多発性骨壊死 MRIでの見え方

多発性骨壊死(multifocal osteonecrosis)とは、骨壊死(虚血性骨壊死・無腐性骨壊死)が3か所以上の解剖学的部位に起きた状態です。多くはステロイド治療を受けた人に起こり、症状のない関節にも壊死が見つかります。研修医のハジメくんと一緒に、定義・原因・起こりやすい関節、MRIの帯状の低信号とdouble line sign、他の関節を調べる理由を順に整理します。

先に結論

  1. 多発性骨壊死とは、3か所以上の解剖学的部位に骨壊死があるもの。約9割にステロイド治療歴があり、大腿骨頭はほぼ全例、膝・肩・足首にも起こる。
  2. MRIはT1強調像の帯状の低信号が手がかり。T2強調像のdouble line signは化学シフトの影響を受け、ないことも多い。
  3. 症状のない関節にも壊死が見つかるため、股関節の骨壊死があって危険因子のある人は、他の関節も画像で調べる。

目的から読む: 多発性骨壊死とは(定義) / 原因(ステロイド・SLE・アルコール) / 起こりやすい関節 / MRI所見 / double line sign / 似た病気 / 他の関節の調べ方

多発性骨壊死とは? 定義は「3か所以上の骨壊死」

骨壊死が3か所以上の解剖学的部位にあるものを、多発性骨壊死と呼びます。2か所までは少数部位(oligofocal)として分けます。

ハジメハジメ(研修医)
先生、両側の大腿骨頭壊死の患者さんがいます。左右2か所あるので、これはもう多発性骨壊死ですよね?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
数えてみましょう。右の大腿骨頭、左の大腿骨頭で、何か所ですか?
ハジメハジメ(研修医)
2か所…あ、3か所に届いていません。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そうです。2か所なら少数部位です。そこに片側の膝が加われば3か所で、多発性骨壊死になります。数える単位は「関節」ではなく「解剖学的部位」です。
図1 少数部位と多発性骨壊死の数え方 全身の骨格の模式図で、両側の大腿骨頭だけの2か所は少数部位、両側の大腿骨頭に膝を加えた3か所は多発性骨壊死になることを比べます。
図1 少数部位と多発性骨壊死の数え方 全身の骨格の模式図で、両側の大腿骨頭だけの2か所は少数部位、両側の大腿骨頭に膝を加えた3か所は多発性骨壊死になることを比べます。

定義:3か所以上の解剖学的部位

骨壊死は、骨への血流が途絶えて骨の細胞が死んでしまう病気です。外傷のあとに起こるものと、外傷と関係なく起こるもの(非外傷性)があり、非外傷性の骨壊死は大腿骨頭に最も多く起こります。骨壊死の分類と関連する病気は、特発性骨壊死とその関連疾患にまとめています。

21施設が参加した多施設研究(Collaborative Osteonecrosis Group 1999)は、3か所以上の解剖学的部位に骨壊死があるものを多発性骨壊死(multifocal osteonecrosis)と定義しました。この定義は、その後の研究でも使われています(An 2019、Yokota 2021)。たとえば、両側の大腿骨頭と片側の膝に壊死があれば、3か所なので多発性骨壊死になります。2か所までは「oligofocal(少数部位)」として区別されます(An 2019)。

