
多発性骨壊死(multifocal osteonecrosis)とは、骨壊死(虚血性骨壊死・無腐性骨壊死)が3か所以上の解剖学的部位に起きた状態です。多くはステロイド治療を受けた人に起こり、症状のない関節にも壊死が見つかります。研修医のハジメくんと一緒に、定義・原因・起こりやすい関節、MRIの帯状の低信号とdouble line sign、他の関節を調べる理由を順に整理します。
先に結論
- 多発性骨壊死とは、3か所以上の解剖学的部位に骨壊死があるもの。約9割にステロイド治療歴があり、大腿骨頭はほぼ全例、膝・肩・足首にも起こる。
- MRIはT1強調像の帯状の低信号が手がかり。T2強調像のdouble line signは化学シフトの影響を受け、ないことも多い。
- 症状のない関節にも壊死が見つかるため、股関節の骨壊死があって危険因子のある人は、他の関節も画像で調べる。
目的から読む: 多発性骨壊死とは(定義) / 原因(ステロイド・SLE・アルコール) / 起こりやすい関節 / MRI所見 / double line sign / 似た病気 / 他の関節の調べ方
多発性骨壊死とは? 定義は「3か所以上の骨壊死」
骨壊死が3か所以上の解剖学的部位にあるものを、多発性骨壊死と呼びます。2か所までは少数部位(oligofocal)として分けます。

定義:3か所以上の解剖学的部位
骨壊死は、骨への血流が途絶えて骨の細胞が死んでしまう病気です。外傷のあとに起こるものと、外傷と関係なく起こるもの(非外傷性)があり、非外傷性の骨壊死は大腿骨頭に最も多く起こります。骨壊死の分類と関連する病気は、特発性骨壊死とその関連疾患にまとめています。
21施設が参加した多施設研究(Collaborative Osteonecrosis Group 1999)は、3か所以上の解剖学的部位に骨壊死があるものを多発性骨壊死(multifocal osteonecrosis)と定義しました。この定義は、その後の研究でも使われています(An 2019、Yokota 2021)。たとえば、両側の大腿骨頭と片側の膝に壊死があれば、3か所なので多発性骨壊死になります。2か所までは「oligofocal(少数部位)」として区別されます(An 2019)。
多発性骨壊死の頻度:調べる範囲で割合が変わる
骨壊死全体のうち多発性は、文献のまとめで約3%、骨シンチを撮った研究で約10%、全身MRIを撮った研究で約26%です。

| 報告 | 対象 | 多発性骨壊死の割合 |
|---|---|---|
| Matsumoto 2015 | 文献のまとめ | 骨壊死全体の約3%。アルコールによる骨壊死のうち多発性は約6% |
| An 2019 | MRIまたはX線で確認され、全身骨シンチを撮った骨壊死254例 | 26例(10.2%) |
| Yokota 2021 | 手術を受けた症状のある大腿骨頭壊死46例に全身MRI | 12例(26.0%) |
| Sun 2016 | 危険の高い骨壊死の患者に、症状のない関節もMRIで検査 | 期間中の多発性骨壊死の割合が3.1%から5.2%に増えた |
割合は、調べる関節の範囲と方法で大きく変わります。症状のある関節だけを調べると少なく見え、全身MRIで無症状の関節まで調べると多くなります。
多発性骨壊死の原因:ステロイドが最も多い
多発性骨壊死の約9割にステロイド治療歴があります(Collaborative Osteonecrosis Group 1999)。ほかに凝固異常、SLEなどの膠原病、炎症性腸疾患、腎移植、悪性腫瘍、アルコールが挙げられます(Matsumoto 2015)。

