
上腕骨大結節骨折とは、腱板が付く上腕骨の出っ張り「大結節」が折れる骨折です。肩を打った患者さんのレントゲンで骨折線が見えず、「腱板損傷疑い」で返したことはありませんか。研修医のハジメくんと一緒に、X線で見逃しやすい理由、MRIで見る所見、ずれの測り方、肩関節脱臼・腱板断裂との関係を整理します。
先に結論
- 大結節骨折とは、腱板(棘上筋・棘下筋・小円筋)の付け根である大結節の骨折。単独の大結節骨折は上腕骨近位部骨折の最大20%を占める(Wangler 2025)。
- ずれのない骨折はX線で見逃されやすい。痛みと可動域制限が続くときは、MRIで骨折線・骨髄浮腫と腱板を一緒に見る。
- X線で測ったずれはCTより小さく出ることがある。肩関節脱臼に合併した骨折では外科頸の骨折と後からのずれに注意する。
目的から読む: 大結節骨折とは / X線で見逃す理由 / MRI所見 / 転位の測り方 / 脱臼との関係 / 腱板断裂との違い
上腕骨大結節骨折とは? 腱板の付け根が折れる骨折
大結節は上腕骨の上端の外側にある出っ張りで、腱板の腱が付く場所です。ここだけが折れて、ほかの部分がつながっているものを「単独の大結節骨折」と呼びます。

大結節の解剖
上腕骨の上端(近位部)には、骨頭・解剖頸・大結節・小結節・外科頸があります。大結節は骨頭の外側にある出っ張りで、上から棘上筋、後ろ上から棘下筋、後ろから小円筋の腱が付きます。前方の小結節には肩甲下筋が付きます。つまり大結節は「腱板の付け根の骨」です。
このため、大結節が折れると骨片は腱板に引かれて上方や後方へずれやすくなります。ずれた骨片は肩を挙げたときに肩峰の下でぶつかる原因になり、腱板の働きも弱くなります。

単独骨折と、近位部骨折の一部としての大結節骨折
上腕骨近位部骨折は、骨頭・大結節・小結節・骨幹部の4つの部分のどれがずれているかで分類されます(Neer分類)。大結節だけが折れてほかの部分はつながっているものが「単独の大結節骨折」です。分類の考え方は上腕骨近位部骨折の画像所見とNeer分類で解説しています。
単独の大結節骨折は、上腕骨近位部骨折の最大20%を占めるとされます(Wangler 2025)。受傷の形は、肩を直接打つもの、転倒して手をつくもの、肩関節脱臼に合併するものなどさまざまです。

| 骨折の型(Shaw 2019の区分) | 特徴と報告 |
|---|---|
| split型 | 大きな骨片が縦に割れる型。68例中32例。初回に診断されなかった外科頸骨折(不顕性・見落としを合わせて)は21.9%(32例中7例) |
| avulsion型 | 腱板に引かれて小さな骨片がはがれる型。68例中32例。不顕性の外科頸骨折は3.1%(32例中1例) |
| depression型 | 大結節が押しつぶされて沈む型。68例中4例 |
split型とavulsion型の差は統計学的には有意ではありませんでした(p=0.056)が、骨片の形を見ることは、外科頸の骨折を探すきっかけになります(Shaw 2019)。なお原著の本文・要旨はsplit型の7例を「不顕性」と書いていますが、表の内訳は不顕性4例・見落とし3例です。
大結節骨折がX線(レントゲン)で見逃される理由: 不顕性骨折
ずれのない大結節骨折は、骨折線が細く骨片も元の位置にあるため、X線では骨の輪郭がほとんど変わりません。症状も腱板断裂に似るため、MRIで初めて見つかることがあります。
なぜ写らないのか
ずれのない大結節骨折では、骨折線が細く、骨片も元の位置にあるため、正面像では骨の輪郭がほとんど変わりません。大結節は骨頭の外側に重なって写るため、撮影の向きによっては骨折線が隠れます。
症状の面でも見逃されやすい骨折です。肩を挙げると痛む、夜間に痛む、力が入らないといった症状は腱板断裂と重なります。X線で骨折が見えないと、「腱板を痛めたのでは」としてMRIが撮られ、そこで初めて骨折が見つかる流れが報告されています(Mason 1999、Gumina 2009)。
手首の舟状骨や大腿骨頸部など、ほかの部位でX線に写りにくい骨折は見逃しやすい骨折まとめで、部位ごとの落とし穴と合わせて確かめられます。

