ESPRESSO腹部救急画像診断 復習症例4

症例4

【症例】30歳代男性
【主訴】心窩部痛
【身体所見】意識清明、BP 133/94、BT 35.7℃、SpO2 99%(RA)、腹部:平坦、腸雑音やや亢進、軟。心窩部からややその左にかけて自発痛あり。同部位にtapping painと圧痛あり。反跳痛・筋性防御なし。
【データ】γ-GTP 72、中性脂肪1811、WBC 8800、CRP 0.17、アミラーゼ 411、リパーゼ 831

画像はこちら

 

膵頭部周囲に脂肪織濃度上昇を認めています。

急性膵炎を疑う所見です。

急性膵炎を認めた場合、CT画像では、

  • 膵自身の変化:膵腫大、膵壊死の有無
  • 炎症の波及の範囲:前腎傍腔、横行結腸間膜根部、腎下極以遠

をチェックする必要があります。

今回膵壊死を疑う所見は認めず、また炎症も膵頭部周囲の前腎傍腔のみに認めています。

CT grade分類では、以下の通りgrade1に相当します。

診断:急性膵炎 CT grade 1

※保存的に加療されます。

この方は機会飲酒程度で、アルコールが原因とは考えられず、血性中性脂肪が非常に高値であり、それに伴う急性膵炎と診断されました。

急性膵炎の原因

急性膵炎の原因は、

  • アルコール(男性に多い):33%
  • 胆石(女性に多い):27%
  • その他:40%

と報告されており、その他の原因には、

  • 血性中性脂肪高値(1,000~2,000mg/dLを超える)←今回はこれと考えられている。
  • 膵腫瘍
  • 膵。胆管合流異常
  • ERCP後

などがあります1)

参考文献:
1)厚生労働省 難治性膵炎疾患に関する調査研究「平成23年度〜25年度 総合研究報告書2014」

関連:急性膵炎のCTグレードの評価をイラストと画像でわかりやすく解説!

その他所見:とくになし。

症例4の動画解説

お疲れ様でした。

今日は以上です。

今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。


過去のコメント
  1. 急性膵炎は所見を拾うこと自体はそれほど難しくないように感じますが、
    下行脚・前腎傍腔などの「ワード」は臨床で日常的には使用しないので、マスターするのはもう少しかかりそうです。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >下行脚・前腎傍腔などの「ワード」は臨床で日常的には使用しない

      ですよね(^_^;
      ただ場所を説明するには解剖名はある程度覚えていく必要がありますね。
      ぼんやり後腹膜でも最初はいいと思いますが。

    1. アウトプットありがとうございます。

      私も評価項目は覚えていますが、gradeの何に対応するかはいちいち覚えていないので、その都度確認しています(^_^;

  2. 私もGradeを調べてから回答しました。評価項目も正確には覚えていませんでしたが、急性膵炎→重症度判定しないと!という思考回路になれたので、少し成長を感じました。
    すごくよい復習になりました。
    γ-GTPが少し高かったのでお酒かな?と思っていましたが、中性脂肪が原因となることもあるのですね。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >急性膵炎→重症度判定しないと!という思考回路になれたので、少し成長を感じました。すごくよい復習になりました。

      それはよかったです!

      >γ-GTPが少し高かったのでお酒かな?と思っていましたが、中性脂肪が原因となることもあるのですね。

      そうなんです。お酒は機会飲酒程度でした。
      今回の症例で私もはじめて知りました。「病気がみえる」にも載っていました。

  3. 急性膵炎→重症度判定・・・覚えました!次回はそこまで答えられるように復習しておきます。
    最初は膵臓には異常あるように見えないなあ・・と焦りましたが、1件MRI検査をこなした後、再度画像を見たときに、炎症性変化に気付くことができました。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >炎症性変化に気付くことができました。

      今回は膵頭部周囲にのみ認めていました。
      もっと微細な所見のこともありますので、膵炎が疑われる場合は、膵周囲を隈無くチェックしてください。

  4. 最初のころに比べて簡単な所見は見つけることができるようになったと実感しています。
    状況にもよるとは思いますが膵炎のgradeによっては医師にすぐ連絡した方がよいものもあるのでしょうか?

