ESPRESSO腹部救急画像診断 復習症例12

症例12

【症例】40歳代 男性
【主訴】発熱
【現病歴】半月前から発熱あり。他院受診にて感染性腸炎疑いで様子を見ていたが、症状変わらず来院。
【身体所見】意識清明、BP 128/74、HR 103、BT 37.9℃、咽頭に異常なし、皮膚に発疹なし、甲状腺腫大なし、頚部リンパ節腫大なし、心音・呼吸音に異常なし、腹部:右季肋部に圧痛あり、反跳痛なし、CVA圧痛なし、下腿浮腫なし、神経学的OK
【データ】WBC 14500、CRP 25.25、AST/ALT=32/42、ALP 970、LAP 168、γーGTP 264

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肝S6(~一部S7)にかけて低吸収域を認めています。

中心部から早期相で(その目で見ると)

膿瘍腔(低吸収)
→膿瘍壁(高吸収)
→周囲浮腫(低吸収)
→区域濃染(高吸収)

という、黒→白→黒→白の順番で外側へと吸収域の変化を認めています。

2重の輪に見えることからこれをdouble target signと呼ぶんでしたね。

また平衡相では、(その目で見ると)

膿瘍腔(低吸収)
→膿瘍壁(高吸収)

のみになっています。

肝膿瘍を疑う所見です。

診断:肝膿瘍

※経皮的肝膿瘍ドレナージ術が施行されました。

※孤立性および右葉後区域という点からはアメーバによる肝膿瘍の可能性も考慮します。膿瘍の膿汁の培養結果:Gram-positive cocci(グラム陽性球菌) が検出されました。具体的な菌名までは出ませんでした。(検査部にも問い合わせてみましたが、発育が悪く、菌名までは同定できなかったとのことです。)

関連:肝膿瘍とは?原因、治療は?CT画像診断のポイントは?

その他所見:

  • 肝嚢胞あり。
  • 肝S6にて肝内胆管拡張あり。膿瘍による圧排による拡張の疑い。
  • ダグラス窩に腹膜ネズミあり。
症例12の動画解説

お疲れ様でした。

今日は以上です。

今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。


過去のコメント
  1. いい復習でした(^▽^)/

    肝膿瘍について、自分で覚えるために、3日目の開設ページを見ながら、
    「さすがにここまで書いたらしつこいだろ(;’∀’)」
    というくらいに所見を書いてみました(^▽^)/

    早く身につけたいな、と思っています(^^♪

    1. アウトプットありがとうございます。

      >「さすがにここまで書いたらしつこいだろ(;’∀’)」
      というくらいに所見を書いてみました(^▽^)/

      拝見しました。
      特別公開しますw

      「肝ダイナミックCT・平衡相で胸~骨盤部、肝右葉後区域(S7)に肝膿瘍を考えるdouble target sign(LDAがありその周囲に早期濃染する壁を持ちその外に浮腫を反映した低吸収域がありさらにその外側に区域性の門脈血流低下への代償のための動脈血流増加を反映した高吸収域を持つ)を認める、その他肝内に散在するLDAはいずれも濃染壁を伴わず嚢胞が第一に考えられこの膿瘍は単発であると考える、胆・膵・脾・副腎・腎・膀胱・前立腺に異常なし、腹腔ネズミあり、短径10㎜を超えるリンパ節なし、腹水なし、両肺に活動性炎症や悪性腫瘍を示唆する所見なし、胸水なし。

      肝右葉後区域(S7)に孤立性と考える肝膿瘍あり。大きさもありドレナージの適応と考えます。消化器内科にご相談ください。また、アメーバが原因の可能性もあるため、採血や培養検査に含めることも妥当と考えます。」

      素晴らしいですね!

      機序なども言葉でアウトプットするとよりインプットが深まりますね。

      今回はS6メインですね。

  2. 第一印象:肝膿瘍、じっくり見ているうちに、濃染の仕方が気になり、血管腫なのかと思ってしまいました。

    1. アウトプットありがとうございます。

      一般的に血管腫の場合は、辺縁からジワジワ経時的に濃染されていきますね。

  3. しっかり復習ができていれば,すぐにわかるようなっており,学習効果がわかっていいですね!
    これからの症例もすぐにわかるようにしたいと思います.