ステロイドが最も多い
Collaborative Osteonecrosis Group 1999の101例では、92例(91%)にステロイド治療歴があり、凝固の検査を受けた14例のうち12例に凝固異常が見つかりました。An 2019では、若いこと、併存疾患があること、現在ステロイドを使っていること、免疫抑制薬の使用が、多発性骨壊死と関連していました(オッズ比は後ろの「根拠」にまとめます)。多発性骨壊死の患者の平均年齢は42.8歳で、少数部位の患者の50.9歳より若い結果でした。
Yokota 2021でも、多発性骨壊死の12例は全例にステロイド治療歴があり、血液の病気のある患者で多発性骨壊死の割合が高くなっていました。
その他の原因
多発性骨壊死の原因として、ステロイド治療のほかに、凝固異常、全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病、炎症性腸疾患、腎移植、悪性腫瘍が挙げられています(Matsumoto 2015)。アルコールも骨壊死の危険因子で、アルコールによる骨壊死は骨壊死全体の5%、そのうち多発性は約6%と報告されています(Matsumoto 2015)。
SLEでは、多発性骨壊死はSLE患者の約3%に起こると推定されています。13歳の女児で、SLEの診断から20か月後に両膝に多発する骨壊死が見つかった報告もあります(Jin 2021)。小児や若い人でも、ステロイドを使う病気があれば骨壊死を考えます。
多発性骨壊死が起こりやすい関節:股関節・膝・肩・足首
101例の多施設研究では、大腿骨頭は全例、膝96%、肩80%、足首44%で、多くは両側でした。1人あたり平均6.2か所です(Collaborative Osteonecrosis Group 1999)。

| 部位 | 割合(Collaborative Osteonecrosis Group 1999、101例) | 両側に起きた割合 |
|---|---|---|
| 大腿骨頭(股関節) | 101例全例 | 98% |
| 膝 | 96% | 86% |
| 肩(上腕骨頭) | 80% | 83% |
| 足首 | 44% | 記載なし |
この101例では、合計631関節に壊死があり、1人あたり平均6.2か所でした。ほかにも7つの部位に壊死が見られています。受診したときには69%の病変がまだ骨頭がつぶれる前(圧潰前)の段階でした。膝だけが痛くて受診した人が11例、肩だけが5例、足首だけが4例いました(Collaborative Osteonecrosis Group 1999)。股関節が痛くなくても、大腿骨頭に壊死がある、ということです。
多発性骨壊死のMRI所見:T1強調像の帯状の低信号
T1強調像で、壊死した部分を縁取る帯状(地図状)の低信号の線を探します。どの関節でも、見方は大腿骨頭壊死と同じです。

T1強調像の帯状の低信号
骨壊死のMRIでは、T1強調像で壊死した部分を囲む帯状(地図状)の低信号の線が特徴です。壊死の中心部は脂肪髄の信号が保たれていることが多く、その周りを低信号の線が縁取るように見えます。大腿骨頭では、関節面の下に地図状の領域として現れます。関節面がつぶれた段階では、骨頭の形の変化や関節面の段差も見ます。
引用元の図 アルコールによる多発性骨壊死のMRI

引用:Matsumoto K, et al. Case Rep Orthop 2015(Figure 4)(CC BY)
図:長年の飲酒がある人に起きた多発性骨壊死の報告から、左膝のT1強調冠状断像です。大腿骨遠位部に境界のはっきりした骨髄の異常が多発し、double line signを伴っていて、骨壊死に合う所見です。この報告では、両膝と右股関節の3か所に骨壊死が確認されました。これとは別に、1年前に左股関節の骨壊死で人工骨頭置換術を受けています(Matsumoto 2015)。
double line signとは? T2強調像の二重の線
T2強調像で、低信号の縁の内側に高信号の帯が並ぶ所見です(Sugimoto 1992)。早期の大腿骨頭壊死で知られますが、見え方には化学シフトのアーチファクトが関わり、骨壊死でも見られないことがあります。

