
限局性背側脊髄裂(limited dorsal myeloschisis、LDM)とは、背中の正中の小さな皮膚欠損と、そこから脊髄へつながる線維神経性の「茎」を持つ、皮膚で覆われた(閉鎖性の)脊髄癒合不全です。背側皮膚洞と取り違えやすいこの病気を、研修医のハジメくんと一緒に、MRIで茎と脊髄の形をたどる順番で整理します。
先に結論
- 限局性背側脊髄裂(LDM)とは、正中の小さな皮膚欠損と、そこから脊髄へつながる線維神経性の茎の2つで決まる、閉鎖性の脊髄癒合不全(Pang 2013)。
- MRIでは、くも膜下腔の中に茎が見え、付着部で脊髄が背側へテント状に引かれる形が、背側皮膚洞よりLDMを考える手がかり(Lee 2017)。
- 茎は脊髄を係留する病変で、治療は茎を脊髄から切り離す手術。時期は症状・画像・年齢から脳神経外科が判断する(Pang 2013)。
目的から読む: LDMとは / 嚢状型と非嚢状型 / MRI所見 / 背側皮膚洞・脊髄髄膜瘤との違い / 係留と治療 / 読影の順番
限局性背側脊髄裂(LDM)とは? 皮膚欠損と茎の2点で決まる
LDMは、皮膚で覆われた正中の小さな皮膚欠損と、その皮膚から脊髄の背側へつながる線維神経性の茎(fibroneural stalk)の2つを共通して持つ病気です(Pang 2013)。脊髄癒合不全のうち、皮膚で覆われている「閉鎖性」に入ります。
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 定義 | 皮膚が閉じた状態の正中の小さな皮膚欠損と、その皮膚病変から脊髄へつながる線維神経性の茎(fibroneural stalk)の2つが共通してある(Pang 2013) |
| 皮膚の所見 | 皮膚の底が髄液を含む袋になった「嚢状型」と、平らまたは陥凹した上皮の小窩にみえる「非嚢状型」に分ける(Pang 2013) |
| MRIの手がかり | 硬膜内(くも膜下腔)の茎の描出、茎の脊髄への付着、脊髄の背側へのテント状変形。背側皮膚洞より感染や類皮・類表皮腫が少ない(Lee 2017) |
| 治療の考え方 | 茎は脊髄を係留する病変。治療は茎を脊髄から切り離す手術(Pang 2013)。時期は神経症状・画像をもとに脳神経外科が判断する |
脊髄癒合不全は、皮膚が欠けて脊髄がむき出しになる「開放性」と、皮膚で覆われている「閉鎖性」に分けられます。LDMは後者の閉鎖性に入ります。全体の分類は脊髄癒合不全(spinal dysraphism)の分類にまとめていますので、先にそちらを見ておくと位置づけがつかみやすくなります。
茎の中にはグリア・神経組織が含まれ、量はさまざまですが神経や中胚葉由来の組織も混ざります。63人の手術例では、すべての例で茎が脊髄を引っ張って係留していました(Pang 2013)。
なぜ茎が残るのか: 皮膚と神経の「分離」の不全
神経管が閉じたあと、表皮のもとになる外胚葉と、神経のもとになる外胚葉が切り離されます(分離、disjunction)。これが十分に進まないと、皮膚が正中で閉じきらず、皮膚と脊髄のあいだに細い連絡路が残る、と考えられています(Pang 2013)。
引用元の図 LDMと背側皮膚洞の発生の違い

引用:Yang J, et al. J Korean Neurosurg Soc 2021(Figure 8)(CC BY-NC)
図:LDM(A)と先天性皮膚洞(B)の発生の模式図。どちらも、一次神経管形成のときに神経と皮膚の分離がうまくいかなかったことが共通の原因です。神経組織が皮膚側へ引き上げられるとLDM(A)に、皮膚組織が神経側へ引き下げられると先天性皮膚洞(B)になります。
LDMの皮膚所見: 嚢状型と非嚢状型の違い
皮膚の見た目で2つに分けます。皮膚の基部に髄液の袋がある嚢状型と、平らかへこんだ上皮の小窩(クレーター)にみえる非嚢状型です。63人の報告では、嚢状型26人・非嚢状型37人でした(Pang 2013)。
| 項目 | 嚢状型 | 非嚢状型 |
|---|---|---|
| 皮膚の見た目 | 髄液を含む袋の上に、扁平上皮のドームか薄い膜 | 平らまたは陥凹した扁平上皮の小窩 |
| 内部の構造 | 基部の神経結節、ドームに付く茎、分節性の脊髄嚢胞瘤のいずれか | 太さや複雑さがさまざまな線維神経性の茎 |
| 報告での人数(Pang 2013) | 26人 | 37人 |
皮膚の小窩は、淡い色の上皮で覆われたクレーター状のことが多く、12人のLDMのうち10人(83%)にみられたという報告があります(Lee 2017)。
病変の高さは頸部から腰部まで全脊椎レベルにわたります。63人の内訳は、頸部11人、胸部16人、胸腰部8人、腰部28人でした(Pang 2013)。
頸部の嚢状型は、以前は「頸部の脊髄髄膜瘤」と呼ばれていました。真の脊髄髄膜瘤が一次神経管の閉鎖不全で起こるのに対し、LDMは神経管形成の最終段階の異常によると整理されています(Maroufi 2024)。