    1. アウトプットありがとうございます。

      定着している感が実感できてよかったです。

  4. お世話になっています。

    肝膿瘍の存在部位を当てたいのですが…難しいです。今回、16/217で膿瘍の頭側を走行しているのがS7の肝動脈と考え、その動脈から22/217で分岐する肝動脈が膿瘍の中心付近に向かっていくため、S7領域メインの膿瘍と考えてしまいした。

  5. 肝内胆管拡張を指摘できませんでした。
    肝内病変部位の正確な把握が普段から苦手で今回も決めきれず「後区域」という表現に逃げました。

    1. アウトプットありがとうございます。

      今回の肝区域は皆さんも書かれているようにちょっと難しく、微妙ですね。
      後区域で良いと思います。

  6. GPCが起因菌のこともあるんですね。ただ、エンピリック治療としては、まずはGNRとかを考える感じでいいんですかね(^-^;

    この読影で初めて気づいたんですけど、前立腺は内・外でちゃんと染まり分けされるんですね。
    造影の区切りが内腺・外腺の区切りってことでいいんですよね?

    あと、細かいところがなんとなく気になっちゃったんですけど笑、
    142/217の胃壁に、小さい造影されない類円形の構造があるんですけど、よく見る所見ですか?

    何卒よろしくお願い申し上げます。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >GPCが起因菌のこともあるんですね。ただ、エンピリック治療としては、まずはGNRとかを考える感じでいいんですかね(^-^;

      そうですね。Klebusiella pneumoniaeやEscherichia coliなどが原因としては多いですね。

      >この読影で初めて気づいたんですけど、前立腺は内・外でちゃんと染まり分けされるんですね。
      造影の区切りが内腺・外腺の区切りってことでいいんですよね?

      そうですね。正常例の場合はそれでよいです。

      >142/217の胃壁に、小さい造影されない類円形の構造があるんですけど、よく見る所見ですか?

      よく見る所見ではないです。脂肪腫があるのかもしれませんね。他の相でもありますね。

  7. こんにちは、毎日お世話になっております!
    ①肝臓の区域までしっかりと予想して回答するべきでした。前回ごろ〜先生がつくってくださった、肝区域の覚え方の動画をみて復習しておきます!
    ②腸管からの波及性の病変の可能性も念頭に置いて、腸管をもっと念入りに確認するべきでした。
    ③腹膜ネズミは指摘できました!
    あしたもよろしくお願いします!

    1. アウトプットありがとうございます。

      >肝臓の区域までしっかりと予想して回答するべきでした。
      >腸管からの波及性の病変の可能性も念頭に置いて、腸管をもっと念入りに確認するべきでした。

      そうですね。所見を見つけて終わりでなく、その原因も見つけられることがあるので、意識してみてください。

  8. 消化管には特に所見がないとの解説でした。
    この患者さんは感染性大腸炎疑いで経過を見ていたとのことですが、横行結腸に三層構造を保った壁肥厚が僅かに残っているように見えましたが、いかがでしょうか。感染性腸炎後の肝膿瘍という可能性はどうでしょうか。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >横行結腸に三層構造を保った壁肥厚が僅かに残っているように見えましたが、いかがでしょうか。感染性腸炎後の肝膿瘍という可能性はどうでしょうか。

      おっしゃるようにわずかに壁肥厚様に見えなくもない箇所はありますが、これだけで有意とは言えない状態ですね。
      典型的には右半結腸に広範に認めて欲しい、もっとはっきりとした3層構造の肥厚として認めて欲しいところです。

      ただし、おっしゃる可能性は否定できません。(但し積極的に疑う所見ではないということです。)

      感染性腸炎といえばこんな症例を提示しました。
      https://imaging-diagnosis.com/view/Gt4yShbz

      1. 早速のコメントありがとうございました。
        先医が誤診していたのかな、いやそうとも言えないかな、なんて考えました。
        典型例を頭にしっかり入れておくのが大切ですね。