多発性骨壊死の頻度:調べる範囲で割合が変わる

骨壊死全体のうち多発性は、文献のまとめで約3%、骨シンチを撮った研究で約10%、全身MRIを撮った研究で約26%です。

ハジメハジメ(研修医)
3%と26%では、ずいぶん違いますね。どちらが正しいんですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
どちらも正しいと思います。違いのひとつは「どこまで探したか」です。暗い部屋で懐中電灯を当てた所だけ数えるか、部屋の明かりをつけて数えるか、のような違いです。ただし、調べる範囲や検査法に加えて、対象の患者さんも違います。26%は手術を受けた症状のある大腿骨頭壊死46例での数字なので、検査の範囲だけで割合の差を説明することはできません。
図2 調べる範囲と多発性骨壊死の割合 文献のまとめ約3%、全身骨シンチ10.2%、全身MRI26.0%の棒グラフです。無症状の関節まで調べるほど、多発性と診断される割合が上がります。対象集団が異なるため直接比較はできません。
図2 調べる範囲と多発性骨壊死の割合 文献のまとめ約3%、全身骨シンチ10.2%、全身MRI26.0%の棒グラフです。無症状の関節まで調べるほど、多発性と診断される割合が上がります。対象集団が異なるため直接比較はできません。
報告 対象 多発性骨壊死の割合
Matsumoto 2015 文献のまとめ 骨壊死全体の約3%。アルコールによる骨壊死のうち多発性は約6%
An 2019 MRIまたはX線で確認され、全身骨シンチを撮った骨壊死254例 26例(10.2%)
Yokota 2021 手術を受けた症状のある大腿骨頭壊死46例に全身MRI 12例(26.0%)
Sun 2016 危険の高い骨壊死の患者に、症状のない関節もMRIで検査 期間中の多発性骨壊死の割合が3.1%から5.2%に増えた

割合は、調べる関節の範囲と方法で大きく変わります。症状のある関節だけを調べると少なく見え、全身MRIで無症状の関節まで調べると多くなります。

多発性骨壊死の原因:ステロイドが最も多い

多発性骨壊死の約9割にステロイド治療歴があります(Collaborative Osteonecrosis Group 1999)。ほかに凝固異常、SLEなどの膠原病、炎症性腸疾患、腎移植、悪性腫瘍、アルコールが挙げられます(Matsumoto 2015)。

ハジメハジメ(研修医)
骨壊死はお年寄りの病気だと思っていたので、40歳前後の人に多いと聞いて意外でした。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
多発性骨壊死は、むしろ若い人に多い傾向があります。若い人がステロイドを使うのはどんな病気のときか、思い浮かべてみてください。SLE、炎症性腸疾患、移植、血液の病気…。どれも、ステロイドや免疫抑制薬を長く使う病気です。
図3 多発性骨壊死の主な原因と危険因子 ステロイド治療を中心に、凝固異常・SLEなどの膠原病・炎症性腸疾患・腎移植・悪性腫瘍・アルコールを並べた、原因と危険因子の整理図です。
図3 多発性骨壊死の主な原因と危険因子 ステロイド治療を中心に、凝固異常・SLEなどの膠原病・炎症性腸疾患・腎移植・悪性腫瘍・アルコールを並べた、原因と危険因子の整理図です。

ステロイドが最も多い

Collaborative Osteonecrosis Group 1999の101例では、92例(91%)にステロイド治療歴があり、凝固の検査を受けた14例のうち12例に凝固異常が見つかりました。An 2019では、若いこと、併存疾患があること、現在ステロイドを使っていること、免疫抑制薬の使用が、多発性骨壊死と関連していました(オッズ比は後ろの「根拠」にまとめます)。多発性骨壊死の患者の平均年齢は42.8歳で、少数部位の患者の50.9歳より若い結果でした。

Yokota 2021でも、多発性骨壊死の12例は全例にステロイド治療歴があり、血液の病気のある患者で多発性骨壊死の割合が高くなっていました。

その他の原因

多発性骨壊死の原因として、ステロイド治療のほかに、凝固異常、全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病、炎症性腸疾患、腎移植、悪性腫瘍が挙げられています(Matsumoto 2015)。アルコールも骨壊死の危険因子で、アルコールによる骨壊死は骨壊死全体の5%、そのうち多発性は約6%と報告されています(Matsumoto 2015)。

SLEでは、多発性骨壊死はSLE患者の約3%に起こると推定されています。13歳の女児で、SLEの診断から20か月後に両膝に多発する骨壊死が見つかった報告もあります(Jin 2021)。小児や若い人でも、ステロイドを使う病気があれば骨壊死を考えます。