大結節骨折のMRI所見: 骨折線と骨髄浮腫、腱板を一緒に見る
MRIでは、T1強調像で大結節を横切る低信号の線(骨折線)と、脂肪抑制T2強調像やSTIRでその周りの骨髄浮腫(高信号)を見ます。同じ検査で、腱板・上腕二頭筋長頭腱・関節唇の損傷も確かめます。
MRIで見つかった不顕性骨折の報告
受傷後5日以内に撮ったX線を放射線科の専門医が陰性と判定し、その後MRIで大結節骨折が見つかった17例の報告があります(Longo 2018)。保存的治療で多くは良好でしたが、3例は外傷後の痛みと拘縮に関節内注射が、3例は外傷後のインピンジメントに肩峰下除圧術が行われました。著者らは、痛み・圧痛・機能の制限が続く人はMRIで不顕性骨折を探すべきだとしています。
腱板断裂を疑ってMRIを撮り、見逃されていた大結節骨折が見つかった24例の報告もあります(Gumina 2009)。腱板の部分断裂は45.8%にあり、部分断裂のあった人はすべて40歳を超えていました。機能は16週で回復しています。
| MRIで見ること | 所見の内容 |
|---|---|
| 骨折線 | T1強調像で大結節を横切る低信号の線。脂肪抑制T2強調像やSTIRで周りの骨髄浮腫(高信号) |
| 骨片のずれ | 冠状断で上方へのずれ、横断像で後方へのずれ |
| 腱板 | 付着部の部分断裂・全層断裂・腱症。骨折と腱板の損傷が同時にあることが多い(Pitcher 2019) |
| 上腕二頭筋長頭腱・関節唇 | 部分断裂や関節唇の断裂の合併(Pitcher 2019) |
| 外科頸 | 外科頸の骨髄浮腫や骨折線(後から見つかる骨折の手がかり) |
肩のMRIで腱板・関節唇がどの断面にどう写るかは、肩MRIの正常解剖(斜位冠状断)でスライスごとに確かめられます。
引用元の図 転位のない大結節骨折のX線

引用:Longo UG, et al. Missed fractures of the greater tuberosity. BMC Musculoskelet Disord. 2018 (Fig. 1)。PMC6119252(CC BY 4.0)
転位のない大結節骨折の患者の肩のX線です(Longo 2018 Fig. 1)。骨片が元の位置にあるため、骨折線ははっきりしません。
引用元の図 MRIで見えた大結節の骨折線

引用:Longo UG, et al. Missed fractures of the greater tuberosity. BMC Musculoskelet Disord. 2018 (Fig. 2)。PMC6119252(CC BY 4.0)
同じ報告のMRIで、骨折線に沿った骨の吸収により、転位のない大結節骨折の骨折線が見えています(Longo 2018 Fig. 2)。
大結節骨折の転位(ずれ)の測り方: X線は小さく見えることがある
骨片のずれの大きさは、治療方針を考える大事な材料です。ただしX線で測ったずれは、CTで測ったずれより小さく出ることがあり、X線の外側への転位が3mm以上ならCTでの計測を考えます(Wangler 2025)。

転位の目安とX線計測の限界
単独の大結節骨折では、骨片のずれの大きさが治療方針を考える大事な材料になります。13研究・429肩を集めた系統的レビューでは、転位が5mm未満と5mmを超えるものに分けて比べています(Levy 2017)。保存的治療と手術の成績の差は、後ろの「根拠(もう少し詳しく)」にまとめました。
ここで注意したいのは、X線で測ったずれが本当のずれより小さく見えることがある点です。49例をX線とCTで比べた研究では、CTで測った平均の転位は上方3.3mm、後方8.4mm、上方と後方を合わせて11.6mmでした(Wangler 2025)。X線の「外側への転位」の計測は、転位5mm以上の骨折で合計の転位をもっともよく予測しましたが、CTの値より小さく出ました。著者らは、X線で外側への転位が3mm以上ならCTでの計測を考えるよう述べています(ただし、より大きな集団での確認が必要としています)。