double line sign
T2強調像で、低信号の縁の内側に高信号の帯が並んで見えるものを double line sign と呼びます(Sugimoto 1992)。早期の大腿骨頭壊死で見られる所見として知られています。ただし、周波数方向を入れ替えると高信号の帯が出る側が変わり、低信号の縁の厚さが化学シフトによるずれの幅とほぼ同じだったことから、Sugimoto 1992は「化学シフトのアーチファクトで説明できる」と報告しました。大腿骨頭壊死8例と骨梗塞3例の検討(Duda 1993)では、11例中8例でT2強調像にdouble line signが見られ、水だけの画像と比べると、化学シフトのアーチファクトが高信号の帯の見え方と位置に関わっていました。また、3例は骨壊死であってもdouble line signが見られませんでした。
double line signがなくても骨壊死は否定できません。T1強調像の帯状の低信号と、その形・場所を合わせて判断します。
骨壊死と似た見え方をする病気(鑑別)
関節面の下の低信号は、軟骨下脆弱性骨折(SIF)や一過性の骨髄浮腫でも見られます。ステロイド治療歴・若い年齢・複数の関節という背景も、見分けの手がかりです。
似た見え方をする病気
関節面の下の低信号は、骨壊死のほかに、軟骨下脆弱性骨折(SIF)や一過性の骨髄浮腫でも見られます。大腿骨頭では大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折(SIF・SIFFH)と大腿骨頭壊死の違い、膝では大腿骨内顆の軟骨下脆弱性骨折(SIFK)と骨壊死の違いで、見分け方を説明しています。多発性骨壊死を疑う背景(ステロイド治療歴、若い年齢、複数の関節)があるかどうかも、見分けの手がかりになります。
他の関節も調べる理由:無症状の骨壊死が多い
全身MRIで見つかった骨壊死の約4割は無症状でした(Yokota 2021)。圧潰前の段階で見つかれば治療の選択肢が増えるため、危険因子のある人では症状のない関節も調べます。

無症状の壊死が多い
Yokota 2021では、全身MRIで見つかった152関節の骨壊死のうち、92関節(60.5%)は症状があり、60関節(39.5%)は症状がありませんでした。Sun 2016は、股関節と膝の両方に骨壊死がある人や、ステロイド治療歴・アルコール多飲があって肩・足首・手首・肘のどこかに骨壊死がある人に、症状の有無にかかわらず他の関節のMRIを撮りました。多発性骨壊死と診断されていなかった危険の高い102例を調べ直したところ、31例(30.4%)で新たに多発性骨壊死が見つかっています。
圧潰前の段階で見つかれば、治療の選択肢が増えます。Collaborative Osteonecrosis Group 1999は、股関節の骨壊死がある人では症状のある関節すべてをX線で調べ、大腿骨頭以外の骨壊死が見つかった人では、症状がなくても大腿骨頭をX線で調べるよう勧めています。無症状の関節に見つかった壊死を経過観察にするか治療するかは、壊死の大きさ・場所・段階で変わります。
全身骨シンチと全身MRI、どちらで探すか
骨シンチは全身を一度に見られますが、無症状の小さな壊死は描出しにくい検査です。全身MRIでは、無症状の骨壊死のうち骨シンチで集積として見えたのは約2割でした(Yokota 2021)。

全身骨シンチと全身MRI
| 検査 | 報告されていること |
|---|---|
| 全身骨シンチ(99mTc標識の骨シンチ) | 多発性骨壊死の危険因子(若年、ステロイド、併存疾患)がある人で、追加の検査として役立つ可能性(An 2019)。一方、全身MRIで見つかった症状のある骨壊死の82.6%は集積として描出できたが、無症状の骨壊死は21.7%しか描出できなかった(Yokota 2021) |
| 全身MRI | 股関節では骨シンチとの一致は中等度(κ=0.584)、他の関節では低かった(κ<0.40)。費用・時間・被ばくを考えると、多発性骨壊死の評価に役立つ可能性がある(Yokota 2021) |
どの関節を、どの検査で調べるかは、症状・危険因子・施設の体制によって決めます。骨シンチは全身を一度に見られる一方、無症状の小さな壊死は描出しにくい、という特徴があります。
引用元の図 同じ患者の骨シンチ