    1. アウトプットありがとうございます。

      >膵炎のgradeによっては医師にすぐ連絡した方がよいものもあるのでしょうか?

      そうですね。たまに膵炎が広範ゆえに、膵炎があること自体に気付いていないケースもありますし、
      気付いていないようであれば伝えた方がいいと思います。

  5. 急性膵炎の疑いで造影CTの場合、3相(膵実質相、門脈相、遅延相)必要なのでしょうか?造影不良などを評価する場合はどの時相で評価すればいいのでしょうか?膵周囲に液体貯留があると造影効果が分かりにくい時があります。なにか見るポイントはありますか?

    1. コメントありがとうございます。

      >急性膵炎の疑いで造影CTの場合、3相(膵実質相、門脈相、遅延相)必要なのでしょうか?

      膵炎自体の有無の評価ならば遅延相のみでもわかりますが、

      ・仮性動脈瘤
      ・膵腫瘍
      ・仮性嚢胞
      ・膿瘍形成
      ・門脈血栓

      などの評価をするにあたり、やはり3相あるのが理想ですね。

      また総胆管結石の有無をみるためにも単純CTがさらにあればよいですね。

      >造影不良などを評価する場合はどの時相で評価すればいいのでしょうか?

      基本全部見ますが、遅延相で明瞭化してくることが多いです。

      >膵周囲に液体貯留があると造影効果が分かりにくい時があります。なにか見るポイントはありますか?

      これは仰るように難しいこともありますが、
      その方の正常な部分の膵とのバランスから本来あるべき膵実質を予測して判断することですね。
      あとは3相撮影されている場合は造影のされ方を周囲の正常膵実質と比較して判断します。

      1. >造影不良などを評価する場合はどの時相で評価すればいいのでしょうか?

        ・動脈相で膵実質に造影不良域がある→平衡相では造影不領域が消失している(造影効果がある)。→虚血性膵炎
        ・動脈相で膵実質に造影不良域がある→平衡相でも造影不領域が残存している。→壊死性膵炎

        が示唆される。

        (臨床画像 Vol.34 No.10増刊号、2018 P201)

        と記載があります。基本は全部見ますが、平衡相での評価がやはり重要ですね。

  6. 膵炎はわかってもグレード判定までは頭が回りませんでした。
    ところで膵炎に伴う麻痺性イレウスに特徴的な画像所見というものはありますか?
    一般的なイレウスと同じ画像所見と思っていいのでしょうか?

    1. アウトプットありがとうございます。

      >ところで膵炎に伴う麻痺性イレウスに特徴的な画像所見というものはありますか?

      炎症が間膜から腸管に及んだ際に麻痺性イレウスになり、限局性のガス貯留を認めます。
      レントゲン写真で、

      ・sentinel loop sign:局所的な小腸の拡張像
      ・colon cut-off sign:結腸の局所的なガス消失像

      などが医師国家試験的にも重要でした。(だったような記憶があります)

      一方で、例えばSMA閉塞症などに伴う麻痺性イレウスは広範に認めることになります。

  7. 「急性膵炎のCT画像診断のポイントは?」のシェーマで急性膵炎の勉強をしていたため、落ち着いてgradeをつけにいくことができました!!ありがとうございます!!
    一点疑問が生じたので質問させていただきたいです。

    今回、結腸間膜根部に炎症があるかどうかで迷いが生じました。最終的に46/97で間膜が肥厚しているように見えたため、「結腸間膜根部に進展のあるgrade1」としてしまったのですが、結腸間膜根部はもう少し頭側の、膵臓が写っているスライス(38/97あたり)というイメージなのでしょうか?

    1. コメントありがとうございます。

      >結腸間膜根部はもう少し頭側の、膵臓が写っているスライス(38/97あたり)というイメージなのでしょうか?