| 検査 | 転位の評価で分かること |
|---|---|
| X線(正面像・肩甲骨Y像・腋窩像) | 上方へのずれは正面像で、後方へのずれは腋窩像や外側の輪郭で推定する。後方へのずれは正面像で見えにくい |
| CT・3D再構成 | 上方・後方のずれを分けて測れる。X線より大きな転位が見つかることがある(Wangler 2025) |
| MRI | X線とMRIの転位の計測に有意な差はなかった(X線2.8mm、MRI 3.5mm)。軟部組織の損傷を見る検査と考える(Pitcher 2019) |
後からずれることがある
受傷直後にずれがなくても、腱板に引かれて数週間のうちに骨片がずれることがあります。肩関節脱臼に合併した大結節骨折55例では、16%に遅れて大結節のずれが起きました(Saleem 2024)。著者らは、少なくとも2〜3週間は間隔をあけたX線で大結節のずれを確かめるよう勧めています。
肩関節脱臼に合併する大結節骨折: 外科頸の骨折に注意
大結節骨折は肩関節前方脱臼にしばしば合併し、ずれのある骨折ほど脱臼の合併が多くみられます。脱臼に合併した例では、整復の前後で外科頸の骨折を探し、整復後も大結節の位置を追います。
大結節骨折は肩関節前方脱臼にしばしば合併します。系統的レビューでは、前方の肩関節不安定性の合併が28.1%で、転位のある骨折で多くみられました(転位あり44.3%、転位なし14.5%)(Levy 2017)。脱臼の画像診断、バンカート損傷・ヒルサックス損傷については肩関節脱臼の画像診断にまとめています。
脱臼に合併した骨折は、合併症が少なくありません。55例の報告では、合併症の頻度は全体で47%、偽関節は27%でした(Saleem 2024)。整復に伴う医原性の外科頸骨折が6例(11%)に生じ、うち5例は65歳以上でした。整復後のX線では、大結節の位置だけでなく外科頸ももう一度確かめます。整復した場所による偽関節の差は、後ろの「根拠(もう少し詳しく)」にまとめました。
外科頸の骨折を見落とさない
「単独の大結節骨折」と診断された68例を見直した研究では、最初のX線で見えなかった外科頸骨折(不顕性)が7.4%、写っていたのに見落とされた外科頸骨折が4.4%でした(Shaw 2019)。外科頸に骨折があると、脱臼の整復や保存的治療の途中で骨頭がずれる危険があります。脱臼に合併した大結節骨折では、整復の前後で外科頸をよく見ることが大切です。

| 脱臼に合併した大結節骨折で見ること | 理由 |
|---|---|
| 外科頸の骨折線 | 不顕性・見落としの外科頸骨折がある(Shaw 2019)。整復の際に骨頭がずれる心配がある |
| 整復後の大結節の位置 | 整復で戻ることも、後からずれることもある(Saleem 2024) |
| 骨片の大きさ | 65歳以上では骨片が大きいほど偽関節が多かった。骨片が大きいほど、どちらの年齢群でもこわばりの危険が高かった(Saleem 2024) |
大結節骨折と腱板断裂の違い: 区別より「両方あるか」
大結節骨折と腱板断裂は症状がよく似ていて、同時に起こることも多い病気です。どちらか一方に決めるより、両方あるかどうかを見ます。
急性の単独大結節骨折でMRIを撮った32例の検討では、腱板の全層断裂が9%、部分断裂が72%、上腕二頭筋腱の部分断裂が41%、関節唇の断裂が50%にみられました(Pitcher 2019)。多変量解析では、腱板の部分断裂または上腕二頭筋腱の損傷があると、回復が遅れる傾向がありました。
一方で、1部分骨折(ずれのない大結節骨折)についての古い報告では、MRIで早期の手術が必要な腱板の異常は見つからず、X線で骨折と診断できれば不要なMRIや関節鏡を避けられると述べています(Mason 1999)。腱板断裂のMRIの読み方は腱板断裂のMRI画像診断のポイントで解説しています。

