先に結論:甲状腺結節の鑑別とエコー所見
- 甲状腺結節はエコーで成人の数十%に見つかるありふれた所見で、多くは腺腫様結節などの良性です
- 悪性(主に乳頭癌)を疑うエコー所見は充実性・低エコー・形状不整・縦長・微細石灰化などで、コメットサインを伴う結節は良性を示唆します
- エコー所見は内部性状・エコーレベル・形状・辺縁・石灰化の順に書くと伝わりやすくなります
- 悪性を疑う所見や、頸部リンパ節腫大・増大傾向・放射線被ばく歴・家族歴があれば穿刺吸引細胞診(FNA)を考えます(大きさと所見を組み合わせたACR TI-RADSなどのリスク分類で判断します)
甲状腺の結節性疾患
- 甲状腺結節はcommonである。
- 画像検査では一般人口の最大65%に見つかる(Durante 2018)。
鑑別診断
- 過形成:腺腫様甲状腺腫が最多。
- 良性腫瘍:濾胞腺腫
- 悪性腫瘍:臨床的に問題となる癌は結節の約10%(Durante 2018)。乳頭癌が大部分で、濾胞癌、髄様癌、未分化癌、悪性リンパ腫などもある
- US評価の最終目的は、良性か悪性かを決める事。
臨床的に悪性を疑う所見
- 年齢 若年者、高齢者
- 触診 硬い、増大傾向、周囲構造との癒着、声帯麻痺、頸部リンパ節腫大
- その他誘因 放射線治療歴、家族歴(MENなど)
悪性の頻度
- 単発でも多発でも同じ頻度。触診で触れても触れなくても同じ頻度。
甲状腺癌の超音波所見
- 微細石灰化、低エコー、充実性、結節内血流、縦長、辺縁不整が揃えば典型的な乳頭癌。52研究12,786結節のメタ解析では、微細石灰化・辺縁不整・縦長の特異度はそれぞれ87.8%・83.1%・96.6%と高い一方、どの所見も単独ではFNAの要否を決めるほど信頼できないとされている。複数の所見を組み合わせて評価し、ACR TI-RADSやEU-TIRADSなどのリスク分類に沿ってFNAの適応を決めるのが現在の標準である。
石灰化
- 充実性優位な結節(<嚢胞領域25%)での悪性頻度
- 微細石灰化は砂粒小体の石灰化でacoustic shadowを作るには小さ過ぎる。乳頭癌。
- 粗大石灰化はアミロイドの石灰化が特徴的。髄様癌で見られる所見であるが、腺腫や腺腫様甲状腺腫、乳頭癌、未分化癌でも見られるのでこれだけで良悪性は言えない。
- comet-tailが認められれば良性の結節といえる。
内部構造
- 低エコー、充実性、不整が悪性の所見。
- ただし、腺腫性甲状腺腫は被膜が不完全で不整に見えることがあるので注意。
- また、髄様癌では被膜があり、浸潤に乏しく辺縁が整なことがあるので注意。
結節内血流
- カラードプラを利用
- 腫瘤内血流が豊富なら悪性を示唆(周囲甲状腺組織より血流が多い、腫瘤中心部で血流が多い)。ただし血流単独での良悪性の判定能は限られ、ACR TI-RADSでは血流は評価項目に含まれていない。
- 濾胞癌では結節内部の血流が豊富なことがある
- 凝血塊・デブリと充実性成分の区別にも有用
FNAの適応
- 超音波で悪性が疑われる場合
- ハイリスクである。(頸部リンパ節腫脹(特に内部不均一、石灰化、嚢胞変性、丸いもの)、理学的所見、症状、頭頸部領域の照射の既往、髄様癌、MEN2の家族歴)
- 超音波での経過観察で増大傾向がある。
甲状腺エコー所見の書き方
ACR TI-RADSの用語に沿って項目ごとに書くと伝わりやすく、リスク分類にもそのまま使えます(Tessler 2017)。
| 内部性状 | 嚢胞性/海綿状/混合性/充実性 |
| エコーレベル | 無/高・等/低/著明な低エコー |
| 形状 | 縦長(前後径>横径)か |
| 辺縁 | 平滑/不明瞭/分葉・不整/甲状腺外進展 |
| 石灰化 | なし・コメットサイン/粗大/辺縁/点状高エコー |
| そのほか | 部位、大きさ(3方向)、数、血流、頸部リンパ節 |
記載例:「右葉下部に○×○×○mmの充実性・低エコー結節。縦長で辺縁不整、内部に点状高エコーを複数認める。」
腺腫様結節に多い嚢胞性や海綿状の見た目は良性を示唆し、追加検査を要しないことが多いとされます(Durante 2018)。
Q. 石灰化があると癌の確率が高い?
A. 種類によります。微細石灰化は特異度87.8%と悪性を示唆しますが(Remonti 2015)、粗大石灰化は良性にもみられ、コメットサインは良性を示唆します。
首のしこりや腫れ、声のかすれなどが気になるときは医療機関を受診してください。
症例 30歳代男性 頸部腫脹

引用:Radiopaedia(Papillary thyroid carcinoma (ultrasound))
甲状腺右葉の超音波縦断像で、境界のやや不整な充実性の低エコー結節を認め、前後径が横径より大きい縦長の形をしています。結節の内部(上縁寄り)には微細石灰化を示す小さな点状高エコーが集まっています。ACR TI-RADS TR5(高度に悪性を疑う)と判定され、穿刺吸引細胞診で乳頭癌(濾胞型)と確定した症例です。
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参考文献
- Haugen BR, Alexander EK, Bible KC, et al. 2015 American Thyroid Association Management Guidelines for Adult Patients with Thyroid Nodules and Differentiated Thyroid Cancer. Thyroid. 2016;26(1):1-133. PubMed
- Tessler FN, Middleton WD, Grant EG, et al. ACR Thyroid Imaging, Reporting and Data System (TI-RADS): White Paper of the ACR TI-RADS Committee. J Am Coll Radiol. 2017;14(5):587-595. PubMed
- Remonti LR, Kramer CK, Leitão CB, et al. Thyroid ultrasound features and risk of carcinoma: a systematic review and meta-analysis of observational studies. Thyroid. 2015;25(5):538-50. PubMed
- Russ G, Bonnema SJ, Erdogan MF, et al. European Thyroid Association Guidelines for Ultrasound Malignancy Risk Stratification of Thyroid Nodules in Adults: The EU-TIRADS. Eur Thyroid J. 2017;6(5):225-237. PubMed
- Durante C, Grani G, Lamartina L, et al. The Diagnosis and Management of Thyroid Nodules: A Review. JAMA. 2018;319(9):914-924. PubMed
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