LDMのMRI所見: 茎をたどり、脊髄のテント状変形を見る
MRIでは、矢状断のT2強調像で、皮膚の欠損から皮下・硬膜の背側を通って脊髄の背側面まで達する線状の構造(茎)をたどります。茎は脊髄を背側へ引くため、付着部で脊髄がテント状に引き上げられる形になります(Lee 2017)。
症例 限局性背側脊髄裂(嚢状型)

引用:Radiopaedia(Limited dorsal myeloschisis, saccular type)
胸椎の矢状断MRI(T2強調像)です。Radiopaediaの症例名は「Limited dorsal myeloschisis, saccular type」です。背中側の皮膚の袋から脊髄までを矢状断でたどり、茎が脊髄の背側に付く所と、脊髄の形を確かめます。
症例 限局性背側脊髄裂(非嚢状型)

引用:Radiopaedia(Limited dorsal myeloschisis, nonsaccular type)
Radiopaediaの症例名は「Limited dorsal myeloschisis, nonsaccular type」です。非嚢状型では、皮膚の小窩と脊髄をつなぐ茎の太さや複雑さに幅があります(Pang 2013)。
背側皮膚洞・脊髄髄膜瘤との違い
背側皮膚洞との違いは、MRIでくも膜下腔内の茎が見えるか、脊髄に付いてテント状に引くか、類皮・類表皮腫や感染を伴うかです。脊髄髄膜瘤とは、皮膚が閉じているか(LDM)、神経組織が露出しているか(脊髄髄膜瘤)で分かれます。
Leeらは、LDM 12人と先天性皮膚洞10人を比べ、MRIで次の4点に差があったと報告しています(Lee 2017)。
| MRIの所見 | LDM(12人) | 先天性皮膚洞(10人) |
|---|---|---|
| くも膜下腔内の茎が見える | 10人(83%) | 1人(10%) |
| 茎が脊髄に付く | 12人(100%) | 付着部位はさまざま |
| 脊髄の背側へのテント状変形 | 10人(83%) | 1人(10%) |
| 類皮・類表皮腫の合併 | なし | 6人(60%) |
感染の合併も、先天性皮膚洞では10人中6人(60%)にあったのに対し、LDMでは1人もありませんでした(Lee 2017)。感染や類皮・類表皮腫を伴いにくいことは、LDMと背側皮膚洞を分けるときの参考になります。
| 項目 | LDM | 背側皮膚洞 | 脊髄髄膜瘤 |
|---|---|---|---|
| 皮膚 | 閉鎖。小窩か、袋状のドーム | 閉鎖。正中の小さな孔(ピンホール) | 開放。神経組織が露出(出生時にわかる) |
| 脊髄との連絡 | 線維神経性の茎が脊髄に付く | 上皮でできた管(トラクト)。付着部位はさまざま | 神経板が皮膚の欠損部に露出する |
LDMと背側皮膚洞は、きれいに分かれるとは限らない
Pangらの報告では、LDMのうち4人は皮膚洞の管と同じ経路を共有するか並走し、6人は背側脂肪腫と連続し、7人は脊髄の分割(split cord malformation)と関係していました(Pang 2013)。背側皮膚洞のように見える病変でも、茎が一部だけ見えにくいことがあります。
皮膚洞とLDMが同時にあり、硬膜外の茎が途中で切れていた報告もあります。最初のMRIでは硬膜内の係留の茎ははっきりせず、2歳8か月で右足の痙性麻痺が出たときのMRIで背側脂肪腫からの茎が明らかになり、2回目の手術で硬膜内の茎を脊髄から切り離しました(Kawamoto 2023)。画像で茎がはっきりしないときも、症状の変化や経過をみて、必要なら再度の評価を検討します。
発生の説明も一枚岩ではありません。LDMは一次神経管形成の異常と考えられてきましたが、手術を受けた28人中11人(39%)で、茎が棘間靱帯を貫く高さがS1〜S2より下にありました。このため、二次神経管形成の異常が関わる可能性が提案されています(Kim 2020)。
引用元の図 尾側にあるLDM

引用:Yang J, et al. J Korean Neurosurg Soc 2021(Figure 10)(CC BY-NC)
図:S3の高さにある2例の低位のLDMの矢状断MRI(T2強調像)です。どちらも茎が低い位置にある脊髄円錐に付いています。緑の線はS1とS2の境で、この線より下の高さにある茎は、二次神経管形成だけでつくられる部分の脊髄に付いていると考えられます。
脊髄係留としての見方と治療
LDMの茎は、手術例のすべてで脊髄を係留していました。治療は茎を脊髄から切り離す手術で、多くの人が改善するか、現状を維持できたと報告されています(Pang 2013)。
係留脊髄としての一般的なMRIの見方(円錐の位置、終糸、再係留)は係留脊髄(脊髄係留症候群)のMRIにまとめています。
Pangらの63人では、29人に神経学的な症状がありました(Pang 2013)。