| 比べる点 | 大結節骨折 | 腱板断裂 |
|---|---|---|
| きっかけ | 転倒・打撲・脱臼などの外傷が多い | 外傷のほか、加齢による変性で起こることも多い |
| X線 | ずれがあれば骨片が見える。ずれがないと写らないことがある | 腱は写らない。進んだ例では骨頭が上に上がる |
| MRI | 大結節の骨折線と骨髄浮腫 | 腱の欠損・断裂部の液体の信号、腱の引き込み |
| 合併 | 骨折に腱板の部分断裂が並ぶことが多い(Pitcher 2019、Gumina 2009) | |
よくある勘違い
Q. レントゲンで「骨折なし」なら、大結節骨折は否定できる?
いいえ。ずれのない大結節骨折は、X線で陰性と判定され、MRIで見つかることが報告されています(Longo 2018、Gumina 2009)。痛み・圧痛・可動域制限が続くときはMRIを考えます。
Q. 正面像で測ったずれが小さければ、ずれは小さい?
そうとは限りません。骨片は後ろにもずれ、正面像では見えにくくなります。X線で測ったずれはCTより小さく出ることがあり、外側への転位が3mm以上ならCTでの計測を考えます(Wangler 2025)。
Q. 大結節骨折が見つかれば、腱板断裂は考えなくていい?
いいえ。単独の大結節骨折でMRIを撮った32例では、腱板の部分断裂が72%にありました(Pitcher 2019)。脱臼に合併した例では、外科頸の骨折と後からのずれも確かめます(Shaw 2019、Saleem 2024)。
今日のまとめ
- 大結節は腱板の付け根。骨片は上と後ろへ引かれ、症状は腱板断裂に似る。
- X線で骨折なしでも痛みが続けばMRI。骨折線・骨髄浮腫と腱板を一緒に見る。
- ずれはCTで測ると大きいことがある。脱臼合併では外科頸と2〜3週間の経過のX線。
根拠(もう少し詳しく): 要点と出典
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| どんな骨折か | 腱板が付く大結節だけが折れる。単独の大結節骨折は上腕骨近位部骨折の最大20%を占める(Wangler 2025) |
| 見逃しやすさ | ずれのない骨折はX線で陰性と判定されることがある。MRIで骨折線と骨髄浮腫が見つかる(Longo 2018、Gumina 2009) |
| MRIで見つかった24例の腱板 | 9例に腱板の腱症、11例に腱板の部分断裂(肩甲下筋2例、棘上筋6例、棘上筋と棘下筋3例)(Gumina 2009) |
| 転位の評価 | X線の計測はCTの転位より小さく出ることがあり、外側への転位が3mm以上ならCTでの計測を考える(Wangler 2025) |
| 保存的治療と手術の比較 | 手術をした群は保存的治療の群に比べてX線上の整復位の喪失が少なく(保存48.6%、手術5.2%)、肩のこわばりは手術群に多い結果だった(保存0.0%、手術5.7%)。異所性骨化は転位のある骨折に多くみられた(7.5%と0.0%)(Levy 2017) |
| 肩関節脱臼との関係 | 前方不安定性の合併は28.1%で、転位のある骨折に多い(Levy 2017) |
| 脱臼合併例の偽関節 | 救急外来で整復した例では偽関節が29%、手術室で整復した例では偽関節がなかった(Saleem 2024) |
| 腱板との関係 | 骨折に腱板の部分断裂が並ぶことが多く、回復の遅れと関係した報告がある(Pitcher 2019) |
参考文献
- Wangler S, Kohlprath R, Erdbrink S, et al. Isolated fracture of the greater tuberosity: prediction of superior and posterior fracture displacement on plain radiographs. J Shoulder Elbow Surg. 2025;34(7):1702-1711. PubMed
- Longo UG, Corbett S, Ahrens PM. Missed fractures of the greater tuberosity. BMC Musculoskelet Disord. 2018;19(1):313. PubMed
- Gumina S, Carbone S, Postacchini F. Occult fractures of the greater tuberosity of the humerus. Int Orthop. 2009;33(1):171-4. PubMed
- Mason BJ, Kier R, Bindleglass DF. Occult fractures of the greater tuberosity of the humerus: radiographic and MR imaging findings. AJR Am J Roentgenol. 1999;172(2):469-73. PubMed
- Pitcher A, Langhammer C, Feeley BT. Utility of MRI in the Evaluation of Acute Greater Tuberosity Proximal Humeral Fractures. Orthop J Sports Med. 2019;7(6):2325967119851472. PubMed
- Levy DM, Erickson BJ, Harris JD, et al. Management of Isolated Greater Tuberosity Fractures: A Systematic Review. Am J Orthop (Belle Mead NJ). 2017;46(6):E445-E453. PubMed
- Shaw L, Hong CK, Kuan FC, et al. The incidence of occult and missed surgical neck fractures in patients with isolated greater tuberosity fracture of the proximal humerus. BMC Musculoskelet Disord. 2019;20(1):482. PubMed
- Saleem J, Guevel B, Gillott E, et al. Radiological analysis and outcomes of isolated greater tuberosity fracture-dislocations. Ann R Coll Surg Engl. 2024;106(3):270-276. PubMed
症例画像は各図の引用元のとおりです。
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