多発性骨壊死が起こりやすい関節:股関節・膝・肩・足首

101例の多施設研究では、大腿骨頭は全例、膝96%、肩80%、足首44%で、多くは両側でした。1人あたり平均6.2か所です(Collaborative Osteonecrosis Group 1999)。

ハジメハジメ(研修医)
膝が痛くて来た人なら、膝のMRIだけ撮れば十分ですよね?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
膝だけが痛くて受診した人が11例いましたが、この研究では全員の大腿骨頭に壊死がありました。痛む所と、壊死がある所は一致しない。ここが多発性骨壊死のいちばんのつまずきです。
図4 多発性骨壊死の部位ごとの頻度 101例で壊死があった割合(大腿骨頭100%・膝96%・肩80%・足首44%)に、両側の割合(股関節98%・膝86%・肩83%)を重ねたグラフです。
図4 多発性骨壊死の部位ごとの頻度 101例で壊死があった割合(大腿骨頭100%・膝96%・肩80%・足首44%)に、両側の割合(股関節98%・膝86%・肩83%)を重ねたグラフです。
部位 割合(Collaborative Osteonecrosis Group 1999、101例) 両側に起きた割合
大腿骨頭(股関節) 101例全例 98%
膝 96% 86%
肩(上腕骨頭) 80% 83%
足首 44% 記載なし

この101例では、合計631関節に壊死があり、1人あたり平均6.2か所でした。ほかにも7つの部位に壊死が見られています。受診したときには69%の病変がまだ骨頭がつぶれる前(圧潰前)の段階でした。膝だけが痛くて受診した人が11例、肩だけが5例、足首だけが4例いました(Collaborative Osteonecrosis Group 1999)。股関節が痛くなくても、大腿骨頭に壊死がある、ということです。

多発性骨壊死のMRI所見:T1強調像の帯状の低信号

T1強調像で、壊死した部分を縁取る帯状(地図状)の低信号の線を探します。どの関節でも、見方は大腿骨頭壊死と同じです。

ハジメハジメ(研修医)
壊死なら、死んだ骨のところ全体が真っ黒に見えるんでしょうか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そう思いがちですが、違います。壊死の中心は脂肪髄の明るさが残っていることが多く、黒いのはそのまわりの線です。島の海岸線だけが黒く描かれた地図を思い浮かべてください。中が明るいからといって、正常と読まないことです。
図5 大腿骨頭壊死のT1強調冠状断 大腿骨頭の関節面の下に、帯状の低信号の線が地図状に壊死部を縁取る模式図です。壊死の中心は脂肪髄の明るさが残ります(画面の左=患者さんの右)。
図5 大腿骨頭壊死のT1強調冠状断 大腿骨頭の関節面の下に、帯状の低信号の線が地図状に壊死部を縁取る模式図です。壊死の中心は脂肪髄の明るさが残ります(画面の左=患者さんの右)。

T1強調像の帯状の低信号

骨壊死のMRIでは、T1強調像で壊死した部分を囲む帯状(地図状)の低信号の線が特徴です。壊死の中心部は脂肪髄の信号が保たれていることが多く、その周りを低信号の線が縁取るように見えます。大腿骨頭では、関節面の下に地図状の領域として現れます。関節面がつぶれた段階では、骨頭の形の変化や関節面の段差も見ます。

ごろ〜ごろ〜(指導医)
大腿骨頭壊死そのものの原因・X線所見・治療は、大腿骨頭壊死症とは?原因・症状とMRI(バンド像)・X線所見で症例と合わせて見られます。実際の多発例として、多発性骨壊死の患者さんの左膝MRIを見てみましょう。

引用元の図 アルコールによる多発性骨壊死のMRI

アルコールによる多発性骨壊死の左膝T1強調冠状断MRI。大腿骨遠位部に境界明瞭な骨髄の異常が多発しdouble line signを伴う
引用:Matsumoto K, et al. Case Rep Orthop 2015(Figure 4)(CC BY)