引用:Matsumoto K, et al. Case Rep Orthop 2015(Figure 2)(CC BY)
図:上のMRIと同じ、アルコールによる多発性骨壊死の患者の骨シンチです。右股関節(a、b)と左右の膝関節(a、c)に異常な集積があります。
薬の副作用として起こる骨の病変は、薬剤や治療が原因で起こりうる骨軟部病変でも扱っています。
根拠(もう少し詳しく):報告された数字の一覧
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 定義 | 3か所以上の解剖学的部位に骨壊死があるもの(Collaborative Osteonecrosis Group 1999、An 2019) |
| 頻度 | 骨壊死全体の約3%(Matsumoto 2015)。骨シンチを撮った骨壊死254例では10.2%(An 2019) |
| 原因 | 101例中92例(91%)にステロイド治療歴(Collaborative Osteonecrosis Group 1999)。SLE、凝固異常、炎症性腸疾患、腎移植、アルコールなど |
| 多発性と関連した因子(An 2019) | 年齢(オッズ比0.964、年齢が上がるほど少ない)、併存疾患あり(オッズ比3.387)、現在のステロイド使用(オッズ比5.696)、免疫抑制薬の使用(オッズ比3.447) |
| 他の関節を調べる理由 | 全身MRIで見つかった骨壊死152関節のうち39.5%は無症状(Yokota 2021)。危険の高い人を検査すると、102例中31例で多発性骨壊死が新たに見つかった(Sun 2016) |
よくある勘違い
Q. 両側の大腿骨頭壊死なら、多発性骨壊死?
いいえ。2か所までは少数部位(oligofocal)です。3か所以上の解剖学的部位に壊死があって、多発性骨壊死と呼びます。
Q. double line signがなければ、骨壊死ではない?
いいえ。11例中3例の骨壊死ではdouble line signが見られなかったという報告があります(Duda 1993)。T1強調像の帯状の低信号などとあわせて判断します。
Q. 骨シンチで集積がなければ、他の関節に骨壊死はない?
言えません。全身MRIで見つかった無症状の骨壊死のうち、骨シンチで集積として見えたのは21.7%でした(Yokota 2021)。
今日のまとめ
- 多発性骨壊死は3か所以上の骨壊死。ステロイド治療歴・若い年齢・併存疾患が手がかり。
- MRIはT1強調像の帯状の低信号を軸に読む。double line signはなくても否定しない。
- 痛む所と壊死のある所は一致しない。危険因子があれば症状のない関節も調べる。
参考文献
- Collaborative Osteonecrosis Group. Symptomatic multifocal osteonecrosis. A multicenter study. Clin Orthop Relat Res. 1999;(369):312-26. PubMed
- An YS, Park S, Jung JY, et al. Clinical characteristics and role of whole-body bone scan in multifocal osteonecrosis. BMC Musculoskelet Disord. 2019;20(1):23. PubMed
- Yokota S, Sakamoto K, Shimizu Y, et al. Evaluation of whole-body modalities for diagnosis of multifocal osteonecrosis-a pilot study. Arthritis Res Ther. 2021;23(1):83. PubMed
- Sun W, Shi Z, Gao F, et al. The pathogenesis of multifocal osteonecrosis. Sci Rep. 2016;6:29576. PubMed
- Matsumoto K, Ogawa H, Akiyama H. Multifocal Osteonecrosis Secondary to Chronic Alcohol Ingestion. Case Rep Orthop. 2015;2015:137273. PubMed
- Jin W, Yang X, Lu M. Juvenile-onset multifocal osteonecrosis in systemic lupus erythematosus: A case report. Medicine (Baltimore). 2021;100(2):e24031. PubMed
- Sugimoto H, Okubo RS, Ohsawa T. Chemical shift and the double-line sign in MRI of early femoral avascular necrosis. J Comput Assist Tomogr. 1992;16(5):727-30. PubMed
- Duda SH, Laniado M, Schick F, et al. The double-line sign of osteonecrosis: evaluation on chemical shift MR images. Eur J Radiol. 1993;16(3):233-8. PubMed
症例画像は各図の引用元のとおりです。
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