      これは非常に難しいところで、厳密な線引きはできず、○/97が根部です!とはいえませんが、
      そもそも間膜に炎症が及ぶと言うことはもっと腹側に炎症所見を認めている場合です。

      例:https://i2.wp.com/xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/wp-content/uploads/2016/11/acute-pancreatitis-CT-grade-classification002.jpg?w=600&ssl=1

  8. 十二指腸・胃幽門側には腸管壁の肥厚があるように思ったのですが、膵炎の炎症が波及していると読んでよいでしょうか? 有意な所見とはいえないでしょうか? (CTグレードも治療方針も変わらないとは思うのですが)

    1. コメントありがとうございます。

      >十二指腸・胃幽門側には腸管壁の肥厚があるように思ったのですが、膵炎の炎症が波及していると読んでよいでしょうか? 有意な所見とはいえないでしょうか?

      そうですね。十二指腸・胃幽門側には周囲の脂肪織濃度上昇は認めていますが、腸管壁は正常範囲と考えます。

  9. gradeを判定する際の前腎傍腔と横行結腸間膜の見分け方について教えてください.
    特に膵体部腹側の浸出液の場合どちらか判断に迷うのですが,脈管系を参考にしているのでしょうか.

    1. コメントありがとうございます。

      仰るとおりで、横行結腸間膜根部への炎症の波及に関しては腹腔動脈(CA)や上腸間膜動脈(SMA)を追って、脂肪織濃度上昇や液貯留の広がりを見ます。
      横行結腸間膜のメルクマールとなるのは、上腸間膜動脈(SMA)から分岐する中結腸動静脈ですが、読影の際に厳密にこれを追っているわけではありません。

      >特に膵体部腹側の浸出液の場合どちらか判断に迷う

      実際迷うこともあり、微妙なケースも多々あります。

  10. 今回もありがとうございました。
    CT gradeについてなのですが、膵周囲の液体貯留のような所見が腎下極あたりまであるかなと思ってしまいました。「膵外進展」というのらどのような所見の進展と捉えればよいでしょうか。

    1. コメントありがとうございます。

      >膵周囲の液体貯留のような所見が腎下極あたりまであるかなと思ってしまいました。

      これは仰るとおりですね。
      画像に冠状断像を追加しました(本来追加しておくべきでした)

      冠状断像で見ますと、確かに腎下極か、むしろその以遠にも?及んでいるように見えますね。

      ですので厳密にはCT grade 1-2 とするのが正しいかも知れません。

      >「膵外進展」というのらどのような所見の進展と捉えればよいでしょうか。

      後腹膜に沿って上下、左右方向に進展したり、横行結腸間膜や小腸間膜、上行結腸間膜など間膜に進展したりするもので、
      脂肪織濃度上昇や液貯留、腎筋膜の肥厚などで判断します。

  11. いつもわかりやすいサイト運営ありがとうございます。
    上記の方と同じく右腎の再下端のスライスの1スライス下(46/97)での下大静脈の腹側の脂肪織上昇を有意ととりgrade2とかんがえました。
    既出で申し訳ないのですが、結腸間膜「根部」の定義がいまいちわからないです。
    https://遠隔画像診断.jp/archives/14835
    の間膜の矢状断で横行結腸付近まで所見があれば陽性ととりますか?

    1. コメントありがとうございます。

      皆さん質問が多いのと、難しいところでもありますので、動画にしました。

      caseD がpassです。

  12. 毎回、詳しい解説や参加者の質問へのお返事を閲覧することが出来、日々勉強になっています。有難うございます。
    私の今回の回答所見に、20枚目のsliceで膵頭部を横断するように走る低吸収を悩んだ末に膵管拡張と読んでしまいました。
    膵管では無かったようです。
    解説で、急性膵炎の存在を示唆する画像所見に、膵管拡張所見がありませんが、急性膵炎の診断に直接的な所見では無いのか教えていただきたいのですが。
    放射線技師です。未熟な質問でお恥ずかしいですが申し訳ございません。