図:長年の飲酒がある人に起きた多発性骨壊死の報告から、左膝のT1強調冠状断像です。大腿骨遠位部に境界のはっきりした骨髄の異常が多発し、double line signを伴っていて、骨壊死に合う所見です。この報告では、両膝と右股関節の3か所に骨壊死が確認されました。これとは別に、1年前に左股関節の骨壊死で人工骨頭置換術を受けています(Matsumoto 2015)。

double line signとは? T2強調像の二重の線

T2強調像で、低信号の縁の内側に高信号の帯が並ぶ所見です(Sugimoto 1992)。早期の大腿骨頭壊死で知られますが、見え方には化学シフトのアーチファクトが関わり、骨壊死でも見られないことがあります。

ハジメハジメ(研修医)
T2で二重の線が見えなかったので、骨壊死は否定的と書きそうになりました。
マサマサ(技師)
……その白い帯、周波数エンコードの方向を入れ替えて撮ると、出る側が変わるんですよ。脂肪と水の共鳴周波数のずれで、画像の上で位置がずれる。化学シフトです。だから、撮り方しだいで目立ったり目立たなかったりします。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
マサさんの言うとおりで、二重の線は「あれば手がかり、なくても否定しない」所見です。判断の軸は、T1強調像の帯状の低信号と、その形・場所に置きます。
図6 double line signと化学シフト T2強調像で低信号の縁の内側に高信号の帯が並ぶ模式図です。周波数方向を入れ替えると、高信号の帯の出る側が反対に変わることを左右で比べます。
図6 double line signと化学シフト T2強調像で低信号の縁の内側に高信号の帯が並ぶ模式図です。周波数方向を入れ替えると、高信号の帯の出る側が反対に変わることを左右で比べます。

double line sign

T2強調像で、低信号の縁の内側に高信号の帯が並んで見えるものを double line sign と呼びます(Sugimoto 1992)。早期の大腿骨頭壊死で見られる所見として知られています。ただし、周波数方向を入れ替えると高信号の帯が出る側が変わり、低信号の縁の厚さが化学シフトによるずれの幅とほぼ同じだったことから、Sugimoto 1992は「化学シフトのアーチファクトで説明できる」と報告しました。大腿骨頭壊死8例と骨梗塞3例の検討(Duda 1993)では、11例中8例でT2強調像にdouble line signが見られ、水だけの画像と比べると、化学シフトのアーチファクトが高信号の帯の見え方と位置に関わっていました。また、3例は骨壊死であってもdouble line signが見られませんでした。

double line signがなくても骨壊死は否定できません。T1強調像の帯状の低信号と、その形・場所を合わせて判断します。

骨壊死と似た見え方をする病気(鑑別)

関節面の下の低信号は、軟骨下脆弱性骨折(SIF)や一過性の骨髄浮腫でも見られます。ステロイド治療歴・若い年齢・複数の関節という背景も、見分けの手がかりです。

ハジメハジメ(研修医)
関節面の下に黒い線があれば、骨壊死と考えていいですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
似た線は骨折でも出ます。年配の方に急に出た痛みなら、脆弱性骨折も考えます。線の形と場所、そして患者さんの背景をいっしょに見てください。

似た見え方をする病気

関節面の下の低信号は、骨壊死のほかに、軟骨下脆弱性骨折(SIF)や一過性の骨髄浮腫でも見られます。大腿骨頭では大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折(SIF・SIFFH)と大腿骨頭壊死の違い、膝では大腿骨内顆の軟骨下脆弱性骨折(SIFK)と骨壊死の違いで、見分け方を説明しています。多発性骨壊死を疑う背景(ステロイド治療歴、若い年齢、複数の関節)があるかどうかも、見分けの手がかりになります。

他の関節も調べる理由:無症状の骨壊死が多い

全身MRIで見つかった骨壊死の約4割は無症状でした(Yokota 2021)。圧潰前の段階で見つかれば治療の選択肢が増えるため、危険因子のある人では症状のない関節も調べます。

