先に結論:心膜嚢胞は良性の水の袋
- 心膜嚢胞は、心臓を包む膜(心膜)の発生の過程でできる薄い壁の水の袋で、右側の心臓と横隔膜の角(心横隔膜角)に最も多く、多くは無症状で健診のレントゲンやCTで偶然見つかります
- CTでは水に近い濃さの境界明瞭な丸〜楕円形の病変、MRIではT2強調像で白く造影されないのが特徴です
- 典型的なら経過観察で十分ですが、壁が厚い・造影される部分がある・大きくなる場合は、胸腺嚢胞・気管支原性嚢胞・腫瘍などとの区別が必要です
心膜嚢胞(pericardial cyst)
- 心膜腔の発生過程で形成される薄膜の嚢腫。
- 右側の心横隔膜角に好発する。左側や上縦隔に見ることもある(右心横隔膜角70%、左心横隔膜角22%、その他の縦隔8%;Kar 2017)。頻度は約10万人に1人とまれで、縦隔腫瘤の中では3番目に多いとされる。心膜嚢胞とされるものの約10例に1例は実際には心膜憩室である可能性があり、画像検査では区別できず手術で初めてわかることもある。
- 薄い被膜を有する単房性の形状。
- 内容物は一般的に漿液性。通常心膜腔との交通は見られない。交通が見られた場合は、心膜憩室(pericardial diverticulum)と呼ばれる。
画像診断
- CTで内部は低吸収、T1WI 低信号、T2WI 高信号の嚢胞性病変として認める。
- 造影効果なし。
症例 80歳 スクリーニング

右横隔膜角に単房性の嚢胞性病変を認めています。
壁の造影効果は認めていません。
心膜のう胞を疑う所見です。
心膜嚢胞の治療と経過観察
- 50〜75%は無症状で、別の目的の検査で偶然見つかる(Kar 2017)。
- 典型的で無症状なら、治療せず画像で経過をみる。1〜2年ごとの画像検査が勧められてきたが、もっと間隔をあけてよいとする報告もあり、自然に消えることもある(Khayata 2019)。
- 大きくなって心臓や気管支を圧迫し、胸痛・息切れ・咳などの症状が出る場合は、針を刺して中身を抜く治療(経皮的吸引)や、胸腔鏡手術による切除が行われる(Kar 2017)。
心膜憩室・心膜洞との違い
- 心膜憩室:心膜腔とつながっている袋。画像検査では心膜嚢胞と区別できず手術で初めてわかることもある(Kar 2017)。
- 心膜洞(心膜陥凹):大血管の根元のまわりにある心膜腔の正常なすき間。少量の心嚢液がたまると、嚢胞やリンパ節の腫れのように見えることがある。大血管に沿った位置と形が手がかりになる。
※胸の痛みや息苦しさなど気になる症状があれば、医療機関を受診してください。
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参考文献
- Wang ZJ, Reddy GP, Gotway MB, et al. CT and MR imaging of pericardial disease. Radiographics. 2003;23 Spec No:S167-80. PubMed
- Restrepo CS, Vargas D, Ocazionez D, et al. Primary pericardial tumors. Radiographics. 2013;33(6):1613-30. PubMed
- Jeung MY, Gasser B, Gangi A, et al. Imaging of cystic masses of the mediastinum. Radiographics. 2002;22 Spec No:S79-93. PubMed
- Khayata M, Alkharabsheh S, Shah NP, et al. Pericardial Cysts: a Contemporary Comprehensive Review. Curr Cardiol Rep. 2019;21(7):64. PubMed
- Kar SK, Ganguly T. Current concepts of diagnosis and management of pericardial cysts. Indian Heart J. 2017;69(3):364-370. PubMed
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