    1. コメントありがとうございます。

      >解説で、急性膵炎の存在を示唆する画像所見に、膵管拡張所見がありませんが、急性膵炎の診断に直接的な所見では無いのか教えていただきたいのですが。

      膵石や腫瘍が原因となり、閉塞性膵炎を起こしている場合は、主膵管の拡張を認めることがあります。
      もちろん主膵管の拡張の有無はチェックしますが、今回は認めません。
      膵炎→主膵管拡張 というわけではありません。

  13. 追加質問で申し訳ございません。
    総胆管に拡張はございませんが、総胆管壁がくっきりと造影され輪郭がはっきり見えますが、壁の肥厚ととらえてよろしいでしょうか? もし、総胆管壁肥厚であるなら、急性膵炎との関連性があるでしょうか?

    1. >総胆管壁がくっきりと造影され輪郭がはっきり見えますが、壁の肥厚ととらえてよろしいでしょうか?

      仰るように壁が目立ちますね。膵炎の炎症波及の可能性があります。

  14. 度々の質問ですいません。

    先の方の質問で「動脈相で膵実質に造影不良域がある→平衡相では造影不領域が消失している(造影効果がある)。→虚血性膵炎」と書かれていましたが、CT grade分類における造影効果の評価には、早期相(虚血性膵炎)と遅延相(壊死性膵炎)のどちらで評価すればよろしいでしょうか?

    1. コメントありがとうございます。

      早期相と、遅延相の組み合わせで判断します。
      遅延相でも造影効果を認めない場合は、壊死性膵炎と診断します。

  15. 今回は膵腫大も軽度でしたが、coronalの方が分かりやすかったです。
    「鉄砲の形」の全体が見えるからですかね(^-^; 他にも同じ感覚の人がいるのか気になります。

    基本的にはaxialが好きで再構成はサラッとのことも多いのですが、今回はcoronalもaxialと同じくらいじっくり見たと思います(^^♪

    1. アウトプットありがとうございます。

      確かに鉄砲の形ですね。

      >今回はcoronalもaxialと同じくらいじっくり見たと思います(^^♪

      おっしゃるように冠状断像で炎症の広がりはわかりやすいですね。今更ながら最近改めてそう思うようになりました。

  16. 膵炎の周囲組織への炎症波及で、前腎筋膜は「左側」と思っていました。膵頭部主体の膵炎では「右」前腎筋膜の肥厚が起こったり、十二指腸水平脚あたりまで炎症が及ぶことがあるのですね。
    ちょっと驚きの事例でした。

    1. アウトプットありがとうございます。

      左側とは限りません。おっしゃるように膵頭部なら右ですし、びまん性ならば両側肥厚を認めます。

      前後左右方向
      上下方向

      にどのように広がっているかをチェックすることが重要ですね。

  17. 膵炎や十二指腸での炎症だとはおもったのですが、groove pancreatitisも鑑別に挙がるかと思いつつ、groove pancreatitisの厳密な定義を理解していなかった自分に気づきました(苦笑)。本症例では、ひとまず膵臓に炎症があるということを伝えれば良いのかなと思いました。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >groove pancreatitisも鑑別に挙がるかと思いつつ、

      おっしゃる通りですね。

      >groove pancreatitisの厳密な定義を理解していなかった自分に気づきました(苦笑)。本症例では、ひとまず膵臓に炎症があるということを伝えれば良いのかなと思いました。

      groove領域という領域があることや同部に膵炎や膵腫瘍を認めることがあるということを覚えておくことは非常に重要ですね。
      ですが、今回は、おっしゃるように膵炎があることがわかれば問題ありません。

      関連
      https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/14908

  18. 現在 病院実習で血液内科を回っていて、上級医から「ロイナーゼは副作用に急性膵炎があるんだけど、造影CTでグレード分類できる?どこが前腎傍腔か分かる?」と教えていただいたばかりだったため、個人的に大変タイムリーな症例でした。印象に残り復習にもなりました。ありがとうございました。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >個人的に大変タイムリーな症例でした。

      タイムリーな場合や、誤診して痛い思いをした場合などはより記憶に残りやすいですね。
      またこうやってアウトプットいただくことでより印象に残ると思います。
      ありがとうございます。