頸部の嚢状型LDM 38人(同じ施設の2つの時期の症例の合計)をまとめた報告では、神経症状は26.32%、水頭症は39.47%、キアリII型奇形は28.95%にみられました。最終の経過観察時に、約82%(81.57%)が排便・排尿のコントロールを獲得し、評価できた36人全員に歩行能力がありましたが、その内訳は自立歩行28人、介助を要する歩行8人でした(Maroufi 2024)。
LDMを疑ったときの読影の順番
皮膚の所見→茎→付着部と脊髄の形→合併する奇形、の順に見ます。皮膚の小窩や袋に加えて、足の動きの左右差や排尿・排便の変化があれば、小児脳神経外科と画像を共有して方針を相談します。
読影で確認したいこと
- 皮膚の小窩や薄い袋から脊髄まで茎をたどり、脊髄のどこに付着するかを確認する(Lee 2017)
- 付着部で脊髄が背側へテント状に引かれているかをみる(Lee 2017)
- 背側の脂肪腫、背側皮膚洞の管、脊髄の分割を合併していないかを確認する(Pang 2013)
- 茎が途中で途切れて見えても、硬膜内の茎が残っていないかを考える(Kawamoto 2023)
よくある勘違い
Q. くぼみから管がのびていれば、背側皮膚洞と考えてよい?
LDMでも皮膚の小窩から茎がのびます。くも膜下腔の中に茎が見え、脊髄に付いて背側へテント状に引いていれば、LDMを考えます(Lee 2017)。
Q. MRIで茎が見えなければ、LDMは否定できる?
否定はできません。硬膜外の茎が途中で切れていて、あとから硬膜内の茎が明らかになった報告があります(Kawamoto 2023)。症状の変化があれば再評価を考えます。
Q. 脊髄円錐の高さが正常なら、係留はない?
LDMは脊髄の背側に付いた茎が引く係留です。円錐の高さだけでなく、茎の付着部と脊髄のテント状の形を確かめます。
今日のまとめ
- LDMは正中の皮膚欠損と、脊髄へつながる線維神経性の茎の2点で考える。皮膚は嚢状型と非嚢状型。
- MRIはくも膜下腔の茎→脊髄への付着→背側へのテント状変形の順にたどる。感染や類皮・類表皮腫は背側皮膚洞に多い。
- 茎は脊髄を係留する。茎が見えにくくても否定せず、症状と経過とあわせて脳神経外科と相談する。
あわせて読みたい:背側皮膚洞(先天性皮膚洞)のMRI、脂肪脊髄髄膜瘤(脊髄脂肪腫)のMRI画像診断と終糸脂肪腫との違い
参考文献
- Pang D, Zovickian J, Wong ST, et al. Limited dorsal myeloschisis: a not-so-rare form of primary neurulation defect. Childs Nerv Syst. 2013;29(9):1459-84. PubMed
- Lee SM, Cheon JE, Choi YH, et al. Limited Dorsal Myeloschisis and Congenital Dermal Sinus: Comparison of Clinical and MR Imaging Features. AJNR Am J Neuroradiol. 2017;38(1):176-182. PubMed
- Kim JW, Wang KC, Chong S, et al. Limited Dorsal Myeloschisis: Reconsideration of its Embryological Origin. Neurosurgery. 2020;86(1):93-100. PubMed
- Yang J, Lee JY, Kim KH, et al. Disorders of Secondary Neurulation : Mainly Focused on Pathoembryogenesis. J Korean Neurosurg Soc. 2021;64(3):386-405. PubMed
- Kawamoto Y, Harada A, Ikura Y, et al. Limited dorsal myeloschisis without extradural stalk continuity to coexisting congenital dermal sinus. Childs Nerv Syst. 2023;39(2):511-515. PubMed
- Maroufi SF, Dabbagh Ohadi MA, Hosseinnejad I, et al. Cervical saccular limited dorsal myeloschisis, so-called “cervical myelomeningocele”: long-term follow-up of a single-center series and systematic review. J Neurosurg Pediatr. 2024;33(1):44-58. PubMed
症例画像は各図の引用元のとおりです。
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