ハジメハジメ(研修医)
痛くない関節まで調べるのは、やりすぎではないですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
危険の高い102例を調べ直した研究では、31例、約3割で新たに多発性骨壊死が見つかっています(Sun 2016)。21施設の101例では、受診時に69%の病変がまだ圧潰前でした。つぶれる前に見つけられるかどうか、そこに意味があります。
図7 他の関節を調べる流れ 股関節の骨壊死では症状のある関節すべてをX線で、大腿骨頭以外の骨壊死では症状がなくても大腿骨頭を調べる、危険因子があれば全身の検査を考える流れ図です。
図7 他の関節を調べる流れ 股関節の骨壊死では症状のある関節すべてをX線で、大腿骨頭以外の骨壊死では症状がなくても大腿骨頭を調べる、危険因子があれば全身の検査を考える流れ図です。

無症状の壊死が多い

Yokota 2021では、全身MRIで見つかった152関節の骨壊死のうち、92関節(60.5%)は症状があり、60関節(39.5%)は症状がありませんでした。Sun 2016は、股関節と膝の両方に骨壊死がある人や、ステロイド治療歴・アルコール多飲があって肩・足首・手首・肘のどこかに骨壊死がある人に、症状の有無にかかわらず他の関節のMRIを撮りました。多発性骨壊死と診断されていなかった危険の高い102例を調べ直したところ、31例(30.4%)で新たに多発性骨壊死が見つかっています。

圧潰前の段階で見つかれば、治療の選択肢が増えます。Collaborative Osteonecrosis Group 1999は、股関節の骨壊死がある人では症状のある関節すべてをX線で調べ、大腿骨頭以外の骨壊死が見つかった人では、症状がなくても大腿骨頭をX線で調べるよう勧めています。無症状の関節に見つかった壊死を経過観察にするか治療するかは、壊死の大きさ・場所・段階で変わります。

全身骨シンチと全身MRI、どちらで探すか

骨シンチは全身を一度に見られますが、無症状の小さな壊死は描出しにくい検査です。全身MRIでは、無症状の骨壊死のうち骨シンチで集積として見えたのは約2割でした(Yokota 2021)。

ハジメハジメ(研修医)
じゃあ骨シンチで集積がなければ、ほかの関節は大丈夫と言えますね。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そこが逆なんです。症状のある骨壊死は8割ほど集積として見えましたが、症状のないものは2割ほどでした。集積がないことは「ない」の証明にはなりません。
図8 骨シンチで描出できた骨壊死の割合 全身MRIで見つかった骨壊死のうち、骨シンチで集積として見えた割合を、症状あり82.6%と症状なし21.7%で比べた棒グラフです。
図8 骨シンチで描出できた骨壊死の割合 全身MRIで見つかった骨壊死のうち、骨シンチで集積として見えた割合を、症状あり82.6%と症状なし21.7%で比べた棒グラフです。

全身骨シンチと全身MRI

検査 報告されていること
全身骨シンチ(99mTc標識の骨シンチ) 多発性骨壊死の危険因子(若年、ステロイド、併存疾患)がある人で、追加の検査として役立つ可能性(An 2019)。一方、全身MRIで見つかった症状のある骨壊死の82.6%は集積として描出できたが、無症状の骨壊死は21.7%しか描出できなかった(Yokota 2021)
全身MRI 股関節では骨シンチとの一致は中等度(κ=0.584)、他の関節では低かった(κ<0.40)。費用・時間・被ばくを考えると、多発性骨壊死の評価に役立つ可能性がある(Yokota 2021)

どの関節を、どの検査で調べるかは、症状・危険因子・施設の体制によって決めます。骨シンチは全身を一度に見られる一方、無症状の小さな壊死は描出しにくい、という特徴があります。

引用元の図 同じ患者の骨シンチ

アルコールによる多発性骨壊死の骨シンチ。右股関節と両膝に異常集積
引用:Matsumoto K, et al. Case Rep Orthop 2015(Figure 2)(CC BY)

