。
      腹膜垂炎に気づけたら、症状との相関関係が説明できます。

      ただし、仮に気づけなかったとしても、それ以外の重要疾患を除外できたということも重要なので、
      CTを撮影した意味があるとも言えますね。

      >横断像60/93あたりで回盲部付近に見える高吸収なものは虫垂内の糞石でしょうか?

      なんでしょうか。虫垂構造がはっきりしないので、虫垂の手術後かも知れません。
      冠状断像でみると線状の高吸収になっていますね。糞石ではなさそうです。

  6. おつかれ様です。

    横断像の15〜19で見える
    肝臓左葉から脾臓につながっている
    ものは、何でしょうか?

    肝臓左葉の腫大?
    脾臓の腫大?それとも他のものでしょうか?

    よろしくお願いします。

    1. 確かに目立ちますね。

      肝臓左葉の腫大:こちらですね。

      冠状断像でみると連続性がわかりやすいかもしれません。

  7. 炎症反応上昇もないし、ただの感染性腸炎かなっていう先入観もあり腹膜垂炎を見逃しました。反省。

    1. まあ基本的に見逃しても問題ない疾患なので、重要疾患を除外できたと思えばOKですね。

      さらに腹膜垂炎が見えてくればなおよいですが。

  8. 解説ありがとうございます。
    以前症例で出して下さってたので、見たことある!と腹膜垂炎を見つけることができました。
    また、腹膜垂の二つある内の一つは、中がガスのようなCT値で憩室?と疑ってしまいましたが、
    動画解説の通りよくよく見てみるとガスよりも高吸収ですね。気をつけます。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >腹膜垂の二つある内の一つは、中がガスのようなCT値で憩室?と

      確かにそのようにも見えますね。
      濃度が変えられないので恐縮です。

  9. 今回は敢えてクイズになっているから正解できたという要素も大きいとは思いますが、
    やっぱり、男性で腹水を見たら「あれっ?」と思うことは大事かもと思いました(^▽^)/

    1. アウトプットありがとうございます。

      >男性で腹水を見たら「あれっ?」と思うことは大事かも

      大事ですね!

  10. 毎日お世話になっております。
    腹膜垂炎は指摘できましたが、メインの腹膜垂炎のみ指摘して、もうひとつあったことに気がつくことはできませんでした。
    日頃腸管と病変部の連続性を追う癖をつけようと心がけていたので、「腸管腔と連続しない構造物、それにこの既視感…これはもしや…!!」と思いつくことができました。
    しっかり復習しておきます!

    1. アウトプットありがとうございます。

      >日頃腸管と病変部の連続性を追う癖をつけようと心がけていたので、「腸管腔と連続しない構造物、それにこの既視感…これはもしや…!!」と思いつくことができました。

      それはよかったです!!こないだメールで書いたことが現実的になってきましたね(^_^;

  11. 小腸のケルクリングひだが目立っているのと、液貯留の所見があったので
    感染性腸炎と書いてしまいました。

    何回か見ている症例でしたが
    派手な所見の方に目がいって
    全く気づきませんでした。

    感染性腸炎と間違えてもおかしくない症例でしょうか?

    何か鑑別点などあれば教えて頂きたいです。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >感染性腸炎と間違えてもおかしくない症例でしょうか?

      そうですね。おっしゃるように小腸炎としてもあり得る所見です。