図:上のMRIと同じ、アルコールによる多発性骨壊死の患者の骨シンチです。右股関節(a、b)と左右の膝関節(a、c)に異常な集積があります。

薬の副作用として起こる骨の病変は、薬剤や治療が原因で起こりうる骨軟部病変でも扱っています。

根拠(もう少し詳しく):報告された数字の一覧

項目 ポイント
定義 3か所以上の解剖学的部位に骨壊死があるもの(Collaborative Osteonecrosis Group 1999、An 2019)
頻度 骨壊死全体の約3%(Matsumoto 2015)。骨シンチを撮った骨壊死254例では10.2%(An 2019)
原因 101例中92例(91%)にステロイド治療歴(Collaborative Osteonecrosis Group 1999)。SLE、凝固異常、炎症性腸疾患、腎移植、アルコールなど
多発性と関連した因子(An 2019) 年齢(オッズ比0.964、年齢が上がるほど少ない)、併存疾患あり(オッズ比3.387)、現在のステロイド使用(オッズ比5.696)、免疫抑制薬の使用(オッズ比3.447)
他の関節を調べる理由 全身MRIで見つかった骨壊死152関節のうち39.5%は無症状(Yokota 2021)。危険の高い人を検査すると、102例中31例で多発性骨壊死が新たに見つかった(Sun 2016)

よくある勘違い

Q. 両側の大腿骨頭壊死なら、多発性骨壊死?

いいえ。2か所までは少数部位(oligofocal)です。3か所以上の解剖学的部位に壊死があって、多発性骨壊死と呼びます。

Q. double line signがなければ、骨壊死ではない?

いいえ。11例中3例の骨壊死ではdouble line signが見られなかったという報告があります(Duda 1993)。T1強調像の帯状の低信号などとあわせて判断します。

Q. 骨シンチで集積がなければ、他の関節に骨壊死はない?

言えません。全身MRIで見つかった無症状の骨壊死のうち、骨シンチで集積として見えたのは21.7%でした(Yokota 2021)。

今日のまとめ

  1. 多発性骨壊死は3か所以上の骨壊死。ステロイド治療歴・若い年齢・併存疾患が手がかり。
  2. MRIはT1強調像の帯状の低信号を軸に読む。double line signはなくても否定しない。
  3. 痛む所と壊死のある所は一致しない。危険因子があれば症状のない関節も調べる。

参考文献

  1. Collaborative Osteonecrosis Group. Symptomatic multifocal osteonecrosis. A multicenter study. Clin Orthop Relat Res. 1999;(369):312-26. PubMed
  2. An YS, Park S, Jung JY, et al. Clinical characteristics and role of whole-body bone scan in multifocal osteonecrosis. BMC Musculoskelet Disord. 2019;20(1):23. PubMed
  3. Yokota S, Sakamoto K, Shimizu Y, et al. Evaluation of whole-body modalities for diagnosis of multifocal osteonecrosis-a pilot study. Arthritis Res Ther. 2021;23(1):83. PubMed
  4. Sun W, Shi Z, Gao F, et al. The pathogenesis of multifocal osteonecrosis. Sci Rep. 2016;6:29576. PubMed
  5. Matsumoto K, Ogawa H, Akiyama H. Multifocal Osteonecrosis Secondary to Chronic Alcohol Ingestion. Case Rep Orthop. 2015;2015:137273. PubMed
  6. Jin W, Yang X, Lu M. Juvenile-onset multifocal osteonecrosis in systemic lupus erythematosus: A case report. Medicine (Baltimore). 2021;100(2):e24031. PubMed
  7. Sugimoto H, Okubo RS, Ohsawa T. Chemical shift and the double-line sign in MRI of early femoral avascular necrosis. J Comput Assist Tomogr. 1992;16(5):727-30. PubMed
  8. Duda SH, Laniado M, Schick F, et al. The double-line sign of osteonecrosis: evaluation on chemical shift MR images. Eur J Radiol. 1993;16(3):233-8. PubMed

症例画像は各図の引用元のとおりです。

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